オスカー・ワイルドいわく。ほとんどの人は他の人である。彼らの思想なるものは、他の誰かの意見である。彼らの人生は、他の誰かの模倣である。彼らの感情すらも、他の誰かからの引用なのだ。

 T.S. Allen 記者による2023-10-27記事「War Books: Russia’s Information Warfare」。
   1999年に出版された Victor Pelevin著の『Generation П』は、英訳もされている。ロシアの政治家が、テレビを支配すればフェイク情報で「民主主義」をコントロールできるのだと考えていることが、とてもよく分かる名作古典と言えよう。

 元ルーマニアの情報局長だった Ion Mihai Pacepa が書いた『Promoting Terrorism』は、旧KGBのディスインフォメーション工作について詳しく教えてくれる。

 Soldatov と Borogan の共著である『The New Nobility』は、1999のモスクワアパート爆破事件と2002の劇場立て籠もり事件(毒ガスで解決)について特に深く調査してあるノンフィクションの労作。

 おなじ2名の共著である『The Red Web』は、ロシアのインターネット事情について、1980年代から解説してくれる。彼らの結論。今日ロシア政府はガチガチに情報を統制し、政治について市民が自由討論できないようにし向けているにもかかわらず、なおまだ、インターネット空間だけには、少しばかり、表現の自由が残されているのだという。

 Peter Pomerantsev 著の『Nothing is True and Everything is Possible: The Surreal Heart of the New Russia』は貴重な文献だ。著者はロシアのTV局のプロデューサーだった。彼いわく、ロシアは「ポストモダン専制政体」なのだという。そうなった背景は「グローバリズム」なのだが、その主たるツールがテレビだというところが、まさにロシアの独創。大衆はテレビを視せられることによって、ロシア国境外の出来事からは、頭が遮断されるのである。対ウクライナのコバート工作についても掘り下げている。

 Ofer Fridman 著の『Russian “Hybrid Warfare”』は、ロシア人が定義するハイブリッド戦争について余すところなく教えてくれる。それは米国人の解釈とはズレがあるのである。ちなみにロシア語では「gibirdnaya voyna」と呼ぶ。

 ※雑報によれば、エヴァ・エルフィーさんが、米国国務省から「タレント」枠のヴィザを貰って、米国へ出国したそうである。ロシア系のセクシー女優はとても多いのだが、この人もまたそうだったとは初めて知った。ついでに気になってしまうのは、今は一線を退いている、往年の、あの人やあの人やあの人……たちは、つつがなく暮らせているんだろうか? それとも素早く国外へ脱出しただろうか? ご多幸を祈り上げ度い。

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 ポリティコの2023-10-30記事「The future of warfare: A $400 drone killing a $2M tank」。
    ウクライナ戦線で普通に使われているFPV操縦式自爆ドローンのスペック。自重は1kg以下。4軸。ペイロードは2.5kg以下。水平速力は最高で150km/時。

 値段は400ドル以下。あらゆる場所で製造されている。

 ウクライナ人は、アリババ通販で必要なチップを買い集め、自作している。

 テスラの電気自動車をバラすと、1100個のリチウム電池が得られる。それも再利用されている。

 取材したオペレーターは予言した。クオッドコプターを「撃墜」するのは不可能だ。ネット防御だけがいまのところ、価値がある。おそらくウクライナじゅうの「役所」のビルが、ネット天蓋を設置するようになるであろう。

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 Kamil Galeev 記者による2023-10-27記事。
   カミル・グリーフ氏に言わせると、米国の軍需工業分析者は、欧州の工作機械工業を成り立たせている「職人芸」のレベルの高さ、深さを、舐め過ぎている。

 工作機械の輸出世界一がドイツで、二番目が日本になっているのには、理由がある。
 その理由は、余所者の目には見えないのだ。

 たとえば自動車の鈑金をプレスするのには金型が必要である。その金型は、設置したらそれっきりじゃない。微妙に変型して行くのを、微妙に直しながら、量産を続けなければならない。人がフォローする必要があるのだ。そこをサボると、ぜったいに低品質の自動車しか造れない。金型のクオリティを精密に維持させているのは、「職人芸」なのである。

 まったく同じことが、たとえばICBM生産でも言えるのである。
 ロシアは、もしドイツ人の「職人芸」の助けが得られなくなれば、高性能のICBMを生産できない。

 プー之介がドイツ製の工作機械の積極導入を開始したのは2003年であった。
 これでロシアの軍需工業は、質的に蘇った。再生に向かったのである。

 だがコンピュータ化された工作機械は、同時に、職人芸によるメンテナンスも不可欠。
 他方でまた、プレス鍛造系の古い機械は特にそうなのだが、いつまでも使えるものだから、一挙には更新されにくい。

 たとえば「Votkinsk」工場は、新型ICBM「Yars」の生産拠点のひとつだが、そこにある「ねじ回し」の鍛造機械は、1915年製である。