ペンタゴンと米国の2つの有力シンクタンク(CSBAとCSIS)ならびに日本政府の2022-12-16閣議決定三文書が通底して示しているように見える《勧告》は何か?
ズバリ――西太平洋で中共軍を撃滅し敗退させるのに「長射程の対艦ミサイル」が数千発は必要だぞ――というものだ。
「長射程」をもっと具体的にイメージすると、「ハープーンの160kmくらいじゃダメだよ」ということで、INF条約に終始縛られなかった中共が、レンジ500km超の戦術ミサイルを一方的に蓄積してきたアンバランスを中和するためにも、「最低600km、できれば2000km以上」といった線が要求されているだろう。
ところがこれは難題だ。
質的にはクリアできる。量的にハードルが高いのだ。
長射程の高性能ミサイル(シーカーには自律捜索機能と画像照合のAIが必要)を1発こしらえるのに、特殊なスペックの部品が数万点必要で、それらを納品してくれる下請け中小企業の、人的資産が最初からすくない。ただちに必要な職工(技能工)を増やせる可能性は、ほとんどない。工員のキャパシティーの制約から、とうてい、大量注文に応ずることはできないのだ。
このネックは絶対なので、日米豪政府がいくら予算をつけようが、これから2年やそこらでLRASMや戦術トマホーク級の長射程ミサイルが3000発も揃うことはありえない。
さりながら、そこをなんとかしないでは、中共の「奥の院」が、「だったら今のうちに侵略しようや」と思い込んでしまう。
したがって、日米豪三国には、何か新奇な「ギャップ・フィラー」が、いますぐに、必要である。
「ギャップ・フィラー」は、「レンジ」以外のすべての性能で妥協した兵器システムとしなければ、急速な調達ができないので、最重要問題の何の解決にもならないだろう。
ともあれ、一例を挙げよう。
横にした標準貨物コンテナの「背中」に開閉蓋を設け、そこから垂直に射出できる、プロペラ動力の全翼「自爆機」。
「シャヘド136」に原付バイクのエンジンをとりつけたようなものでもいいはずだ。
部品がすべてすぐに手に入って、そこらの町工場でも容易にアセンブルできれば、なんでもいい。
ただし、寝かせたコンテナからそのまま、垂直に発射できないといけない。この部分が、開発のネックになるだろう。
プロペラは、屈撓性のある硬質ゴムでこしらえる必要があるかもしれない。
巡航ミサイル代わりの特攻無人機を、コンテナに収納して運搬し、そこから直接射出できるようにしておくことで、そのコンテナを運搬するプラットフォームの選択は無限大化する。
たとえばグラスファイバー製のセミサブマージブルな無人艇にそのコンテナを1個載せ、中共軍艦艇や軍港、揚陸海岸にギリギリ近寄せておいて、一斉に、多方位から特攻UAVをスウォーム殺到させることが可能に……。そのUAVの到着時刻と同時になるように、高額なハイスペック・ミサイルを放てば、敵のAAは飽和される。
セミサブUUVは、低速ながら、太平洋を無給油で横断できるくらい、燃費が良い(南米麻薬カルテルは、スペイン沖まで大西洋を横断させることあり)。これとのとのコンビにすることで、特攻作戦レンジを4000km以上に伸ばしたのと同じことになる。
UAV自体は航続距離が500kmくらいしかなくとも、このセミサブと組み合わせることで中共軍のINFに拮抗できる。
バージョンとして、この特殊コンテナそのものにも「浮力」を付与すれば、旧式の軍艦や徴用貨物船から海面へ無造作に落としてやって、本船が現場を離れた何時間か後、その海面から、統制されたタイミングで射出が始まるようにもできるだろう。
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Boyko Nikolov 記者による2023-11-4記事「S-400 ‘doesn’t see’ the German Taurus missile at a certain height」。
ドイツのMBDA社が製造している空対地巡航ミサイルの「タウルス KEPD 350」は、レンジが500kmある。高度50mをマッハ0.9で飛び続ける。
これに対して露軍SAMの「S-400」は最大レンジが400kmなので、発射母機は安全である。
というかそもそもその低さでは防空レーダーで探知ができない。直進波にとって地平線は40km未満なので。
問題は、タウルスの生産ラインを再開するのに、2年以上かかる。
※下請け部品メーカーを何百社も再招集しなければならぬため。今は技能工の人手が足りない。
