並木書房さんの『世界の終末に読む軍事学』です。
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The Maritime Executive の2025-3-16記事「Second Shipload of Ballistic Missile Fuel Nears Iran」。
貨物船の『MV Jairan』がマラッカ海峡を通過した。同船はイランが中共に派遣した2隻の貨物船の2隻目で、中国産の「sodium perchlorate」=過塩素酸ナトリウム を満載して、バンダル・アッバス港に戻らんとす。
過塩素酸ナトリウムは、過塩素酸アンモニウム(ammonium perchlorate)を製造するための原料になる。イランは、過塩素酸アンモニウムから、弾道ミサイルの固体推薬を製造する。
※ウィキで補うと、過塩素酸アンモニウムに合成ゴムとかアルミ粉を錬り混ぜたものが、日本のH-II型ロケットのブースターになっている。別なモノを混ぜれば「カーリット」という爆薬になってしまう。
このフネのオーナーであるイランの船会社は、米国財務省によって制裁対象に定められている。
いまのところAISは切っておらず、おそらく3-26よりも早い日に帰港するだろう。
『ジャイラン』は1万6694トン。このたびの過塩素酸ナトリウムは、24個のコンテナに詰め込まれている。
この量だと、過塩素酸アンモニウムにした場合、250発の中距離弾道弾のブースターに化けるだろう。
イラン国内のロケット推薬工場は、Parchin (テヘランの南)と、Khojir にある。
フーシやヒズボラにロケット弾を援助しまくっているイランは、どうやら、深刻な「過塩素酸アンモニウム飢饉」の状態にあるらしい。
貨物船は、マラッカ海峡を抜けてインド洋に入ったところで、イラン海軍からのエスコートを受けるはずである。
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ストラテジーペイジの2025-3-16記事。
世界の原油生産のビッグ3は、合衆国、サウジ、ロシアである。この3国で39%を掘っている。
ロシアは、イランからカスピ海の舟運を使って入手したモノを活かすために、ヴォルガ川とドン川を連絡する、長さ101kmの運河〔1952年にできたという〕を2023に大浚渫し、大型船が、カスピ海と黒海の間をそのまま行き来しやすくなるようにした。
現状、積み荷5000トン、全長140m、幅17m、吃水3.5mまでの貨物船なら、カスピ~黒海を自由に出入りできる。
件の運河は、年に1200万トンの物資を通す。現状、その半分は原油もしくは石油製品である。
ロシアは、イラン船がこの運河を利用することを2021に許可した。
この運河の途中には13箇所の閘門がある。
ヴォルガ河は、カスピ海に注いでいる。
ドン河は、アゾフ海に注いでいる。
カスピ海の塩分濃度は、黒海の三分の一くらい。
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Olena Harmash 記者による2025-3-17記事「Ukraine’s Zelenskiy appoints new chief of general staff to speed up reforms」。
ゼレンスキーは、Anatoliy Barhilevych 中将の参謀総長職を解き、後任に、Andriy Hnatov 少将を据えた。日曜日の人事。
Hnatov の軍歴は27年である。
ウクライナ軍はいま、88万人、いるであろう。
今年はじめ、宇軍の中枢は、「旅団」中心の編成を、「軍(corps)」中心の編成にあらためたい、と言っていた。
これは、総延長1000kmある対峙線で有機的に重点を形成するためには、旅団単位で決心していては、スピードが遅すぎるという反省から。
※自由主義世界の――つまり統制経済システムではない――先進社会においては、これからは、大型工事だとか大規模建設プロジェクトにかかわることが、ますます《不吉》になる一方だという厭な予感がする。その代表例は北海道新幹線だが、これは永久に完成しない気がする。核戦争後の倉庫になると思えば、既成部分は無駄にはなるまいが、未整部分は、どんどん完成予定年度が遠くへ離れ去っていく。あたかも膨張する宇宙の辺縁のようだ。上水網や下水網だって、自治体はこれから、まともに維持するだけでも手一杯になるだろう。投機マネーを集めて比較的に速く完工するタワーマンションも、数十年経てば共用部分の修理がマネージできなくなり、廃墟化すると噂される(人が住まない前提のフラックタワーは、この苦労が無い)。おそらく、これからの正しい方向は、システムをできるだけ細分化することだ。「旅団」を「軍」にまとめてしまうのではなく、その逆に、「旅団」を「小隊のあつまり」に替えて行くイメージだ。200cc.以下の「サイドカー」で16歳の少年が荷物を運搬して小遣いを稼ぐことを、法令で許すべきだ。そのドライバー経験を2年積んだら、こんどは18歳で「乗客」を運んでもいいことにするのだ。この流儀なら、過疎自治体の独居老人は、生き残れる。
