『モスクワタイムズ』の2023-6-1記事「Wagner Head Prigozhin’s Past Life as a Children’s Author and Illustrator」。
プリゴジンが、じつは「児童絵本作家」としても才能の片鱗を示していたことが判明した。
ストーリーだけでなく、絵も描いていた。それを2000部、印刷・製本して、知人に配ったのである。
記念碑的なその1冊。タイトルを『Indraguzik』という。
プリゴジンが9年間の刑期を了えて出所し、レストラン経営で成功していた、今から20年前に、余技としてそんなことをやっていたのだ。
『モスクワタイムズ』は、いまや稀覯書であるこの実物を入手した。
奥付を見るに、表向きは、プリゴジンの2人の実子、ポリーナとパヴェルが、この本を作ったことにされている。
劇場のシャンデリアから墜落してしまったこびとが、なんとかこびとの国の家に帰ろうとするおはなしだ。
「Indraguzik」は主人公のこびとの少年の名前。その姉は「Indraguza」という。パヴェルとポリーナがモデルであることは疑いもない。
製作されたのは2004年。版元は無名の「Agat」社だ。
プリゴジンが刑務所で過ごしていたのは1980年代である。
カバー裏には当惑すべき写真が載っている。プリゴジン一家全員のなごみ写真だ。妻のリュボワ・プリゴジナも笑っている。
物語の中には「ガガリク」というこびとの老人も登場。1羽の鳥をともない、粗布で縫製されたトレンチコートを着ていて、主人公のためにスープを料理してくれる。ご本人のイメージなのであろう。
この本は市販されていない。
パヴェルは現在27歳。ワグネルの一員としてシリアと東ウクライナで戦闘している。
ポリーナは現在30歳。サンクトペテルスブルグにある高級ホテルのオーナーである由。
次。
モスクワタイムズの2023-6-1記事「Putin’s Daughters, Ex-Wife Own Property via Offshore Firms」。
調査報道メディアの「Proekt」が木曜日に報じた。
キプロスに「エルミラ」というロシア企業、「トップセール開発」というパナマで登録されている会社、および「ドリントン商業」(同じく)があり、これら三社が、2006年に「ノヴォ・オガリョヴォ」村のプーチン別邸の近所の土地を買いまくっている。
2008年にプーチンはメドヴェジェフに政権を一時預け、2012年に取り戻したが、その2012年に、これらの不動産は、プーチンの娘婿であるクリル・シャマロフの名義になった。
これらの不動産の時価総額は、900万ユーロだった。
2013年、シャマロフは、それらの不動産の所有権のほとんどを、プーチンの前妻のリュドミラと再婚していたアルチュール・オチェレトニーに与えた。
オチェレトニーとシャマロフはまた、フランスの海岸(ビスケー湾)にあるリゾート地ビアリッツに豪奢な邸宅を購入しており、そこでは、ルドミラと、プーチンのいちばん年下の娘であるカテリナ・ティホノワの姿が一緒に目撃されている。
プーチンの一番上の娘、マリア・ヴォロンソワは、オランダの富豪ファーゼン氏と婚姻後、ノヴォオガリョヴォ村の隣にある、エルミラ所有の家に引っ越している。エルミラは2013年にその土地開発会社を英領バージンアイランドで登記している。
ティホノワとシャマロフはサンクトペテルスブルグにて2013に婚姻したものの、2016~17に離縁。
先日、特攻ドローンがノヴォオガリョヴォ村に襲来したとき、プーチンはそこにいたそうだ。そして、いつもより早い時刻に、セキュリティの者によって叩き起こされたという。
次。
David Brennan 記者による2023-6-1記事「Why Chechens Can’t Replace Wagner in Ukraine」。
バフムトから撤収したワグネルのかわりに、モスクワとしては、カディロフの7000人のチェチェン部隊を前進させたい。ところがカディロフ軍は「TikTok大隊」と揶揄されており、威勢が好いのはSNSの動画の中だけ。親玉には、その部下を最前線ですりつぶす気など、さらさらない。じっさいその訓練技倆の未熟から、できることとは《パラミリタリーな治安警察活動》くらいが、せいぜいなのである。
次。
AFPの2023-6-1記事「Nintendo Ends Online Sales of Games in Russia」。
ニンテンドーは、ロシア国内でオンラインでゲームを購入することができないようにした。
水曜日に発表。即日に実施。
ロシア国内のユーザーは、過去に買ったコンテンツを再度ダウンロードすることはできる。しかし、新規の課金等は不可能になる。新しいアカウントをつくることも、ロシア国内からはできなくなる。
次。
ロイターの2023-6-3記事「Exclusive: Russia’s Taman port set to suspend LPG exports over drone danger」。
クリミアのケルチ大橋の近くに「タマン」という港があり、そこからロシア産のLPG(液化石油ガス)の7.5%が輸出されているのだが、ドローン攻撃を受ける危険が高まったとして、その輸出が止まった。
次。
Charlie Walker 記者による2023-6-1記事「Ukraine war: why Putin’s appeals to masculinity to recruit for the military will not work」。
1990年代、ロシアが、日常的半酔人のエリツィンに率いられて低迷を続けていたとき、憤慨したプーチンは、みずからマッチョイメージをメディア上に流通させることで、世間に活を入れようとした。風潮の逆転を願ったのである。
※梶原一騎が1970年代のマイホーム時代に、日本社会に対する「イヤガラセ」として星一徹のキャラを作ったのと同じだな。余談だが、昭和20年前後に大学野球をやっていたほどの頭脳エリートが、戦後に日雇い人夫なんかしてるわけないだろ。同窓生のつながりだけで、管理職の勤務先が世話されますよ。
兵隊が足りないロシア政府は、TV-CMを打って、マッチョな兵営生活への志願をよびかけているが、記者が以前に地方都市で現地調査しているところでは、ロシアの地方に住んでいる、中年よりも若い労働者たちは、今の生活にヤケッパチな絶望を抱いていないし、不安でたまらないという心境ともほど遠い。だからプーチン好みのマッチョ勧誘が、まるでアピールしない。
次。
Jeff Schogol 記者による2023-6-1記事「Taliban moving captured US military vehicles and Soviet tanks to Iranian border」。
タリバンはイラン国境でIRGC(イラン革命防衛隊)と小競り合いになっており、旧アフガニスタン政府軍が米軍から支給されていた装甲車を国境線に集中させている。
※写真を見ると4×4の「M117」という、260馬力・14トン・3人乗りで12.7ミリまで防弾の装甲警備車や、非装甲のHMMWVがほとんどだ。やはりというか、産業基盤が弱い中進国で長く実用性を保てる外国製車両装備は、せいぜい4×4の装甲車までであって、MICVはおろか、8×8装甲車のメンテナンスも、彼らには無理なのだろう。6×4トラックや6×6トラックは、スペアパーツがいくらでも市場で入手できるから、また別の話だ。
タリバンは、マックスプロのMRAPや、「M113」装軌式APCも集結させているようだ。
※ベトナム戦争時代から大量生産されたM113も、枯れた技術で構成されているから、スペアパーツには困らぬ。重装甲ではないおかげで、エンジンにも足回りにも過度の負荷がかからない。もちろんタリバンはカニバリズム整備をやっているはずだ。MRAPは、重すぎるので、時間とともに「自壊」する装備だと思う。タリバンは、これがまだ動くうちに使い捨ててしまえという心組みで持ち出していると思う。
タリバンの手中に残されたMRAPは182両あるのではないかという報告もあり。