弾頭の爆薬からして特殊なものなので、簡単には調達ができないものなのだという。
ドイツ空軍には300発が納品されているが、これのメンテナンス/リファービッシュ工事も必要。モーターや電池は全とっかえしなくてはならぬ。ナビゲーション基盤は、新型に変える必要あり。
他方で同時に、タウルスの改良型の開発も進められている。
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2023-11-4記事「Ukraine is Studying an Advanced Russian Reconnaissance Drone」。
露軍が使い始めた固定翼の小型偵察ドローン。「スーパーカム S350」と称す。
発進は、二脚が生えた、圧搾空気入りの鉄管の先端に、この全翼機をはめ込んで、地面から、斜め上へ打ち出す。
回収は、電動モーターを停めてパラシュートを開くことによる。
ウイングスパン3.2m。離陸重量11.5kg。滞空4時間半。速力65km~120km/時。リモコン信号は、高度によって水平70km~100kmまで達する。
電気モーターは1個。プロペラは牽引式。
※雑報によると、ロシアは、「S-400」のミサイル本体を1000発、2027年までに新規調達すると言っている。
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Thomas Newdick 記者による2023-11-3記事「Secret Skunk Works Spy Drone Delivered To Air Force」。
ロッキードマーティン社のスカンクワークスが、未知の本格的な無人ステルス偵察機を仕上げ、ついに空軍に納入したという。
その機体はもちろんジェットエンジンで、高々度を長距離、飛んで戻ることができる。
「RQ-180」の後継機だともいう。
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William Hartung 記者による2023-11-3記事「What Paul Krugman gets wrong about the military industrial complex」。
ポール・クルーグマンがNYTに寄稿したコラムは、ペンタゴンにもっとカネをやれと主張するものだが、その根拠として、不適切で筋違いな計算をもちだしている。
アイクが1961に命名した「軍産複合体」などというものは今日では存在しないのだという。
クルーグマンいわく。アイゼンハワー時代にペンタゴンが支出していた公費の、米国経済全体に占める割合は、今よりずっと高かったと。
それは事実だが、ペンタゴンにはGNPやGDPに比例して支出を増減させねばならぬという義理はないのだ。
ちなみに今の米国GDPは1961当時の6倍だ。
軍事支出は、われわれが直面する生命のリスクを見計らって、必要量を支出するべきもので、経済活動に比例させるものではないのである。
インフレ補正をした上で、アイク政権時代と今の国防費をくらべると、金額はだいたい2倍強になっている。
この傾向をそのまま未来へ続けるとするなら、今から2年のうちに米国の軍事支出は1兆ドルを超える。クルーグマン氏はそれでいいと思うかもしれないが、正気の納税者はそんな金額には同意しない。
米国がガザ戦争やウクライナ戦争に干与するのは、なにも米国内の兵器メーカーからの要請によるものではない。クルーグマン氏のこの指摘は正しい。
軍需産業の議会ロビーは昔よりもっと強大且つ巧妙だ。連邦下院の軍事委員会の委員長、アラバマ州選出の共和党員のマイク・ロジャースには、軍需ロビーから、選挙のたびに50万ドルが献金されている。これは合法なのである。
軍需業界が登録させているロビイストの数は800人以上。すなわち連邦議員の総数よりも多い。
ロビイストは「リヴォルヴィング・ドア」の一環を成している。大概は元議会関係者であったり、元国防省高官だったり。
「クインシー研究所」というシンクタンクに属する記者が調べ上げた統計。過去5年内に退役した、4ツ星の大将/提督の8割が、軍需産業のために再就職している。国の委員会のメンバーとか、議会のロビイスト、メーカーの役員、メーカーのコンサルタントなどに。
目下、ペンタゴンは、F-35のためだけに、毎年、120億ドルから130億ドルを注ぎ込んでいる。この金額は、CDS(連邦疾病対策センター)の年間予算規模よりも大きい。
政府予算の総額は有限だから、そのなかの何かを大きくすれば、他を小さくするしかない。