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Defense Express の2025-3-16記事「How Ukrainian Soldiers Counter Enemy Tactics in the Kupiansk Sector」。
露軍は歩兵を小部隊に分割して、夜間、宇軍の背後の補給道路に地雷を仕掛けさせている。これを翌朝に除去する宇軍の工兵の負担が増している。
露軍の自爆ドローンもさいきんは、光ファイバー・ケーブルで操縦されるようになった。これを迎え撃つ宇軍の兵士は、ポンプアクションのショットガンを使っている。宇軍のすべての部隊に、その散弾射撃の専門兵が置かれている。彼らは特別に訓練されている。
※宣伝ビデオによると、露軍は「シャヘド136」の国産品を、ピックアップトラックに背負わせて、そのトラックを疾走させることで、離昇のための初速を与えてやり、それによって、RATOの調達費用を節約している。おそらく、RATOを量産するための過塩素酸アンモニウムの入手が、おいつかなくなってしまっているのではないか? こうした特定ケミカル原材料の不足は、世界的な現象のように思われる。
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AFPの2025-3-16記事「China’s Baidu releases new AI model to compete with DeepSeek」。
また新しい無料のAIサービスがインターネット市場に投入された。
「百度」が開発した「Ernie 4.5.」。
1月にリリースされたライバルの「ディープシーク」よりもさらに低コストだという。
また、他社のAIよりも回答が速く出てくる、と主張している。
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The Maritime Executive の2025-3-16記事「Russia Agrees to Help Landlocked Ethiopia Rebuild its Navy」。
エチオピアは、海軍を復活したがっている。ロシア海軍はそれに手を貸しましょうと言って、エチオピア政府に近づいている。
エチオピア海軍は1950年代に創隊されたが、1993にエリトリアが分離独立してしまったことにより、エチオピア領土には海岸線がなくなってしまった。
しかし2018年、エチオピアの新首相アビィ・アーメドは、海軍を再建することに決めた。フランスが助けてくれると彼は思っていた。
2019にマクロンがエチオピア訪問。まず人材教育がスタートした。
それは外国頼みとならざるを得ないので、ロシアが手伝いますよと言って来れば、エチオピアは断らないのである。
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「mil.in.ua」の2025-3-16記事「US Considering Recognition of Somaliland in Exchange for Military Base」。
『フィナンシャル・タイムズ』紙によるすっぱ抜き。
米政府は、ソマリランドを国家承認してやるかわりに、紅海に面するベルベラ港付近に米軍用の海軍基地を置かせろ――と要求しているそうだ。
ついでに、ガザ住民や、米国内から追放する輩の定住地も、ソマリランド内に提供してくれよ、と言っているらしい。
なお、「国際刑事裁判所に関するローマ規定」の「アーティクル7」によれば、住民を強制移住させることは「人道に対する罪」とみなされ、ICCがトランプ一派を訴追することになるであろう。
※雑報による、カナダ人と米国人の労働者としての境遇比較。カナダの最低賃金は1900円~1500円。米国の最低賃金は7.25ドル=1078円。連邦の所得税の中央値は、カナダが20.5%、米国が22%也。健康保険は、カナダは税金でカバーされ、米国は1人が平均7000ドル/年を負担する。労働組合の組織率は、カナダが30%、米国10%也。有給の育休は、カナダでは最大78週間。米国ではゼロ。よってカナダ人はトランプ軍とあくまで戦う。併合されても良い事無いから。

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