B-1爆撃機が、これからは、ローテーションで三沢常駐となる。

 Greg Hadley 記者による2025-4-16記事「B-1s Deploy to Misawa for First Ever Bomber Task Force Based in Japan」。
   テキサス州のDyess空軍基地から15日に三沢に飛来した。そしてその日のうちに、韓国空軍機と合同訓練している。
 「ボマー・タスク・フォース」といい、これは2018年から始まった。海外基地にローテーションで展開するのだ。

 今年2月、グァムから1機のB-1が三沢にやってきて「ホット・ピット」燃料補給を実験している。これはBTFではなかった。

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 Paul Krugman 記者による2025-4-16記事「Why Trump Will Lose His Trade War」。
     中共側は、貿易とは何か、貿易戦争とは何かを、理解している。かたや、トランプは、じぶんが何をしているか理解していない。それどころか、じぶんが何を望んでいるのかも知らぬ有様だ。

 トランプと、彼の周りのおべっか使いたちは、国際貿易を理解していない。われわれが何を売れるかではなくて、われわれが何を買えるかが、大事なことなのだ。

 個人に譬えてみよう。なぜ人々は働く? 働くということは、じぶんの労働を売ってカネを得るという行為だ。多くは、雇い主に対して労働を売っている。人々は、労働を売った対価を得たあと、そのカネを使って、こんどは自分が欲するモノを買うのである。そのためにこそ、働いているのである。

 国際貿易をするのも、同じ必要からだ。ある国には、海外から買いたいモノがある。だから交易する。そのさい、輸入だけでなく、輸出もする。なんとなれば、輸出して得たカネを、輸入するモノの支払いに使えるからである。

 一国にとって、貿易のベネフィットとは、欲しい物を、安く、海外から手に入れることができる状態のことなのだ。その「欲しい物」は、自国内には産出しないモノであったり、自国内では安く製造できないモノである。

 たとえば米国の北部の諸州は、カナダから安価に電力を買っている。その電力はカナダ領内の水力発電ダムにおいて安価に豊富に発電されている。米国の北部の諸州には、その価格以下で豊富に発電する手段が、あいにく、存在しないのだ。

 ならば、米支が「貿易戦争」をすれば、困るのはどっちの側だろうか。

 昨日の『フィナンシャルタイムズ』紙の記事が、うまくまとめている。米国の対支輸出は、農産品が大宗なのだ。
 さらにFT紙は指摘する。それらの輸出農産物は、「低付加価値」な商品であると。
 米国の農業は、高度に生産的で、高度に資本集約的なのか? 記者はそれについては不案内である。
 ただ、単純な事実があるだろう。中共は、アイオワ州産の大豆を買わなくとも、ブラジルからいくらでも大豆を買えてしまう。

 それに対して、米国が中共から輸入しているモノの多くは、米国工業が切実に必要としている原料や資材で、しかも、その代替品の輸入先となると、すぐには見つからぬモノであったりするのだ。

 ようするにトランプは、米国産業のサプライチェーンを破壊する「貿易戦争」を始めてしまった。
 新コロ蔓延時に何が起きたか、皆、覚えているだろう。経済のいたるところで物資が欠乏し、それがあらゆるコストを押し上げた。インフレだ。あの近過去が、間もなくリバイバルする。

 米国の産業はトランプのせいで大ダメージを蒙るだろう。

 本日、『WSJ』に「U.S. Plans to Use Trade Negotiations to Isolate China」というタイトルの記事が出た。
 間違いなくこの記事は、スコット・ベッセント財務長官周辺からのリーク情報に基づいて書かれている。

 そして、過去のまともな政権の治下であれば、こうしたインサイド・スクープから、目下の政策形成過程が察知できたものなのだが、今のトランプ政権に関しては、このようなスクープに、ほとんどまったく価値がない。現政権には「ポリシー・プロセス」など、ありはしないからだ。

 ベッセント、ナヴァロ、ハワード・ルトニックら政府の高官が、頻々と、銘々に、政策の思いつきを公言する。しかし1日か2日すると、トランプがテレビカメラの前で違うことを語る。あるいは「Truth Social」にまるで違うことをポストする。その内容は、数日前の高官の発言と全然話が違う。果てしもなく、こんなことが繰り返されている。

 WSJが報じたのは、ベッセントが政策化してもらいたいと念じていることなのであるが、それはトランプの政策にはならないのである。
 ベッセントは、何ら、政策を仕切っていない。

 トランプが、第三国に対して「中共を孤立化させよ」と要求して呑ませたとする。称して「ディール」という。しかしその第三国がその「合意」を維持するかどうかは、もう、わからない。なぜなら、トランプが自からのクレディビリティを捨ててしまったからだ。過去の重大な約束事を守らないことを連日実証しつつある相手との約束を、誰も真剣に考える理由がない。トランプは過去の重要な合意を思いのままに破り捨てている。そんな相手とはそもそも約束は成り立たないだろう。なにかを約束したフリだけが、合理的に可能である。

 欧州諸国は、トランプにつきあって中共との間のサプライチェーンを破壊する理由がない。
 報復的なトランプ・タリフを回避するためにはそれをした方が悧巧だって?
 違う。無体なタリフで脅迫されて大きな譲歩を簡単にした者は、その件が済んだあとでもまた、幾度でも別件に付きムチャクチャな言い掛かりを吹っかけられては、そのたびタリフでまた脅されて、無限に強奪をされ続ける流れになってしまう。そうなる転帰は、ヨーロッパ人にとっては歴史の常識であり、容易に見通されている。