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2023-11-4記事「Russia failed test on Yars and Bulava launches」。
ロシアは「ヤルス」ICBMと「ブラヴァ」SLBMを訓練発射しようとしたが、どちらも失敗した模様。
ヤルスは11-1に失敗した。
ブラヴァは『ボレイ』級原潜から10-25に発射したが、やはり失敗した。
なおロシアは「ツポレフ160M2」という改良型の超音速戦略爆撃機を2023年から製造したい意向であったが、「NK-32」というターボファンエンジンの改良型の製造ができず、そのために、計画が延期されている。
※雑報によるとハバロフスク市内のネットカフェを夜中に公安部隊が急襲し、たむろしていた若者全員を連行。外国籍の者以外は、そのまま露軍に強制入営させてしまったという。その模様の動画がSNSに出ている。
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AFPの2023-10-31記事「Lebanon accuses Israel of white phosphorus attacks」。
レバノン政府は火曜日にイスラエルを糾弾した。白燐焼夷弾のせいで4万本のオリーブの木がやられたと。
ガザ戦線の反対側のレバノン南部国境でも、イスラエル軍とヒズボラのあいだで、小規模な砲撃戦が繰り返されている。
1983年の特定通常兵器禁止条約では、焼夷弾を民間人や非軍事目標に投下することは違法だとされた。
また、民間人に隣接した軍事目標に投弾することも同様だとされた。
ただし、発煙弾と、照明弾は、この条約では野放しである。
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Julia Struck 記者による2023-11-4記事「Zelensky’s Swift Dismissal of Special Ops Commander After First Media Interview Raises Questions」。
ゼレンスキーは11-3に唐突に、新しい特殊作戦軍司令官に Serhiy Lupanchuk を登用した。
それまでの Viktor Khorenko 将軍は、テレビを視ていて、自分が馘にされたことを知った。
Khorenko 将軍が、10-31に初めて受けたテレビのインタビューで、戦線は膠着していると正直に語ったことが、ゼレ公の逆鱗に触れちまったらしい。
宇軍内のSSO=特殊作戦軍 は狭き門で、応募者の9割は訓練途中で原隊復帰となる。そのメンバーは本名を使わず、マスコミ取材にはすべて偽名で応ずる。
まぎらわしいが、SBU(ウクライナ保安隊)はSSOとは関係ない。SBUは宇軍とは別の組織で、ようするに昔のKGBである。2022-6-25に、SSOの司令官であった Hryhoriy Galagan 少将が、SBUの長官に横滑りで転任した。
Khorenko 少将は、その Galagan 少将のあとがまである。
ある人の話では、HUR(中央情報部)のブダノフ部長が、HURの別働隊を指揮していた Khorenko 少将をSSO司令官に推薦したのだという。
HURの別働隊は、露領内まで深く挺進して、めざましい働きをした部隊だと噂されている。とすれば Khorenko 少将は、相当に有能な人材のはずである。
※米欧政府はゼレンスキーが一国の戦争指導者として成長するかと少し期待していたが、期待は裏切られた。「のびしろ」が無いと見切った。いつまで経っても小学生レベルなのだ。国内の軍需工業動員をやろうとせず、その発想もない。小学生でもとっつきやすい兵器の話にばかり余計な口を出し、おかげでまともな総力戦を妨害する。これでは困る。だから来年が「選挙年」であることを好機として、退任してもらえればありがたいと米欧政府は考え始めた。後任には、ブダノフの系列がいちばん頼りにできそうだと米欧首脳部は考えているはずだ。ゼレ助はそれを察して、抵抗し始めた。
※イスラエルの新聞によれば、従来、シリア領内のイラン製SSM倉庫を空爆するときにはIDF空軍は現地露軍に直前の通告をしていたのだが、もう今はそれをやめているそうだ。ロシアの地上部隊(ワグネル残党)や露軍機が巻き添えになっても知ったこっちゃないという態度変更。やはりハマス奇襲の黒幕はプー之介だと強く疑っているのだろう。