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Kamsi Obiorah 記者による2025-3-30記事「Taiwan’s Defense is out of Stock」。
国防総省は、高額・高性能な空対艦ミサイルであるLRASMの調達をこれまで停滞させるに任せ、また米政府は、機能に定評がある地対艦ミサイルのハープーンを敢えて台湾に売ろうとしてこなかった。このおかげで2027の「予定日」を前にして、台湾防衛構想が難しくなっているのである。
米空軍は、FY2020とFY2022に、ただの1発のLRASMの予算も要求しなかった。FY2021には、わずか5発が予算要求されている。
米海軍は、FY2020からFY2025にかけて、毎年平均71発のLRASMを要求し続けている。しかしそれは空軍の無気力を補うほどの数量ではあり得ない。
いまの調子だと、2027年には、海軍と空軍あわせて629発のLRASMを揃えていることになるだろう。しかしRAND研究所の見積りでは、台湾をめぐる65日間の米支戦争に必要なLRASMの数量は、1200発だという。
台湾は、2020年に、FMSによる400発のハープーン・ミサイルと100台のラーンチャーの発注を済ませた〔代金を米政府に対して前払いしているということ〕。
しかるに米政府がボーイング社にその製造を発注したのはそれから2年半後だった。
いまのままだと、台湾は2026年の時点でも、既発注分の三分の一のハープーンを受領できているのみであろう。
米政府は、ハープーンをまずウクライナにやり、ついでサウジアラビアに売るという優先順位を決めているのだ。台湾はその後まで待たされるのである。
2023公表のCSISによるシミュレーション。もし2026に台湾有事となれば、米兵の1日あたりの死者数は、ベトナム戦争が酣だった時を上回るだろう、と。
しかもLRASMは開戦初盤の3日目にして、すべて撃ち尽くされてしまうという。
中共の建艦能力は今、米国の15倍である。中共の『076』型揚陸艦は世界最大サイズで、しかもカタパルトを有し、数十機の航空機を放つ。
台湾の主力兵器メーカーは、近過去2年に、131発の「Hsiung Feng」対艦ミサイルを製造した。
このポテンシャルは拡張されなくてはいけない。
記者の提案。同時にアメリカは、有事に台湾を防衛するという約束を撤回するべきだ。なぜならアメリカには、その約束を果たすに足る、対艦ミサイルのストックがないからである。
※この記者には軍歴は無く、外交シンクタンクである「John Quincy Adams Society」に属す。このシンクタンクからは、米国は欧州防衛にもアジア防衛にも積極的に乗り出すべきではないという論議が量産されている。
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ストラテジーペイジの2025-3-31記事。
シンガポールは、そのマラッカ海峡警備のために、「MARSEC」という無人リモコン艇を採用した。排水量30トン。長さ16.9m、幅5.2m。最高速力50km/時弱。航続時間は40時間。
これは2人のオペレーターによって操縦される。その操縦は、陸上または、すぐ近くの別の船の上からなされる。
無線を有していなさそうな小舟に音声によって警告するため、LRAD= Long Range Acoustics Device も搭載している。
武装は複数の 12.7mm machine-gun である。
また、非殺傷性の、レーザー光線銃も備える。これは海賊に対して目潰しとして用いるそうだ。
中共は、2000トンの『Zhu Hai Yun』を登場させた。
それ自体、無人で動かせるという。AIを使うとフカしている。
そしてその船内には、無人艇(一部は潜水型)と無人機が15機、収容されている。マザーシップなのだ。
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Vladimir Signorelli 記者による2025-3-31記事「The Weaker U.S. Dollar Is MAGA’s Silent Killer」。
ステフェン・ミランは、トランプ政権の経済アドバイザーの座長。この御仁、ドルを弱めればよいのだという考えなのだが、それを実行するとどうなるか。
世界の「備え用の通貨」としてのドルの価値が下がるということ。
トランプ就任いらい、ドルはすでにGoldに対して値を下げ続けている。
Goldの価値がこのように上がるのは、歴史に徴して、警告である。これから経済の大波乱が来るという。
1880年代、ドルは(重さ約二十分の一オンスの)Goldに兌換比率が固定されていたので、それは関税の変動に対するガードレールになっていた。
1970年代にニクソン政権はドルの価値を引き下げた。それはスタグフレーションにつながった。今、ドルを弱くすれば、同じことになるだろう。
弱いドルは、輸入品、なかんずく原油の価額を押し上げる。それは自動車燃料、食糧品、日用品の価額を押し上げる。それは、選挙でトランプを熱烈に支持した低所得者層の家計を直撃する。
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Joel Jose and Siddarth S 記者による2025-3-31記事「Goldman raises odds of US recession to 35%」。
ゴールドマンサックスは、米国経済のリセッションは20%ではなく、35%になるだろうと、予想を悪い方へ修正した。
また米国の2025年の経済成長も、2.0%ではなく1.5%だろうと、下方修正した。
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AFPの2023-3-31記事「China discovers major new oilfield off Shenzhen」。
深センの170km沖の海底を掘れば天然ガスが出てくるという、昔も聞いたような大本営発表。
CNOOC=China’s National Offshore Oil Corporation が月曜日に。
埋蔵量は1億トンだそうだ。
「Huizhou 19-6」という海底鉱区を試掘したところ、日量413バレルの原油と、6万8000立米の天然ガスが得られたと。
※このような宣伝をすることで、いったい今、誰にとっての得があるのか、絞り込めない。
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The Maritime Executive の2025-3-31記事「Iran Reports Stopping Two Foreign Tankers for Oil Smuggling」。
イラン当局は、外国船籍の2隻のタンカーを密輸容疑で拿捕して曳航中という。積み荷は「diesel fuel oil(=軽油)」だという。
船名は『Star 1』と『Vintage』。
うち1隻はUAEの所有らしい。イランから石油製品を搬出する密輸集団が存在するのだという。
また1隻は、中共から固体ロケット燃料用の原料を運んでいるとの既報あり。
※イランはホルムズ海峡の水中で核実験するだけでトランプ政権を打倒できる。ガソリンが高騰するとどんな米政権ももちこたえられないのだ。トランプもそれを知っているし、イランもそれを知っている。だからイランが空爆されることはない。
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Mark S. Bell and Fabian R. Hoffmann 記者による2025-3-31記事「Europe’s Nuclear Trilemma」。
欧州はロシアの侵略を、短射程の戦術核だけでは、止められない。というのは、ロシアは初盤で簡単にバルト三国を占領してしまい、そこを次の作戦基地にできる。「アグレッシヴ・サンクチュアリゼーション」という戦略だ。そこに居座った露軍に対しては、英仏は、核攻撃をしかねるだろう。
※バルト三国がダーティボムと長距離UAVを組み合わせた対モスクワの報復手段を取得する以外に、合理的な抑止は無理だろう。無理な抑止を構築するに足るカネが、英仏にはもう無いはずだ。

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