 トランプ政権は、銃による決闘に、ナイフを持って臨もうとしている。
 中共は、米国と西側のサプライチェーンそのものを破壊できるし、トランプ・タリフをきっかけに、早くももう、その段階に移ろうとしているのである。ところがベッセントは、おめでたくも、米支戦争が「市場アクセス」を敵に対して制限してやれるかどうかという、そんな少年スポーツ試合の段階だと、甘く考えている。それはナイフだ。敵はもう、銃を構えている。

 クルーグマンは憂鬱である。裁判なしに住民を捕らえて即日に南米の重罪刑務所へ送り込んでしまえるような政体は、近代政体ではない。近代政治が苦労して確立してきた「人権憲章」を平然と且つ公然と無視するわけだから。近代政体でないということは、中露と同列である。これは、GDPが失われることと、同じくらいに痛い。今回は、痛みがダブルでやってきた。

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 The Maritime Executive の2025-4-18記事「Report: Chinese Satellites Feed Houthis Target Ship Data」。
   『The Financial Times』によると米政府は、中共が衛星情報をフーシに渡し、それをもとにフーシが商船攻撃している証拠を掴んでいる。
  フーシは2023年いらい、100隻以上の商船を攻撃している。

 イランが派遣している「Qods」の面々がイェメン内でミサイル/ドローンの運用に協力している。

 イランの「Khayyam」衛星は、ロシア製。「Kanopus-V」画像衛星そのものである。この衛星は複数回っている。そのコンステレーションの中に、イラン衛星も、混ぜて貰っているという感じだ。

 中共の「Chang Guang Satellite Technology」社が、衛星情報をフーシに提供しているそうだ。
 この会社はミニ衛星を100機も、2024年から、運用している。2025年には300機にするという。

 これだけの数があれば、特定海面の特定商船の動静を、10分おきにチェックできる。

 ※仏海軍の『アキテーヌ』級フリゲートが、紅海にて、オットーメララの76mmでフーシのドローン特攻を迎撃する動画が公開されている。ただし命中の瞬間だけは、編集でカットされているなと感ずる。重要情報だからね。76mm砲弾は、1発が数千ドルというところ。有効レンジは4マイル。

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 ストラテジーペイジの2025-4-18。
   アラビア半島で、唯一、まったく石油がでない地方が、イエメンなのである。
 その代わり、イエメンには雨が降る。だから農業が可能。

 フーシを今、率いているのは、45歳の Abdul-Malik al-Houthi である。

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 Mykhailo Liuksikov 記者による2025-4-18記事「Russia Ramps Up Production of Shahed Drone Clones at New Izhevsk Facility」。
    ロシアは新たに Izhevsk 市に工場を建設して、そこで「シャヘド136」を生産し始めた。

 オリジナルのシャヘドは、翼端の垂直安定板は主翼と一体成型。しかし最新のロシア版では、3本の螺子で接合していることが、公開画像からわかる。

 Izhevsk で製造されたドローンは、K か KB か KC で始まる記号がプリントされている。

 エンジンは、イランのオリジナルは Limbach 550(ドイツ製) だが、Alabuga 工場製のものは、イランのぱくりものである「MADO MD 550」をとりつけている。そして今度の新工場では、中共製のぱくりものエンジンをとりつけているようだ。

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 Chieh Chung 記者による2025-4-17記事「Analyzing the PLA’s Early April Exercises in the Taiwan Strait」。
   直近の大演習では、浙江省の沿岸から長距離地対地ロケット弾を発射して、台湾の「Yong’an」のLNG受け入れ港の施設を破壊できることをTVフッテージでアピールしていた。

 また「YJ-21」というハイパーソニックの空対艦ミサイルを「H-6K」から運用するつもりであることも、4月1日に動画で宣伝していた。

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 Daniel Woolfson 記者による記事「Trump targets Chinese ships as Beijing boycotts US gas」。
   米政府は、米国の港に入る中共の貨物船から、賦課金を徴収する方針である。木曜日に発表された。
 これは国際海運にとっては、大激震だ。

 賦課対象は、中共で建造されたすべての商船と、中共が所有者である商船。徴収金額は、載貨の量に比例させる。しかも、一航海ごとに賦課するという。

 実施は、半年以内だという。
 さらに、3年以内には、外国で建造されたLNGタンカーにも、この賦課金制度を適用するという。

 実施されると、入港した中共船は、積み荷1トンにつき、50ドルを払わされる。この値段はその後も上がり、3年以上かけて、逐次に増徴する。

 今年はじめの噂では、1回入港ごとに1隻から100万ドル徴収するとかいう話だったが、それは当面、しないようである。

 『FT』紙によると、米国から中共へのLNG輸出は完全に止まった。テキサスを出港した最後のLNGタンカーは2月6日に中共の港に着いたが、それが最後の便になった。

 2月10日には中共が、米国のLNGに15%のタリフをかけた。それは今は49%である。もはや中国市場では、これを買い取る意味がない。

 だから中国側の買い手は、タンカーが太平洋にある段階で、その積み荷を外国のブローカーに転売してしまったはず。それでLNGタンカーは、行先を変えたのだろう。

 中共は2024には米国から24億ドル分のLNGを輸入した。
 中共は世界最大のLNG輸入国である。米国は世界第四位のLNG輸出国である。


世界の終末に読む軍事学


(管理人より)

 兵頭本最新刊『世界の終末に読む軍事学─パズルのピースは埋めておけ』のP236に掲載されている写真は、私が撮影したものなんですよ。
 兵頭二十八先生は、普通の会社員がマジで引くくらい貧乏だったので(いまも?)、本当に売れてほしいです。私は当然、買いました。