アスファルトに液化酸素をかけると、道路が爆発する。油脂+酸素は、必爆なのだ。

 ゆえに、露領の石油プラントを攻撃する長距離片道UAVにも、液化酸素のボンベを搭載して、セミ・アーマー・ピアシング用のキャップを付加するだけでよかった。爆薬など不要で、その分、酸素を増やした方が効率的だったのではないか。

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 Thomas Newdick 記者による2025-3-11記事「Russian Raiders Crawled For Miles Through Gas Pipeline To Attack Ukrainians In Kursk」。
  このたび100名前後の露兵が、天然ガスパイプラインの中を歩いて、クルスクのウクライナ軍の背後に回り込んだ。
 奇襲攻略しようとした町は「Sudzha」である。
 この町を露軍が奪回できたのかどうかは、不明。
 それよりやや南方の「Kurilovka」村に攻撃焦点が移ったという解説者もいる。

 奇襲は3月8日に実行された。

 パイプラインの内径は4.5フィートというところで、成人は腰をかがめて通らなければならない。いちおう酸素ボンベを携行したようだが、公表写真やビデオを見るかぎり、ガス管内でふつうに呼吸ができたようだ。

 この特攻部隊はなんと4日間をかけて、パイプ内を9マイルも移動した。
 パイプラインを利用することのメリットは、敵はドローンによってはまったくこれを偵知できないこと。

 露軍はこの奇襲の前に数日間、付近一帯を空爆していたという。

 当該ガス・パイプラインは「Urengoy-Pomary-Uzhhorod」の一部分だったようだ。
 これは別名「Brotherhood pipeline」もしくは「West-Siberian Pipeline」とも称される。
 2024年をもって、このパイプラインの機能は止まった。だからガスはもう流れていないわけだ。

 すべての挺進隊員が「Sudzha」まで達したわけではなく、何名かは、途中で管の外へ出ているようである。

  ※熔断トーチまたはテルミット剤で内側から穴を開けたのか? そうしておけば換気も確保できるし、奇襲が失敗したときの全員離脱にも使える。海底パイプラインと違って陸上パイプラインはぶ厚いコンクリートの被覆がないから、穴開け作業も容易なのかもしれない。外に出た隊員は、体調不良者か、外側の様子を無線で管内に知らせる、通信リレー要員だろう。

 Sudzha はクルスク市の65マイル南西にある町。2024-8中旬いらい、宇軍が占領している。

 ウクライナ軍が公表した動画は、パイプラインから出てきた露軍部隊にクラスター弾を含む砲撃が指向された模様を映している。

 Sudzha には、あらかじめ小規模な、露軍の陸上挺身隊が潜伏し、奇襲に呼応するために、待っていたのであろう。

 ※露領からウクライナ国境内に延びているパイプラインは、太いものが3系統あった。ひとつはルーマニア~ブルガリアまで達する管(さらに途中分岐してハンガリーへも達する)で、これは2022-3に露側が国境で遮断した。もうひとつはベラルーシ経由でいったん宇領に入って、ふたたびポーランドへ抜けて行く管線(さらに分岐してドイツにまで届いていた)。「Yamal-Europe パイプライン」といったが、現在、使われていない。このたびの「Sudzha」を通る管線は、宇領を横断してチェコへ抜け、最後はイタリアに到達するものだった。

 ※露軍が公表した写真だと、台車のようなものに需品を積んで管内を押している。パイプライン内の歩行は中腰にならざるを得ないので、むしろ、プッシュバイクを使うのが正解だったろう。台車のソリッドタイヤと違い、空気タイヤは音も静かだしね。

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 「mil.in.ua」の2025-3-11記事「South Korea Offers Canada Its Weapons Instead of American Ones」。
  韓国は、カナダに兵器売り込み団を派遣した。カナダが米国兵器と絶縁しそうなので。

 特に Hanwha Ocean 製の潜水艦「KSS-III」に力を入れている。売買契約にサインしてから6年後に1番艦を引き渡せる、と。

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 The Maritime Executive の2025-3-10記事「South Korea Offers “Priority” Shipyard Slots to Ward Off Trump Tariffs」。
  韓国は米政府に対して、造船ドック1箇所を米軍御用のために常に空けておくから、それに免じて関税をかけないでくれ、と交渉しているそうだ。タンカーや砕氷船も、そこで造ってやるよ、と。

 もうひとつのオファーは、ながらく開発が前進していない、アラスカのLNG輸出用パイプライン。
 完成すれば、アンカレヂか港から毎年2000万トンのガスを輸出できるようになる。ただし、その工費は440億ドルにのぼるだろう。

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 U.S. Naval Institute Staff による2025-3-11記事「Report to Congress on Ukrainian Military Performance and Outlook」。
   3-10に米連邦議会に対して、ウクライナ軍のパフォーマンスについての報告書が提出された。

 まず兵員だが、宇軍の将兵の平均年齢は40歳だ。

 ※これはまったく新しい社会実験だ。ベトナム戦争に従軍した米兵の平均年齢は19歳だった。その経験が70年代の米国社会を彩った。2000年代のイラクとアフガンでは、米兵は全員志願者なので、平均年齢が10歳以上高くなったはずだ。その体験は、直近10年の米国社会に反映されている。しかし、40歳の男たちが長期戦争をくぐり抜けた社会は、まだ存在しない。それがどのような社会になるのか、要注目だ。

 宇軍は師団以下級の幕僚の教育が追いつかないので、下級部隊の指揮・幕僚勤務を、上級部隊の幕僚が面倒見てやらねばならない。このため、ディシジョンが遅くなる。なおかつ、軍隊が中央集権的となり、末端のイニシアチブが活きない。

