野外の「指揮所」(コマンドポスト)の造作が大規模すぎて、設営準備段階からもう上空から丸わかりだという深刻な問題を米軍は把握し、対策を模索中。砲弾1発で全滅するから。

 Joseph Trevithick 記者による2023-7-6記事「What DPICM Cluster Munitions Are And Why Ukraine Wants Them So Bad」。
   DPICMは、「二重目的・改良型・通常弾薬」の頭文字で、デュアルパーパスとはこの場合、対装甲と対人のどちらの威力も追求されているという意味だ。

 今回、米国からウクライナへ供給することが決まったのは、数あるクラスター弾薬のうちでも、このDPICM。

 この「子弾」は1970年代から製造・納品されている。
 DPICMを仕込める砲弾は、105㎜野砲弾、155㎜榴弾、203㎜榴弾、227㎜ロケット弾(HIMARSから投射できるもの)、ATACMS、などである。

 ※米国製の203㎜砲弾も急にウクライナ軍へ供与されることになったが、それはソ連製の「2S7」自走砲でそのまま撃てる。だからまず203㎜砲弾でDPICMがばら撒かれることになるかもしれない。

 DPICMが詰められた砲弾は、時限信管によって、目標の上空にさしかかったところで、砲弾の弾尾からこのクラスター子弾を放出・撒布する。放出のエネルギーは、少量の火薬による。

 各子弾にはエアブレーキ用のリボンがついていて、これによって、HEATの漏斗口が真下を向いた姿勢で落下し、着弾。信管は、インパクトフューズである。

 ※衝撃信管が不作動となった場合には、タイマーがあって、設定時間が来ると自爆する……という建前になっているのだが、この手の機能は、弾薬をハンドリングしている最中の不意の爆発事故をユーザーに懸念させるので、昔から、軍隊から歓迎されたことがない。たとえばWWII初盤に秘密兵器としてテムズ河口に投下されたドイツの磁気機雷には、敵による分解調査を妨害するための自爆機能がついていたのだが、それが飛行機の中で働いてはたまらないので、クルーはその機能を活性化させずに投下していた。

 HIMARSのロケット弾がDPICMを運搬する場合、1本のロケット弾から644個の子弾がばら撒かれる。

 ※正直、クラスター弾を米国は供与しないだろうと私は思っていた。それを供与することに米政府が傾いた背景を想像すれば以下の通りだ。まず宇軍には砲弾が現状でも足りず、近い将来も慢性的な不足が当分続く。また、その砲弾をデポから砲座位置まで運ぶ段列の兵員が人手不足で、このため「ムダ撃ち」をさせている余裕がぜんぜんない。1発の威力を極大化する必要がある。他方、露軍のECMがなかなか好調で、エクスカリバーのような1発必中誘導弾が逸れてしまうようになった。クラスター砲弾なら多少逸れても完全にムダになることはないだろう。しかもクラスター弾は米本土内の倉庫におびただしくうなっている。さらに、このクラスター弾が落下するのはもともとのウクライナ領内であるから、自国領民に対する無差別攻撃をウクライナ軍が敢てするとは誰も思わない。すでにそこらじゅうを地雷だらけに変えたのは露軍である。そこに、投射数のうちの1%の不発弾が新たに加わることが、住民を著しく苦しめるとは言えない。むしろ、効果的な砲撃によって露軍が早く領土から出て行くことが、戦後のための地雷処理作業のスタートを早め、住民の福利に適う。

 ※まったく報道されていないが、DPICMの真打は、宇軍が保有しているヘリコプターからロクに照準もせずに最大射程で腰ダメ発射させている、あの、燃料とタマ代の無駄以外のなにものでもない「空対地ロケット弾」(ポッド入り)ではないか? あれが、DPICM充填のものに変われば、敵の塹壕陣地にとって少しは効き目がある火力になるから。

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 2023-7-7記事「Russians are developing a replica of Switchblade loitering munition」。
  TASSによると、ロシアは「スイッチブレード300」をコピーして「ヴェクトル-120」と名づけている。弾頭重量は220グラムから250グラムだという。

 つまりスイッチブレードよりは爆発威力がある(スイッチブレードの弾頭は40㎜擲弾そのもの)。

 ※比較して、RPG-7だとHEで炸薬が210グラム、HEATで730グラム、タンデムHEATで1.43kg、サーモバリックで1.9kgというところ。F-1手榴弾の中には炸薬60グラム。

 「ヴェクトル-120」は30分滞空できる。これは「スイッチブレード300」の三倍だ。

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 「strazgraniczna」の2023-7-6記事「The Polish Border Guard acquires holographic sights for HK 416 Rifles」。
   ポーランド国境警備隊の「HK416」小銃にとりつける、ホログラフ式照準器が大量調達される。
 このホログラフィック・サイトの商品名は「Eotech EXPS 3.0」という。

 夜中でも敵兵を適確に射ち倒せる。

 ※ポーランドの国防力投資がガムシャラである。海軍力にほあまりカネを使わなくてよいので、大きな割合を、陸戦兵器に投じてよいのだ。