雑報によるとシリア暫定政府は、公務員130万人の給与を4倍に増やす。新札が刷られるはずだが、それはロシアではなくトルコの中央銀行に委託されるだろうとの観測。

 Sofiia Syngaivska 記者による2025-1-6記事「Ukrainian Naval Drone Innovation Destroys russian Air Defense Systems, Alleged Carrier Boat Changes Tactics」。
   またしても軍事史にエポックが刻印された。
 海上の複数の無人艇から発進させたカミカゼ・ドローンが、陸上のSAM(パンツィリとOsa)に体当たりして破壊した。場所はクリミアに接するヘルソン州の「Skadovsk」村。

 3つの防空システムが破壊されたという。

 「無人機母艦」どころではない。「無人母艦」が出現したのだ。

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 ストラテジーペイジの2025-1-6記事。
  昨年ウクライナは、「無人システム軍」を、陸・海・空軍の同格組織として、立ち上げている。

 昨年ウクライナは150万台の各種無人機を製造した。2025年にはその製造数は少し減るだろう。というのは、長距離型に品目をシフトするから。

 「無人システム軍」は、宇軍のUAV作戦を統括しているわけではない。新型機を開発し、それを大量生産させるセクションである。※先の大戦末期のわが国の「軍需省」と性格が似ている。あれはおそらく英国の空軍省を念頭しており、関係者は脳内で「空軍省」と呼び換えていたはず。

 高度1000mから「滑空爆弾」をリリースする長距離ドローンもラインナップに加わろうとしている。露軍の防空部隊はこの対処に苦労するはずだ。

 ロシアの宣伝マシーンは、宇軍のドローンは全部迎撃できていると絶叫しているが、SNSの「WhatsApp」にはしばしば、宇軍のドローンが空襲成功しているリアルタイム動画がUpされる。その戦果の程は、民間衛星写真で確認ができてしまう。

 ロシアが「シャヘド136」を輸入しはじめたとき、その単価は20万ドルだった。いまや、同じ性能の片道特攻機を、ガレージ工房内にて、「十分の一」のコストで製造できる。ただし、それを最大ペースで大量生産させる工場は、おいそれとは建たないのだ。ここに「軍需省/空軍省」に本来期待される仕事が存する。

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 Boyko Nikolov 記者による2025-1-5記事「German Bergepanzer 2 armored vehicle stuck in the Russian mud」。
  戦車回収車であるドイツ製の「ベルゲパンツァー2」が、クルスク攻勢(1月5日発起)の途中、露軍からFPVドローンの集中を受けて擱座した。

 ※この問題は2023年7月の《なんちゃって》「ドンバス反転攻勢」でも起きたことの再現である。あのときはレオ2かブラドリー、どっちかが地雷を踏んだので、それを牽引で救出しようとした僚車数両が、次々と野砲の集中打を喰らって枕を並べて討死に。5両くらいが一ヵ所に放棄されてロシアの宣伝素材になった。真の手柄は、露軍の1機の偵察UAVだった。対地雷プラウや、戦車回収車が出現するや、すぐにそれを友軍砲兵に教えて、全打撃力をそこに集中させたのだ。昔と違い、これらの特殊装備は、前に出れば即座に敵の無人機から発見されてしまう。そして23年のときは野砲集中だったが、25年の今は、FPVドローンがそこに最優先で集中されてくるのだ。

 ※いまや、陸戦では、「戦車回収」も諦めるしかないのである。1両10億円のアイテムを、使い捨てにするしかないのだ。ハッキリ言おう。戦車の時代はもうじき終わる。

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 Joseph Addington 記者による2025-1-5記事「The Rape of Britain」。
    イスラム系住民による「グルーミング・ギャング」犯罪を、英国スターマー政権がひきつづきメディア上で隠蔽させようとしている深刻なスキャンダル。

 イスラミックによるグルーミングは英国では2013年から浮上した社会問題である。
 さかのぼると1980年代からパキスタン系移民の性犯罪が目に余るものがあった。

 そしてながらく、そのような治安の不安は存在しないかのように、意図的・意識的に糊塗されてきた。
 米国のトランプ=マスク・コンビの登場により、英国でも風向きが変わった。
 政治的に隠蔽されてきたイスラミックの犯罪を、SNS上で取り沙汰できるようにしようという動きと、英政権が、衝突している。

