簡単だが明快な才能テストたり得る第一関門

 北鮮が核爆弾を既に持っているとしたら、その爆発実験をしないでいることのメリットはゼロです。
 商用原子炉級のプルトニウムでも、大量に集めて砲身装置方式で臨界させれば1キロトン未満の非効率爆発は起こせるのです。それを地下でやるだけでも、金正日は「ウリナラは核爆弾を持ったニダ」と世界に宣伝ができますね。
 しかし北鮮は核爆発実験をしていません。まったく口だけですから、米国をはじめ、世界からはもう公然に馬鹿にされています。
 事実は、北鮮は核爆弾など一発も持っていないのです。この結論でわたくしと一致するのは国内を見渡したところ神浦さんだけでしょうか?
 だとしたらほんとうに困ったことです。米国要路は、北鮮が原爆をもっていないことはリアルなインフォメーションとして先刻承知です(もちろん公的アナウンスは国益を考えて別なニュアンスにしています)。米国人だけではない、世界の既製の核保有国の要路は皆そうです。
 そんな彼らが、日本人の自称「学識経験者」たちや政治家が揃いも揃って北鮮の核保有を信じているらしい様子を観たら、彼らはどう思うでしょうか。きっと胸の内で「日本にはお子ちゃましかいないのかよ」と覚ることになりましょう。それで日本の将来の安全保障は増すでしょうか? リアリストなら、「その程度の想像力すら働かない連中が将来、米国にとって核のバランス・オブ・パワーの老練な協働プレイヤーになることはなさそうだ」と結論してしまうでしょう。
 核抑止戦略は優れて心理戦です。誰も他国の指導者の心の中は読めませんが、それを敢えて読んでいかないと、核抑止など成り立たないのです。
 北鮮が核兵器をもっているかいないかという、こんな初歩的な「心理戦の裏」も見切れない人には、日本の核抑止のプランニングを公言することはどうかやめて欲しいものです。
 米国の情報機関は、日本の公人の核武装関連の発言にはすべて目を通しています。それなのに、日本の著名な言論人が、自他の核武装についてあまりに未熟な発言ばかり繰り返して発信していると、米国指導者層の胸の中で占める日本の同盟者としての信用度は、どんどん低下していく一方なのですから。
 拙著『ニッポン核武装再論』では、「北鮮の核」はもちろん完全スルーしてあります。すべて「対支」の核武装論です。ガキを卒業したい人は、早くこの本を図書館でお読みなさい。
 シナは米国に届く核ミサイルをどうして20発より増やそうとはしないのでしょうか? ワシントンと北京との間には、この点について「黙契」があるはずです。「米国がシナの進路を邪魔しないうちは、自発的に20発にとどめておく、だからシナは米国の脅威じゃないよ」と、シナの指導者は米国の指導者に対して過去にこっそりとメッセージを伝えたはずです。
 シナにとっては、このポジションは安全・安価・有利なのです。20発を30発、40発と増やすことは、シナの財政にとって、何でもありません。しかし、ターゲットにされる米国としては「てんやわんや」の対策が必要になってしまうんです。(日本に押し売り中のMDプロジェクトはその事態に備える長期研究の一部です。)米国政府にとって、それは悪夢なんです。
 米国には一つのオプションがあるでしょう。日本をシナに対して核武装させることです。しかし、日本人は全般にガッツがなく、ガッツがある日本人は、しばしば愚か者なのです。あのビッグマウスの隣国・北鮮が核をもっているかいないかの判断すら、誰も正しくできない。入門者級の二者択一テストで0点という成績ではトホホ……でしょう。
 さあ、どうしたら良いでしょうか?