タタルスタン州のNizhnekamsk市にあるロシアで三番目の規模の石油精製プラント。「小型輸送機」サイズの無人特攻機が突っ込んで爆発した。ウクライナ領内から1200kmは飛行した模様。

 一説に、この改造特攻機のペイロードは660ポンドだという。数十km離れた工業団地では「シャヘド136」をライセンス製造しており、そこにも同じ特攻機が正確に突入した。4月2日のこと。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-4-5記事「Satellite Images Reveal Over 60 Aircraft at russian Airfields in Engels, Yeysk and Morozovsk Prior to UAV Attack」。
    4月4日の晩から5日の未明にかけての夜間に、ロシア西部の複数の航空基地が、ドローン攻撃を受けた。
 エンゲリス飛行場はウクライナ国境から700km離れているが、やられた。
 国境から300km離れたところのMorozovsk空港、150km離れたYeysk空港も、やられた。

 3機の「ツポレフ95MS」戦略重爆撃機を含む19機が損傷したという。
 Yeyskでは、2機の「スホイ25」が破損した。

 攻撃前の民間衛星写真で確かめると、この3箇所の航空基地には合計60機以上が駐機していた。

 エンゲルス空港の4-4朝の写真には、8機の戦略重爆が写っている。ツポレフ160が3機と、ツポレフ92が5機。他に、イリューシン76とツポレフ22が1機ずつ。

 Yeysk空軍基地には、L-39練習軽爆×10機、アントノフ26輸送機×5機、アントノフ74×1機、アントノフ12×1、スホイ27戦闘機×4、スホイ25×4、スホイ30×1機、カモフ27ヘリ×?機、ミル8×1機、ツポレフ134UBL練習機×2機がいたと判る。

 モロゾフスク飛行場には、4-4時点で、戦闘機が29機所在。多くは「スホイ34」である。これも「Planet Labs」の衛星写真で確認できた。

 ※宇軍は片道特攻UAVを50機以上、飛ばしたようだが、それらがただGPS座標指定をされていただけならば、19機も効率的に破壊することはできない。それらの特攻機には「マシンビジョン」が搭載されていて、駐機している敵軍用機の機種を見分け、高価値目標を自律的に選別し、直撃する仕様だったのであろう。とうぜん、「ツポレフ160」を優先破壊するアルゴリズムだったと考えられるのだが、おそらく露軍側では「ブラックジャック」についてのみは機内でクルーを寝泊りさせて、警報あり次第離陸させられるようにしていたのであろう。もしブラックジャックが破壊されれば基地司令官には刑務所行きが待っているので。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-4-4記事「Four Stealthy AGM-158C Long-Range Anti-Ship Missiles Flew Together In “Historic” Test」。
    2機のF/A-18 スーパーホーネットから4発の「LRASM」を同時発射する訓練が実施され、すべてうまく行ったという。

 テストの場所と日時については非公開である。
 しかし対支の実戦をシミュレートしたことは疑いもない。

 げんざい、米海軍の保有機で、LRASMを発射できるのは、スパホだけ。「P-8A」からも発射できるように、改修工事がすすめられているところが、とうぶんは、それは仕上がらない。

 米空軍は、B-1BからLRASMを発射できる。F-35は、機内弾倉にこのサイズの巡航ミサイルは入らないので、無理に運用させようとするなら、機外吊下とするしかない。

 メーカーのロックマートと米海軍は、LRASMを軍艦の「マーク41」VLSからも発射できるんですよ、と議会にアピールしている(実験は既に成功)。

 LRASMには、いまのところ、2つの型がある。
 AGM-158Cは、「C-1」とか、「LRASM 1.1」とも称される。これが今、配備済みの型である。

 もうひとつの型は、開発中のもので、「C-3」とか「LRASM-ER(エクステンデト・レンジ)」と呼ばれる。

 どちらもステルス性の高い対艦巡航ミサイルである。

 そもそもLRASMは、空対地スタンドオフミサイルの「JASSM」を進化させたもので、機体のコア部分はJASSMと類似している。

 「C-1」の航続距離は、200浬から300浬のあいだである、としか公表されていない。すなわちそれはJASSMと同じだ。

 LRASMは、飛行中に、みずからESMによって敵艦の出すレーダー波をキャッチし、それらのレーダー波によって最も探知がされ難くなるような、最適のアプローチ針路を、じぶんで案出して突っ込む。

 敵空母が、最初は電波封止をしていたが、とちゅうから我慢できなくなってレーダーを稼動させたような場合、飛翔しながらそれを察して、すぐにそっちに目標を変えて突っ込む、という自律判断まで、できてしまう。

 敵艦が見通せる位置まで近づくと、赤外線イメージ照合が始まり、敵空母や敵駆逐艦の最も脆弱な箇所をピンポイントで直撃する。

 いま開発中の「C-3」は、レンジが伸びる。おそらく「AGM-158B JASSM-ER」と同じ、600浬くらいになるだろう。

 米海軍は、「C-3」を2026年のなかばから、F/A-18 スーパーホーネットに運用させるつもりである。これは米海軍が出しているFY2025予算要求から推定できる。

 2030年までに米海軍と米空軍は、1000発以上のLRASMを調達するつもりだ。

 ※今から予測できてしまうのだが、中共海軍は、空母や揚陸艦の舷側に巨大な白地の垂れ幕を下げて、そこに「赤十字」マークを映示させる技法を研究中だと思う。病院船を攻撃できないようにしているはずの、LRASMの画像イメージ照合のアルゴリズムを、逆手に取るわけだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-3記事「Enigma unraveled: Australian E-7A Wedgetail ‘shot down’ Su-34」。
   豪州空軍は、その所有するAWACSである「E-7A」を、2023-10にドイツのラムスタイン基地に展開させていた。支援員100名とともに。それが4月2日に豪州に戻ってきた。

 どうやら、この「ウェッジテイル」の情報にもとづいて、クリミア方面でロシア空軍の「スホイ34」が3機、撃墜されたのではないかという。

 ウェッジテイルはウクライナ領空では作戦しなかったはずだ。しかし、ポーランド領空は使っただろう。黒海の公海上も飛んだだろう。そのくらい離れていても、西側のAWACS機には、露軍機の動静が見えてしまうのである。


兵頭二十八 note

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