21日夜更け~22日未明(現地)の空爆実行の前日、トランプは奇矯なSNS投稿をした。自分がノーベル平和賞を貰えたかもしれぬ海外案件を五、六個羅列したのだ。読者は皆、《急に何を言い出すんだ、こいつ?》と怪訝に感じた。そのときトランプは、天命を知った直後だった。もはや、己れがノーベル平和賞にはまったく縁がなくなると彼は理解できたので、長嘆したのだ。おそらく、統幕参謀議長に、翌日の空爆のGOサインを、最終的に与えた直後の書き込みなのであろう。
Fordow には、民間衛星から見てもわかる「トンネル出入り口」が何ヵ所かあった。3万ポンドの最大サイズのバンカーバスター弾(別名MOP)は、その出入口とは無関係な稜線上にも狙い定めて落とされている。実験だ。いちばん深いところに効くのかどうか、敢えて試した。20発しかない爆弾のうち14発(7機が2発づつ)を使った。
貫入孔から黒煙が上がっているのではないかと思えるような写真もあるが、そうでない着弾痕もある。
「MOP改」の開発にこれから巨費が投じられるだろう。議会がそれに協賛しないことはもうあり得ない。
地下施設の完全な破壊は難しいと最初からわかっていた。トンネル入り口だけの破壊で妥協するとするなら、イスラエル軍の「ストライクイーグル」から投弾できる2トン級のバンカーバスター(ヒズボラの地下60フィートの防空壕を破壊して狙った司令官を爆殺した実績あり)だって、同じことであった。しかしトランプは、本尊の濃縮プラントを粉砕はできないと理解しつつも、それでもB-2を差し向けた。トランプは、介入がいっぺん限りの辻斬り式では終わってくれないことを理解している。それでも直接軍事力行使に踏み切らされた。集団的な圧力が、トランプ個人の選好をオーバーライドしたのだ。
覚えておく価値があるのは、空爆の直前に、米本土からグァムへB-2が飛んだと派手に報じられていること。これはイラン首脳を油断させるための韜晦ニュースだった。その時点で、秒刻みの《空爆作戦進行表》は、順調に巻き取られつつあった。
次。
Boyko Nikolov 記者による2025-6-21記事「53 F-16 jets, 22 tankers bolster US presence at Prince Sultan」。
米空軍は、サウジの「プリンス・スルタン」空軍基地に、53機のF-16と、22機の「KC-135」タンカーを進駐させた。6月21日までに。
※もしイランがGCC、なかんづくサウジアラビアの石油施設を攻撃するならば、そのお返しはサウジ国内の基地から実行するぞ、というメッセージだ。現況ではサウジは、自国領内の基地を米軍の対イラン攻撃に使わせたくないと思っている。
プリンスサルタン基地はアラビア半島の中央沙漠にあり、イランの西部国境までの距離は700浬というところ。1991湾岸戦争いらい、中東での米軍作戦に貢献している。
近年、この基地には、硬化シェルターが増強されている。米軍関係者は2500人はそこにいるはず。
KC-135が伴うことで、F-16の作戦距離は数百マイルも延ばせる。
米軍はカタールには「Udeid」空軍基地を、またヨルダンには「Muwaffaq Salti」空軍基地を、使える拠点として確保している。後者にはF-15とA-10を置いている。
※こんどのB-2奇襲の直前、「C-5」がサウジに飛んだ、と、やはり派手に報道されている。これも韜晦戦術だったと思う。イランに近いサウジの基地から米軍の攻撃――たとえばF-117を使う――が発起されるという、戦術的には合理的な憶測に、信憑性を加えてやろうとしたのだろう。
※B-52が常駐しているディエゴガルシア基地も、まったく静穏であった。5月署名の条約によって、この島の主権は英国からモーリシャスに返されることが決まっていて、慣行として、その批准と発効の前から、この基地から爆撃機が作戦する場合等の通知義務も生じていた。モーリシャス政府は中共のカネを受け取っているので、その通知はすぐに中共経由でイランへ筒抜けとなるはずだった。ところが、今回のB-2作戦で、このディエゴガルシアがとっくに米国の中東経営にとって不可欠ではないポジションに価値沈降していた実情も、天下に示されたといえる。このたび、そこにB-2が立ち寄らなかつたことが、イランを油断させたのは間違いない。だが爾後、その韜晦は無意味だろう。