これから流行るナンキン映画その他の背景

 シナのASAT実験の意味は、シナの指導部が、アメリカのマスコミ世論の上で好感を獲得しようとする努力を、かなぐり捨てたということです。
 これは、シナ政府が、対米宣伝工作の不成功を、公認したということでしょう。
 アメリカ政府は、シナの宣伝努力にもかかわらず、シナは敵だとハッキリ意識をしている。それが揺るぎそうにない。それがハッキリわかったので、北京はASAT実験を許可したのです。
 いうまでもなくハイテク兵器や宇宙実験は、それが行なわれるタイミングが政治外交的イベントと連動していなければなりません。もちろん実験内容も、実験日時も、公表手順も、批難にこたえる反論も、すべて北京のトップによる事前チェックが入っています。
 いいかげん聞き飽きた、しらじらしい工作ですが、〈これも軍部の独走で、中共は何も知らなかったのだ〉という話を日本のマスコミに最初に流したのは誰か、覚えている人は、忘れないようにすると良いでしょう。
 シナは、イランを助ける反イスラエル運動として、2007年中は米国内で南京映画を公開する予定です。さすがのシナ人も米国内では直接に反イスラエル運動はできませんから、日本を叩くフリをする中で、米国政府がイスラエルを支援しにくくなるような気運を盛り上げたいのでしょう。
 兵頭の予測ですが、映像は、「反空爆」のイメージが強調されると思いますよ。シナが怖れているのは米軍の空からの攻撃ですから。そして旧日本兵と今のイラクの米兵を重ねる印象操作がされるでしょう。
 しかしアメリカ政府はとっくにシナの意図はお見通しなので、おそらくクリント・イーストウッド氏の硫黄島映画は、アカデミー賞のいくつかを受賞するでしょう。それは米国政府からの、北京に対するメッセージです。「われわれは日本を支持し、シナの味方などしない」と。
 ちなみに兵頭は未だ硫黄島の映画を観ていませんし今後も観る気はないです。インターネットの予告編だけで、興味は失せました。
 久間氏問題の背景はよく分りません。
 米国海兵隊は、海岸から数十kmしか作戦できない、中途半端な遠征軍になってしまいました。
 海兵隊じしんは、〈百数十kmも陸上を侵攻できるぞ〉と、盛んに訴えているんですが、それが信じられていたら、北鮮は、あんな海に近いところに核実験場は設けませんよね。
 海兵隊は、シナ相手には、どうにも張り子の虎なのです。シナ軍は強くはないが、それを言うなら、イラクの民兵だって強くはないですよね。したがって、海兵隊は政治的にはペーパータイガー。
 となれば、沖縄で優遇してやる価値などない。有事の際は嘉手納を使わせれば済むので、飛行場も進呈しなくてよい。久間氏がそう主張しているのかどうかは、承知しません。
 シナの内陸は懐の深さが5000kmもありますから、この距離を克服できないと、米国はシナの侵略的意図を有効に掣肘できません。
 数千kmの内陸躍進ができる、そして圧倒的多数の敵歩兵を相手にもできる――。そんな、これまでに存在しなかったような、新軍隊が必要なんです。これが「米軍再編」の目標です。シナ・シフトを進めてるんです。
 海兵隊は、総人数も少なすぎるので、どうにもシナ軍相手の「睨み」は効きません。ですから、今後リストラされる運命です。
 これからの米軍の主役は、空挺化された陸軍部隊です。上陸などせずにいっきょに内陸に大軍を送り込める能力。それだけがシナを抑止できる。すべての軍種が、空挺化された陸軍のための補助部隊となるでしょう。
 座間に注目しましょう。北京も注目しています。だからナンキン映画なのです。
 ところで、チャンネル桜の水島さんが、カウンター・ナンキン映画を英語版で作るという話は、わたしは知りませんでしたが、朗報です。
 が、支那事変に関しては、渡部昇一氏はじめ、ほとんどの保守系大御所は「モスクワのコミンテルンにしてやられた」と説明することで、昭和12年の日本側のエクスキューズが完成すると思っているんじゃないでしょうか。
 『別冊正論 05』号をみると渡部氏は、支那事変は7.7盧溝橋ではなく8.13上海で始まったとする別宮氏説に寄ってきたようです。が、やはり宿年のご確信である〈コミンテルンがすべて悪いのだ〉史観を蝉脱することはできていない。おそらくこれからも、まあ少なくもこれから一、二年では、これは変えられないのではないか。
 蒋介石じしんが、ソ連をモデルにして、ソ連共産党のシナ版として、国民党をつくっていたのです。さもなきゃ、革命軍の中に「政治部」があったわけがないでしょう。
 中共の幹部だった郭沫若が回想記中で鋭く指摘しています。上海戦線の崩壊後に蒋介石は〈日本軍よ、これ以上攻撃しないでくれ。さもないとわたしはソ連と同盟してしまうぞ〉と二度にわたってメッセージを発したのだと。
 このにじりよりにはリアリティがあったのです。それほど国民党とソ共は気分が親近だった。
