『Nikkei』の調査報道によると、ロシアはミャンマーとインドから、戦車のスペアパーツを買い戻している。

 ※日本語の『日本経済新聞』と、英文メディアの『ニッケイ』とでは、見ている世界が違うらしい。

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 Mike Ball 記者による2023-6-4記事「Rugged Armored Quadcopter Drones for Military & Law Enforcement」。
    クォッドコプターなのに「耐弾」。なんと12番ショットガンで距離20mから射たれてもビクともしない「装甲」付きのマルチコプターが爆誕した。地面に置かれているところをATVのタイヤで轢かれても、直後にすんなり離陸し得る。

 このメーカーは「ニューカッスル・マニュファクチャリング」社。
 軍および警察用に、防弾仕様のドローンを提案している。

 製品名は「ザ・ウィドウ」という(後家蜘蛛。ウィドウスパイダー=ブラックウィドウ)。
 メーカーはテキサス州にあり、そこで製品を組み立てている。

 ※もし、発射された散弾の粒が細いテグスでビーズ状に連なっていたら? ローター軸に糸が絡まれば、どんなマルチコプターも墜落するしかないはずだ。原始猟具の「bolas」のように、3個のシカ玉が星状に散開しようとするときにテグスを引き出す特殊弾でも可いはず。「射ぐるみ」だよ。

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 Claude Forthomme 記者による2023-6-5記事「How Russia Has Already Lost the War」。
   ロシアは戦争前から経済のサイズではイタリア以下だった。ロシアの強みは、1億4300万人の人口プールから随意に徴兵して欧州のどこへでも投入できるその専制政体と、米国と刺し違えられる量の核兵器であった。

 ウクライナ政府の分析では、ロシアはGDPの29.1%を、この戦争で失った。
 それに対してモスクワの宣伝では、2022年の喪失はGDPの2.1%であり、それは2023年に経済が1.2%成長するから大したことではないという。

 そもそもロシアのGDP予測値が、侵略前と後とでは変わる。侵略後に経済制裁を受けた結果、予測値は7%から10%の下方修正を必要とする。

 《ロシアの戦後》は、キューバと似てくるだろう。1950年代に輸入された米国製乗用車を2010年代になっても修理しながら使うしかなかった、あの国に。

 ※ここで「戦車不用論」に関して基本の知恵を整理しておこう。平原で機動をする味方の野戦軍を、敵の砲兵の脅威から守りたいと思ったら、戦車が役に立つ。しかし今日では、戦車が歩兵を伴わずに前へ出て行けば、必ず敵の歩兵にやられてしまう。味方の戦車を敵の歩兵から守ってくれるのは、じつは、味方の歩兵だけである。そこで、現代陸軍は、戦車と歩兵をいかに協働させるかを研究し、演練させるようにしている。ところが、露軍においては、この演練がいつのまにかなくなっていた。じっさいに、今次戦役で、歩兵なしで戦車を投入させてきた。とうぜんそれはうまくいかなかった。にもかかわらず、ロシア人はそれを改めるつもりもなさそうにみえる。背景には、次のような思惑があると思われる。まずロシア政府には、兵隊の訓練にかけるカネがない。そこで戦車を「移動野砲」として運用し、戦車砲による遠距離砲撃と無差別空爆とによって前面の都市を「サラ地」に変えてしまい、敵の歩兵の隠れる場所をなくしてしまえば、戦車と歩兵の協働訓練がなおざりでも、あるいは歩兵なしの戦車だけでも、不覚はとるまい。じっさい、シリアではこの流儀でなんとかなっていた。ところが、ウクライナのドンバス地方には、「サラ地」にすべき市街地が多すぎて、さしもの露軍の砲弾も足らなくなってしまった。しかも、ロシア製戦車には、もっと早くから気付かれていたはずの設計上の根本欠点があることが、隠せなくなった。すなわち、平原で機動中に敵の野砲弾が至近弾となって炸裂すると、その衝撃波だけで、露軍戦車の内部弾薬は殉爆してしまうのだ。かくして、旧ソ連型の戦車と、2022-2-24以降のドンバス戦域を「所与条件」とするならば、「戦車不用論」が大いに妥当することになっている。だが同時に、西側製戦車と、西側軍式の「歩・戦」合同訓練がセットで与えられたならば、戦車は平原で機動する味方の野戦軍を、敵の砲兵の脅威から守ってくれる。だからNATOはウクライナ軍に西側製戦車を供与するとともに、時間のかかる「歩・戦」合同訓練を強制した。せっかく供与した戦車を、露軍のように「野砲」代わりに無駄遣いされては、たまらないからである。

 ※続き。戦場内にある都市をすべて更地に変えぬ限り、露軍は勝利できない。ということは、もしも、ウクライナの「アパート」や「戸建住宅」が、あらかじめもっと、砲爆撃に対して頑強な造りとなっていたならば、露軍の侵略モーメントを、宇軍の郷土防衛軍の歩兵部隊だけでも、もっと早く低調化させられたはずなのである。本欄で、繰り返し提言してきた、「アパートのピラミッド化」の意義の大きさを、ご理解いただけただろうか? ロシアの接壌諸国にとっては、国境帯の諸都市のビルが「けっしてフラットにはならないブロック構造」として聳立しているように平時の建設計画を誘導しておくだけでも、何個師団もの戦車部隊の代わりになるのである。

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 雑報によると、ベルゴロド州の知事が弁明した。砲撃で破壊された家屋の修理費は出せない。モスクワからは土建予算をもらっているのだが、それはぜんぶ「コンクリート・ピラミッド」に使ってしまった、と。

 ※ウクライナ戦争の記事で「コンクリート・ピラミッド」と言われる場合、それは露製の「竜の歯」を意味している。「竜の歯」の図面もSNSに出回っている。シンプルな四面体で、1辺の長さはすべて1600㎜。高さは1306㎜。1個の重さは1200kg。内部に、S字を縦に長くひきのばしたような「鉄筋」が1個、埋め込まれていて、その両端が、四面体の2面から飛び出している。ユニックに「竜の歯」を積んできて、クレーンのフックでその「Sの端」をひっかけて、置き並べればよい。なおこれは一モデル製品であり、他にも異なった量産品があるはずだ。