「新々・読書余論」――『罠の科学』(1909年刊、Elmer Harry Kreps著)

 オンラインで読めるようになっている本邦未訳の珍古書を、摘録をまじえて恣意的にご紹介する「ちんこハンター」第二弾です。この要約については、AIへは委託していません。というか、石器時代人の愚生には、その操作の仕方がどうもよく分からない。とにかく手続きが面倒すぎるんだよ! 容量制限とかありやがって、ゆるせねえわ。テキストを公開してくださっている「プロジェクト・グーテンベルグ」さまには、御礼を申し上げます。

 原題は、『SCIENCE OF TRAPPING ―― DESCRIBES THE FUR BEARING ANIMALS, THEIR NATURE, HABITS AND DISTRIBUTION, WITH PRACTICAL METHODS FOR THEIR CAPTURE』。
 このうちの、特に第12章の「The Bear」の内容に注目します。さっさと日本の熊どもを根絶するためにね!

 原著者はみずから、北米の罠猟師。大小あらゆる野生動物を捕獲し、その毛皮を売って商売している。インディアンの罠猟に随行して勉強も重ねて来た。だから、内容は、信用できる。

 かつて、鋼鉄製のトラップ――とらばさみのようなものや、弾撥ピンチのねずみとりのような構造――が適価で市販されていなかった頃は、「deadfall」(圧殺罠)や「snare」(括り罠)が多用された。しかし今日では、スチール・トラップが全盛だ。安く手に入り、高機能なので。

 スチール・トラップの主流形態は「jaw trap」(トラ挟み)である。餌ありでも餌なしでも機能し、水中にもそのまま仕掛けられる(ビーバー用)。大型獣にも、小型獣にも、対応する製品がある。

 オーストラリアとアフリカには、クマはいない。

 チベットにもボルネオにも熊はいる。
 ボルネオの最も小型のクマは草食性である。攻撃性も低い。

 北極ぐまは冬眠せず、まったく草食しない。

 アメリカ黒熊はメイティング・シーズンが6月から8月。仔熊は通常2頭が翌年の1月から3月に産まれる。Den=巣穴は大概、地表の穴や地物を利用しているが、木の洞[うろ]を使っていることもあり。

 「熊道」は、他の獣道とは容易に区別がつく。沿道の樹木にマークが認められるから。
 それは、一定のインターバルで認められる。
 クマは後ろ脚で立ち、樹木の外皮をぐるりと1周、齧り取る。地上から5フィートぐらいのところだ。
 このマークは、メイティング・シーズン中に付けられる、と原著者は聴かされた。

 熊道を熊が頻繁に通るのは、春から夏にかけてである。

 熊の大好物は魚である。

 熊は例年、11月15日に体重と栄養のピークに達する。
 北方の熊は6月15日までは、毛の生え変わりのための脱毛が始まらない。だから毛皮猟師にとっては、春に仕留めるのが有利なわけだが、罠に容易にかかってくれるのは、秋である。

 黒熊用のトラバサミは、商品番号が Nos. 5 、 15 、 50 、そして 150 Newhouse である。
 より大型のクマ用鉄罠としては、 No. 6 が使われることもあるが、グリズリー用は、 No. 5 でいい。

 「NEWHOUSE NO. 5 TRAP」は、顎を開いたときの大きさが11と「3/4」インチ。重さ19ポンドだ。チェーン付属。

 熊用の罠は、陣地の築城が必要である。
 古い丸太を使って、一方が開放されているV形の「板囲い」を構築し、その奥へ、誘いこむのだ。
 奥行は、8フィート。
 間口は2~3フィート幅とせよ。

 高さは3フィート。特に奥の丸木組の高さは3フィートにする。
 入口付近はももうすこし低くても可い。

 ベイト(誘引餌。生き餌のことあり)は、最も奥に縛り付ける。そして虎挟罠は、入口の付近に仕掛ける。

 良く撓[しな]る、長さ8インチの小枝。これでトラップのPan(踏板スイッチ)を下から支持させておく。これは、野鼠のような小動物が踏んでも作動しないようにするため。枝の一端は地面にしっかりと突き刺す。他端は曲げて、Panを下から持ち上げるように、ひっかけておく。

 セオリーでは、25ポンドの重さがかかっても、作動しないようにするべきであるという。しかし原著者の観察したところでは、多くの罠猟師たちは、もっと軽い踏み圧でも作動するようにしている。

 あたりまえの話だが、Panの設定作業をするときは、常に、罠の顎の裏側から手を届かせるようにする。

 しかけた罠の、ほとんどの部分は、枝や落ち葉で覆い隠す。
 Panの表面には、苔をかぶせておくと、熊は安心してそこを踏んでくれるという。
 罠猟師によっては、囲いの内側の地面に、尖った短い枝(長さ6~8インチ)を植立し、熊の脚がおのずから、そこを避けてPanの上に来るように「小径」を整備する。

 罠は、鎖によって、立ち木や clog (繋ぐ重し。重い材木や岩でも可い)に結びつけておく。

 熊は学習する。一回逃したら、同じ場所に罠を仕掛けても無駄である。
 熊道を探せ。ベストなロケーションは、「水溜まり」に通じている区間である。

 そこは、他の人間が通りかかるような場所であってはならぬことは、申すまでもないこと。
 ある猟師は、「丸木囲い」は用いず、ベイトを、森林中の高さ6フィートの空中に吊るして、その真下に、虎挟みを置く。

 「deadfall」(圧殺罠)や「snare」(括り罠)で熊を取ることも可能である。しかし連日頻繁に見回りをするロケーションでない限り、得策ではない。発見したときに毛皮がひどく傷んでしまっている確率が高い。

 ベイトには、魚が最善である。次善なのは、ポーク(塩まぶしでもよいし、生肉でもよい)。マトン、ビーフも可なり。
 同類の熊肉も、ベイトになることは覚えておけ。
 蜂蜜にも、かなりの誘引力がある。

 匂いで誘うなら、「フィッシュ・オイル」、セリ科植物のアニスの油など。
 ある種の「raccoon」の匂いもクマを安心させるという。これは、北米の各地では、現地種の「raccoon」とクマ類とが、利益共同体のような関係を作っているからだという。

 注意。ここで言っている「ラクーン」は「badger」(アナグマ)のことではない。

 《完》