 国民党と中共は、どちらもソ連をモデルにしたシナ型独裁パーティです。蒋介石軍の格好がドイツ国防軍とクリソツなのは、租界を武力回収するための優良装備と参謀をセットでシナに売り込めたのがドイツだけだったからで、国民党はナチスの真似はしていません。
 昭和20年以前に中共よりも国民党が勢力があったのは、ソビエトを同じようにモデルと擬していても、「小ボスを糾合する大ボス」としての指導力が、モスクワになかば洗脳されていた青書生たちより、外国の洗脳をうけずに成人した蒋介石の方に断然にあったからです。弱小の中共はその蒋介石の人望に寄生して生き延びました。蒋介石個人の強烈な指導意思と無関係に、昭和12年の事変史は書き得ません。
 「コミンテルンが悪役だ」で済ませようとすることは、「蒋介石は木偶の坊であり、イニシアチブは何もなく、よって日支戦争や東京裁判に関するいささかの罪もなかった」と言うものでしょう。
 これでは、ホワイト・プロパガンダ(真実の宣伝)にはならず、したがって、対米宣伝として、何も解決されないでしょう。シナがその反近代的な性癖から、かれらの国益に沿うように広めている、日本のネガティヴなイメージは拭えないでしょう。日本は東京裁判が断定した不当な悪評から根本的に救済され得ない。南京では、1万人以上の裁判なしの捕虜処刑と、逃亡兵の大群に巻き込まれた民間人の100人単位のコラテラルダメージが生じたことは、確証がなくとも推定されるのです。
 2003年のアメリカ人はサダム・フセインに怒っており、それがイラク住民に与えたコラテラルダメージを正当化しています。昭和12年の日本兵は蒋介石に怒っていました。それには正当な、近代的な理由があったのです。その理由は「モスクワの工作員にひっかけられた」などという愚かしいものではなく、「蒋介石がドイツ人顧問の助言をうけいれ、悪意をもって、確信的に、上海の日本人を皆殺しにする戦争を8月に発起した」からなのです。
 この原因は、裁判なしの便衣兵処刑を正当化しませんが、ベトナムとイラクを経験済みの今日のアメリカ人の同情・共感をひきよせます。そしてコラテラルダメージについては問題にされなくなるでしょう。
 戦後の中共が、戦後のシナにふさわしい独裁王朝であるように、蒋介石政権も、とうじのシナにふさわしい独裁王朝だったのです。そして、まもなく中共は崩壊するだろうと思われますけれども、そのあとから登場するであろう脱共産党系の新王朝も、かつての清朝、かつての国民党、かつての中共とおなじように、シナ人に最もふさわしい反近代的な独裁王朝となり、今日とまったく同様に、「東京裁判史観」を、対日宣伝戦・対米宣伝戦の武器にしようとするはずです。
 シナ幻想を、米人の頭から振り落とす、日本発の宣伝工作が、必要なのです。
 「いまの中共も戦前の蒋介石もまったく同類で、シナ政権は過去も現在も今後も約束は守らず、したがってシナ大陸に自由主義と民主主義を両立させることはできず、本来的に西側先進社会の敵でしかあり得ないのだ」という真相を、理解力の乏しいアメリカ人によく分らせなければ、日本の安全はありません。
 日本国内ではマルクシズムを撲滅すればそこにはオルタナティブがちゃんと用意されていたのです。それゆえ、渡部氏ら70年代保守の孤塁たちはひたすらに共産主義者の悪事をあばきたてたらよかった。が、シナの地理では「反近代的独裁」に代わるものは、何一つありません。蒋介石と周恩来・毛沢東は、中身がいっしょなんです。近未来のシナで、看板としての共産主義が消えても、内実は何一つ変わりません。
 というわけで、わたしは水島さんに期待をかけないわけではないのだが、それで安心をしません。
 個人的に「マンガ家」さんを募集したいと思います。今年の夏までに、昭和12年のシナ大陸での出来事を170ページもしくはそれ未満の長さの劇画にしたい。
 どこから出すかはまだ考えていません。
 絵が下手でもよい。テッポウを握った人の右手のイメージを知らなくともよい。とにかく仕事が高速な人を求む。わたしの時間資源は有限なので、遅筆の人と組んで仕事をする気はもうありません。ただしアニメ絵は宗教的米国人への訴求力がゼロだと確信するので、門前払いします。
 ちなみに小松直之氏は今年は別件の仕事があります。
 この劇画は「ヨコ組み・左開き」でつくろうと思います。フキダシの中を英文になおしやすくするためです。
 警告。この個人プロジェクトは、商業ベースにのらない蓋然性があります。わたしが出版社にもちこむことになりますが、どこからも相手にされなかったら、作品は、インターネット上に無料で掲載します。その場合、作画家さんが得る金銭報酬は、ゼロ。勝手乍ら、この条件を、予め、ご承知置きくだされ度い。
 運良く商業ベースにのった場合は、稿料も印税も、作画家さんと兵頭とで、折半いたします。
 管理人さん経由で、サンプルの絵を見せてください。折り返し連絡し、1、2ヶ月の内に、東京で面接しましょう。