 宇軍は、「軍」のすぐ下を多数の「旅団」とする機構改革を考えている。つまり、組織図から、「師団」を省略してしまう。

 しかし、新編旅団があまりにもお粗末なので、最近は反省し、やたらに新編をしないで、むしろ既存の旅団に新兵を送り込んで補強するように変わった。

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 AFPの2025-3-10記事「Coolant leak at Europe’s biggest nuclear reactor: operator」。
   フィンランドの「Olkiluoto 3」原子炉にて、放射性の冷却液が漏れた。金曜日。100立米ほど。
 この原子炉は、1基の炉としては欧州最大。ちなみに、原発の規模でくらべると、ザポロッジア原発が、リアクター6基で、最大である。

 年にいちどの点検のさいに、やらかした。ただし、施設の屋内であり、環境中へは漏れ出していない。人の被害も無し。

 この炉はフランスの Areva の設計(ジーメンスも参加)。加圧水型。

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 Kamil Galeev 記者による2025-3-1記事。
  プー之介には、「戦争計画」は無かった。ここが重要。
 「レジームチェンジ」を計画して、失敗した。それで、予想もせぬ泥沼戦争が始まった。

 キエフの「政府」首脳を粛清して傀儡ととっかえる、それだけの仕事のはずだった。そのアテが外れた。

 1991以降も、産業サプライチェーンは、露領と宇領でソ連邦時代同様に連携連続していた。これがプー之介を勘違いさせた。奴のアタマの中では、宇領は「アセット」にすぎないのだ。だからその分離独立に納得できない。

 「アセット」であるがゆえに、壊せば損である。無傷で手に入れるべきである。だから、奇襲計画としては、破壊の程度が甘いものになった。

 プー之介はウクライナ人が反撃してこないと錯覚した。これは、2014以降のドンバスの事情を、全ウクライナにあてはめたための誤謬だった。ドネツクとルハンスクでは、親露の軍閥が、マッドマックス世界式にのさばっていた。ところが、ドネツクとルハンスク以外では、ウクライナ住民は、そのような世界は御免なのだ。だから銃を執って立ち上がった。

 ポスト冷戦期のロシア人たちの意識の中に、他者の立場や都合は存在しない。だから「プランA」として手前の立場や都合を腕ずくで相手に押し付けようとだけ考えている。その「プランA」が失敗した場合の「プランB」はどこにもないのだ。だから、失敗した侵略は、永久無限戦争になるしかない。

 ゼレンスキー戦争指導部も、プー之介と同じくらいに無能であった。鏡に映したように同じロシア流の失敗をやらかしている。すなわち、自身の企図を敵に押し付けることが一方的に可能だと妄想し、その「プランA」が失敗した場合の「プランB」を何も考えていないのだ。だから今日のような事態に立ち至る。

 ※もうひとつ。ホーチミンのように、戦いながら国民を再結合させるという着眼がない。都市防衛は、都市民がトンネルを掘ることによって達成するべきなのだ。それをさせないから、都市民にとって戦争は余所事となり、海外逃亡を望むようになる。防空ミサイルでは戦争に勝てないのだから、そんなものを西側に物乞いしているヒマがあったら、攻撃兵器量産の陣頭指揮を執るべきであった。このアタマが切り替わらない限り、長期戦は国民国家としてのウクライナを不可逆的に分解させてしまうから、手早く終戦する方がマシ。

 記者の見るところ、この戦争は永遠のステールメイトに落ち込むしかないだろう。

 ※SNSのお笑い投稿。史上初めて、「彼は馬鹿だ」と書き込まれただけで、世界の90%の人が、その「彼」とは誰なのかを察するようになった。

ときどき、こういうことを言う人がいる。
ラジオの時代は終わった、と。
んなこたぁねえ。
プルトニウム燃料が原発に装荷され得る限り、ラジオも不滅だ。
あきらかにしようじゃないか。
ほんとうはどっちなのか。

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 Supantha Mukherjee and Gianluca Lo Nostro 記者による2025-3-8記事「Explainer: Could Europe’s Eutelsat help to replace Starlink in Ukraine?」。
   ユーテルサットは、2023年に「OneWeb」と合併した。以来、ユーテルサットは、スターリンクを代替できる唯一の全地球サービスである。どちらもLEO周回衛星群を使う。

 違いは衛星の数。
 スターリンクは7000機以上を周回させている。
 ユーテルサットは630機のLEOと、それをバックアップする機能がある35機の静止衛星からなる。

 この違いが通信速度に反映される。スターリンクは200メガバイト/秒。対するユーテルサットは150メガバイト/秒だ。

 「OneWeb」の地上端末は1万ドルする。プラス、ユーザーは毎月、利用料を支払う。
 スターリンクは、ウクライナのユーザーの場合、申し込み費用589ドル、プラス、月々の利用料として95ドルから440ドルを徴集する。利用料はデータ量によって変わる。

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 Brian McElhiney and Keishi Koja 記者による2025-3-11記事「Air Force investigates after Reaper drone rolls off runway on Okinawa」。
   嘉手納基地で「MQ-9 リーパー」がタキシング中に滑走路を逸脱。月曜日のこと。米空軍が原因を調べている。

 空軍の第8軍所属の「リーパー」は最初、鹿屋に置かれていたが、2023の後半に、嘉手納に引っ越した。第319在外偵察スコードロン。
 海兵隊の第3無人機スコードロンは、ハワイから沖縄にやってきた。機材は「MQ-9A」。
 防衛省いわく、2024-8時点ですくなくも6機の海兵隊のリーパーが嘉手納に所在。
 「リーパー」の単価は5650万ドルである。