 2004年に「Channel 4」がドキュメンタリーを制作している。輪姦事案、児童への性的虐待事案を、地元警察が捜査しようとしない。反ファシズムを標榜する狂った市民団体が、そうした捜査は人種暴動を結果するぞ、とおどかしている。

 先進国が、労働力不足を大量の移民で補おうとすると、エリート階級だけは潤うが、社会秩序は崩壊する。貧乏人が移民犯罪のターゲットになり、それは政府と警察によって放置される。上層階級は、民間警備会社がガードする「ゲイテド・コミュニティ」内で安全に暮らすことができる。

 ※中層階級がこの問題をSNSで訴えようとすると、それはレイシストのヘイトクライムだとして官憲の捕縛の対象になり、犯罪者たちは野放しなのに、告発者は有無を言わさず収獄、というディストピアが、すでに英国や欧州大陸内の数ヵ国では現実のこととなっている。

 米国市民は憲法修正第一条のおかげで、比較的に言論の自由を保障されているが、英国はそうではない。しかしこの問題に目をつぶっていたら、米国もじきに、英国のようになってしまうだろう。

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 Francis P. Sempa 記者による2025-1-3記事「Avoiding the McNamara Trap With China」。
  トゥーキュディデースの罠 を避けようとして「マクナマラの罠」に嵌まったら、いかん。中共はこのままでは2030年に米国との「核パリティ」を達成してしまう。

 マクナマラはMAD(相互確証破壊)の信奉者であった。この信者たちは、「核戦争を戦い、勝つ」ことを最初から諦める。核戦争に勝者は無いと前提し、だったら、「安定」「共存」がいちばんだいじだよね、と結論する。

 具体的には、米軍は、報復力たる「第二撃」用の戦略核兵器(SLBMとB-52)を温存できるならば、ソ連からの第一撃を抑止できるので、核軍備はもうそれで十分じゃないか、と考えた。

 キューバ危機の当事者であったマクナマラは、その直後に米国の核戦略(=大量報復戦略)を根底から見直す気になった。核にかんする「非戦」を重視するあまり、米国民はソ連からの第二撃を甘受すべきだという奇矯なロジックに嵌まった。

 MADはセオリーではなくドグマであった、と、ルトワックは評する。

 アイゼンハワーまでは、大量核報復こそが、ソ連からの核攻撃を抑止するという考え。
 マクナマラはそれを変えたのだ。

 MADが機能するためには、ソ連もそれを心から信奉する必要があった。しかしソ連はMADなんてものにつきあう気はなかったのである。
 ソ連は守る立場ではなかった。世界への影響力をどんどん拡張するつもりだった。

 カーター政権時代にセクデフを務めたハロルド・ブラウンがわかりやすく総括している。「われわれが核兵器を造れば、ソ連も造る。われわれが核兵器を造るのを止める。ソ連は造る」。ブラウンはマクナマラの元部下だった。

 1969にルトワックは書いた。ソ連はとうとう米国との核パリティを達成した。そして彼らはひきつづき、より多数の、そしてより大型の戦略核ミサイルを造り続けている、と。

 大型のICBMから、多数のRVが精密に米国内のサイロを狙えるようになるにつれて、ソ連は「第一撃」を敢行しても米国に勝利できると確信できる立場に近づく。

 1979にキッシンジャーは上院の外交委員会にて、ソ連との核バランス崩壊について、証言している。
 いわく。われわれはみずから、明瞭に不利で脆弱な立場に、身を置いたのである。15年にわたり、われわれは一方的に、そうしてきた。1960年代にMADを採用したことにより。また、さらにカーター政権がそれを選んだことによって。

 やっとレーガン政権になって、マクナマラの自縄自縛を捨てる方針転換がなされた。

 今、米国は1419発の核弾頭をいつでもロシアに向けて発射できる状態。しかしロシアはそれ以上の弾頭を米国に向けて発射できる状態。中共は現状で600発の核弾頭を保有している。しかし米国が「マクナマラの罠」に嵌まれば、2030~2035には、中共単独で米国に並んでしまう。