オプション最大化(Maximization)戦略とは何か

 チャンネル桜の討論会でも言及したこの概念についてご説明しましょう。これが分かりませんとシナの脅威の本質が分かりませんし、それに対抗するための日本の次期首相は誰でなくてはならないか──も、分からぬでしょうから。
 シナは1980年代からアメリカ東海岸に届くICBMを20発しかもっていません。この20発を30発、40発……100発……500発とすることは、かれこれ十数年も時間があるのですから、いくらでも可能だったでしょう。が、それを敢えてしていないんです。
 この意味は、「ICBMをもっと増やすか増やさないか」のオプションの自由を最大に確保しておくことで、米国政府との交渉力を最大にしようというのです。
 アメリカにとって「分かり易い敵」になったら、シナのような経済弱国は、おしまいなんですよ。
 常に敵を翻弄し続けることができなくてはならない。これこそが、先般コキントが『孫子』をブッシュに進呈した意味です。あなたがたの単細胞人士に分かり易いような敵対行動はシナ人はしませんよ、と念を押すことにした。
 そして米国NSAはこの孫子進呈計画も事前に察知していて「バカヤロー、こっちの方が上手だわい」と、スピーチ会場に「叫び屋」を潜ませてやったんでしょう。けっきょくコキントさんが翻弄されてしまったのです。
 オプション最大化戦略はICBMだけでなく、あらゆる分野で実施されます。たとえばシナは90年代初めにミサイル原潜と攻撃型原潜を1隻づつ国産した。そのあと、姉妹艦を増やさない。これも「オプション最大化戦略」です。対抗する米海軍としては、シナが原潜を量産するのかしないのかで、予算から編制から人事配置から、ぜんぶ計画変更しなければならない。シナは、自分の進み得るコースを無限大に確保することで、敵の要路の心理を翻弄してやれるわけです。
 その翻弄を通じて、交渉ができる。こちらが何かをしないことと引き換えに、敵に何かをしてもらえるでしょう。
 過去のソ連のように「物質」対「物質」のベタなレースに参加してしまえば、米国に勝てる国はありません。米国を物質で圧倒しようとするのではなく、むしろ今は手元にない非物質にモノを言わせていけ、という手なんです。
 これを市場でたとえるなら、じぶんの実際には持っていない株式で勝負する相場師のようなもの。未来の可能性で敵を脅かす。現に大金持ちでなくとも、よいわけです。
 ただし軍事競争上のオプション最大化戦略では、大事なことがある。最初に1つは「リアルの物質」を持たなければ、交渉の土台にすらならぬということです。
 げんざいシナは空母を1隻も持っていません。この「ゼロ」の状態からでは「空母艦隊をたくさんつくるぞ」という脅しはほとんどリアリティを生じません。
 「口だけの脅し」では逆効果にすらなってしまいます。
 「今すでに1つある。これを2つ、3つ……10倍に増やす」という脅しならば、相手も頭から否定できなくなるのです。そこから交渉を強制できるのです。米国のINFにソ連が屈服してSS-20が全廃(パーシングIIと相討ち)されたのは、その好い見本です。
 まあ、日本の臆病者たちが「核武装のポテンシャルだけで核抑止になる」なんて言っているのをシナ人が聞いたら、大笑いでしょう。
 また、北朝鮮が原爆を1発ももっていないことも、ここから容易に断定されなくてはなりません。「ゼロを1にします」という脅しでは、国際関係では、無効なのです。子供の虚勢と変わりない。北鮮の支配層もそれはよく分かっています。分かっていて1発の実験もできないでいるのは、現実に1発も手元にはないからでしょう。こんなのにひっかかるような哀れな知識人が多いのも日本だけでしょう。
 たった1発、パキスタンのように非公開で実験をしてみせさえすれば、北鮮の脅迫力は数百倍になるんです。なのに彼らがそれをしないでいることの合理的説明は、「その1発がそもそも無いから」しかないでしょう。何年か前に硝酸アンモンが大爆発したのは、それを地下に集めて「ナンチャッテ核実験」を偽装したかったのではありますまいか。
 さて、そこで、日本の次の首相です。
 これは「現に中堅の地位を占めている政治家であり、しかもシナから大いに嫌われている人物」でなくてはなりません。
 彼こそが、シナに対抗して「オプション最大化」の政策を実行できるでしょう。
 シナから嫌われている若手、ではいけない。彼はこんご、シナから脅されたり、籠絡されてしまう可能性があります。
 しかし、既にシナから憎まれまくっているのに、それでもしっかりと中堅の地位を占められているという政治家ならば、今後、シナから脅される可能性も最も低いわけです。彼は、もしシナからイヤガラセをされた場合、将来が長いので、シナに報復することができます。
 これを、シナは重視しないわけにはいきません。頭の良い中共指導者は、けっきょく、軽易なイヤガラセ以上のことは、彼に対してはしません。その結果、日本はものすごく安全になります。
 ヤクザは、武力行為の前には常に、敵組織からの報復と、その後の報復合戦の連鎖・エスカレーションについて瞬時に想像をめぐせます。組織の力は「後から報復できる」ことです。この連鎖の終末についてのリアルな判断が瞬時につかないようなチンピラでは、とうていヤクザ組織の長になどなれません。中共の政治指導者層も全く同じです。彼らは匪賊の血統です。シナの歴代王朝の創始者は、いずれもヤクザの親分でした。ヤクザに好かれているような政治家が日本の首相になったらどうなるか。これは考えるまでもないですね。
 シナから嫌われていても、年寄りの政治家ではダメです。なぜなら、彼には報復の時間がもうありません。それはシナというヤクザ組織から見れば弱点なんです。小泉氏は歳をとりすぎ、現役の終わりが見えてきてしまったので、ちかごろシナから強く揺さぶられているわけです。
 シナがオプション最大化戦略で近隣世界に対しているのに、日本国が自分で自分のオプションを規制するのは、自殺行為に他なりません。
 マック憲法、非核三原則、宇宙開発に関する国会決議、ICBMを日本が作ればアメリカが怒ると触れ回っている評論家……凡て、ヤクザのカモがする思考ループです。