書店で「此一冊」と出遭える時代は去りました

 拙著『あたらしい武士道』を地方の書店で探すのは時間と労力のムダです。
 わたくし自身、函館市内では一冊も見たことがないほどです。横浜、札幌といった政令指定都市の最大級の書店でも初回入庫は3冊くらいだそうです。もう残ってないでしょう。
 よほどのメガヒットかロングセラーとならぬ限り、大型書店への二度目の入庫もありません。それは来年のいつになるやら分かりません。
 書店であらためて新刊を註文しますと、1〜2週間は待たされるでしょう。「取継店」が間に入っているのと、版元の倉庫はたいてい田舎にありますので、手間がかかるわけです。
 典型的な「多品種・少量」商品を、たった一度だけ、たった数冊づつという名目的な分量でも、全国の書店に流通させている現今のシステムがまだ成り立っているのが既に奇跡に近く思えます。
 わたくしが書いておりますような数千部しか刷らぬ書籍は、もう「書店を覗いて偶然見つけて立ち読みして面白かったので買う」などという時代ではないです。
 書籍はネットで注文して買うしかない時代に、わたくしたちが知らない間に、突入しました。
 現在、この方式で注文すれば、数日で宅配されてきます(あるいはセブンイレブンで受け取れます)。電車賃や「時間×体力」などの「サーチ・コスト」を計算に入れると断然こっちが「お得」です。いきおい消費者も版元も、このシステムを好む。するとますます取継店は地方書店からの返本率をゼロにしなければ経営が危うくなりますから、地方への配本数は極限まで絞ることとなります。
 もう「再販価格維持制度」も崩壊寸前と見て良いのではありますまいか。
 なお、みなさんには、最寄りの公共図書館で「購入リクエスト」のカードをお書きになり、数ヵ月待って、只で読むという手もあります。(ちなみにわたしは手持ちの著者分をすべて八重山列島の公共図書館に寄贈しました。この日本には、バスの「巡回図書館」しか無い島もあるんです。みなさんはまだ恵まれている方です。)
 どうしても書店で現物を確かめたい場合には、まずインターネットで書名を入力してググる。それで「昨日の在庫は××冊です」とすぐに出てくるような書店に行けば大丈夫です。東京都内ならば「ジュンク堂・池袋店」がgoogleにヒットしてきますね。ここは確か立ち読みどころか「座り読み」もさせてくれる太っ腹書店でしたよね。
「良い店はますます良くなり、悪い店はますます悪くなる」──誰の名言か忘れましたが、経験的に「真」ですね。
 ところで東京では『新潮45』(05-1月号)は書店に出てますか?