遊就館で英語のレッスン1

“The U.S. economy made a complete recovery once the Americans entered the war.”
 ……これが岡崎久彦先生が問題にされていたパネルじゃないかと思いました。9月8日時点ではそのまんまでしたね。報道ではとっくに交換措置をとっているように印象されたんですけどもね。(館内は撮影禁止でしたので、メモに基づいています。よって不正確のことあり。)
 サラッと眺めた限りですが、英文と日本文を微妙に違えてあり、その違え方は、「シナ人が悪いのだ」という説明に関しては、兵頭は好感をもちました。つまり、ちゃんと英語で宣伝しようとしているのです。
 たとえばシナ大陸における「過激な反日行動」を“anti-Japanese terrorism”と英訳しているのは、行き届いた配慮ではないでしょうか。和文もよく考えてますよ。
 また、第二次山東出兵の済南事件のところ、「革命軍の略奪暴行が」とあるところは“when communist troops attacked”と訳してある。なかなか気が利いてますよ。
 ところがこのパネルを考えた人は語学の能力は抜群で気も利くのに、どっか毛が三本足りないらしく、反米的なスタンスの日本文の説明の部分を、大いに力瘤を入れて、ご丁寧に英訳しちゃってくれているわけです。
 なにしろ幕末から一貫して反米スタンスの説明ですよ。「ここは水戸の藩校か?」と思いますよ。それですべてがブチ壊しだ。
 そんなもん英文で読まされたら、来訪したアメリカ人が不愉快になって、本当はシナが悪かったんだと説明した部分だって信じたくなくなるでしょ? そんなことも分らんのか。まるで「宣伝」センスが無いよ。いったい誰に向かって英文で宣伝しとるのかい? そんな部分は英訳しなければ良いでしょ? 日本語で書いとくのは主義の自由で勝手ですけどね。じぶんから墓穴は掘るなよと。
 このような墓穴を掘っている原因は、明白なんです。「真珠湾攻撃は悪くなかった」という反駁を、わざわざ来館したアメリカ人に対して試みたいからなんですよ。イタすぎるぜよ、もう。
 たとえば、あるパネルの年表は、1941年7月26日の日米通商航海条約の廃棄からスタートしている。しかしね、その措置は、海南島から南部仏印に進駐する日本軍の大軍が出航したのが確認されたから、とられたわけでしょ。しかも米国国務省は日本の駐米大使に事前に警告を与えていました。進駐すれば制裁するぞ、ってね。日本政府はそれを無視して堂々と進駐を強行したので、警告を与えていた米国としては、それで制裁をしなかったらますます舐められるだけじゃない。
 で、このクロニクルをオミットした上、それを英文に訳して展示したら、逆効果しか発生しないってことが、わからんのですな。ずいぶん頭悪いと思いますよ。
 しかも“Economics constraints improved by the U.S., Great Britain and the Netherlands”って何だい? (館内は撮影禁止でしたので、メモに基づいています。よって不正確のことあり。)「経済制裁」の英訳は違うと思うんですがね。「経済制裁」は国際連盟も公認していた平和的な外交手段でしたよ。その連盟規約づくりには、日本は常任理事国として関与してるんですぜ。
 日本人向けの展示とアメリカ人向けの展示をハッキリ分けることをお奨めしますよ。コースも分けてね。アメリカ人には「蝋人形」ジオラマだけみせてりゃいいんです。それがサービス精神ってもんでしょう。
 あと、リニューアルされた遊就館の中を観て歩くのには1時間では足らず、90分はかかるということを確認しました。