米国内で流通している単行書籍にまでロシアの社会攪乱工作が浸透していて、ドイツ系っぽい無名著者名による、人種対立を煽動する内容の本が、すでに20点以上も出版されているという。

 Phillip Dolitsky 記者による2025-4-14記事「From Thucydides to Twitter」。
   現代の戦略家は、情報の洪水に溺れて、仕事どころじゃない。
 現在進行中のノイズにしじゅう悩まされているオフィスで、おちついてクリエイティヴな将来向け戦略など策定していられようか。
 やっていることが、為替トレーダーと変わらなくなった。

 だがじつはこういった嘆かわしい世態変化は、19世紀にすでに、一部の知識人に看取されていた。
 フリードリヒ・ニーチェはそれを文章にして指摘した。大衆が情報に踊らされている現代社会は「病的」だと彼は思った。

 ニーチェは、プロイセンの学校教育文化が現代社会の病気に迎合していると見た。
 まったく表面的な知識の詰め込みなのだ。そのため《深い学び》の可能性が、切り捨てられてしまっている。

 彼は、大学生を相手に、未来のドイツの教育機関をどうしなくてはいけないか、講義をしている。
 現代の生徒たちは、せっかく学校で歴史や文学の古典に触れていても、卒業するや、毎日、新聞漬けになる。
 大衆の意見から包囲されて、彼の心はそれに屈服する。爾後、彼の世界理解をかたちづくるものは、もはや、新聞の見出しだけだ。

 持続的に歴史を考究することなしに世界を理解することなどできない。しかし現代の大衆は、じぶんたちはそれを分かっていると錯覚させられる。マスコミによって。

 毎日読まれる新聞が、学校の教育にとってかわる。大衆ジャーナリズムが、必要十分な知恵の全部となってしまうのだ。

 ニーチェの時代(1844~1900)ですらそうであったとすれば、今は当時の数乗倍、そうであろう。

 リデルハートは叱咤した。3000年分の戦史の記録が残されていて、その中に警告が満ちているのに、それを知りませんでした—で、今日の戦争指導が勤まるのかと。

 今日、戦略を論じている者たちは、3時間前の世界がどうだったのかすら、覚えているか、あやしい。最新のネット・コンテンツの「まとめ」プレゼンテイターばかりが増えた。

 キッシンジャーは、良い政治家になりたくば「ディープ・リテラシー」を習性化しろ、と言った。刻々の外部刺激から、じぶんのメンタルを切り離せなくてはいけない。さもないと正しい準縄から逸脱させられると。
 ソーシャルメディアは、このディープリテラシーの対極にある。
 知識量は即席に増加される。しかし、人をワイズにはしない。過去の文脈から切り離された知識だから。

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 David Ozgo 記者による2025-4-11記事「Want To Bring Back Manufacturing? Here’s How」。
   2023年において米国人は1兆5000億ドル以上をさまざまな輸送部門の関係に使っている。これはGDPの5%以上にあたる。

 われわれが何の商品を手に入れる時も、それは輸送され運搬されてきている。そのコストが品代に含まれている。
 もし、輸送にかかるコストを減らすことができれば、人々はモノを安く調達できる。

 1920年制定の「Merchant Marine Act」は、別名「ジョーンズ法」ともいう。米国領の港湾Aから米国領の港湾Bへ商品を海送する船会社は、米国人が所有する会社でなくてはならず、また、その貨物船は、米国内で建造された貨物船でなくてはならず、また、乗組員の75%以上は、米国市民もしくは米国内の永住者でなくてはいけない――としている。

 しかし2019年のカトー研究所のリポート「Rust Buckets: How the Jones Act Undermines U.S. Shipbuilding and National Security」は指摘した。第一次湾岸戦争のとき、シーリフトコマンドが傭船した281隻のうち、たったの8隻だけが、ジョーンズ法に適っていたと。
 とにかく、米国人水夫を、貨物船業界はそんなに集められないのが現状なのだ。

 ようするにジョーンズ法は、米国の安全保障に資していない。のみならず、米国企業の経済的な商行為の障害になっている。

 EUが、その域内の商品輸送の40%を船でしているのに比し、米国は、自国内の商品輸送のたった2%だけを、海路で動かしている。壮大な無駄である。

 ジョーンズ法は、悪法である。特にアラスカ、ハワイ、米領バージン諸島、ならびにプエルトリコは、米本土との間の商品輸送を、ジョーンズ法が可能にしている寡占価格をふっかける汽船会社に頼むか、それがいやならば、空輸に頼るほかにないのだ。だから、商品には余計な輸送費が含まれることになっており、全米の消費者が、損をさせられている。

 たとえば、プエルトリコの住民が商品を米本土から取り寄せる運賃は、ドミニカ共和国から同じ重さのものを船便で取り寄せる場合の、2倍かかっている。

 特にこれからまずいのが、アラスカ産のLNG輸送である。LNGタンカーで、ジョーンズ法に適っているものは、1隻もない。だから、アラスカのLNGは、このままでは米本土へは供給しようがないのである。海外輸出だけが、可能なのだ。

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 ストラテジーペイジの2025-4-14記事。
  ウクライナ発表によると、2022後半から2024後半まで、露軍は4800発のミサイルと、15000機弱の自爆ドローンを放ったと。

 ミサイルの単価は、100万ドル~200万ドル。
 ドローンの方は、イラン製の「シャヘド」が35000ドルというところ。

 露軍の典型的な152mm榴弾は、弾重が43kgで、炸薬は7kgである。その値段は、最低でも3000ドル。ハイテクの弾丸だと10万ドルする。
 FPVドローンは、やりようによっては単価数百ドルで量産できるから、露軍も、経済を考えて、従来の野戦榴弾砲の火力を、ドローンで置き換えようとしている。

 イランの技術を導入するドローン工場は、ボルガ河沿いに所在する。というのも、カスピ海から物資を川船で搬入できるから。

 ロシア政府は2026年までに、ドローン産業に労働力33万人を集めさせるつもり。2035年には、その規模は150万人にするという。

 ロシア国内での「シャヘド」の月産量は、330~350機というところ。これまでに累積2000機以上を内製した。それとは別にイランからは完成機2600機を輸入した。

 ロシアはイランに鉄道を直結したい。しかしゲージの差があって、国境でコンテナだけ相手貨車に載せ換えるという方法にするしかない。
 トラック道路だとこのゲージの障害はないわけだが、トラック輸送の運賃は列車輸送の3倍かかってしまう。


 ※まったく確認のできない雑報ルーモアだが、米国内の砲弾製造会社が、その株主の詳細を公表しなくてもいいように、ホワイトハウスが例外ルールを導入しようとしているという。これは、トランプの演説とは裏腹に、外資が梃入れすることを意味するのかもしれない。