『荒野の呼びりん』――遅まきながらタングステンの心臓の持ち主ハケーン

 『東京裁判の謎を解く』の児玉誉士夫の項目の中で、彼の獄中日記の「昭和21年3月10日」で指弾されているところの、元海軍報道班員でありながら、戦後に戦争中の日本を糞味噌にたたいた本を出した小説家の「H・N」とは、「丹羽文雄」であると分かりました。
 板垣直子著『現代日本の戦争文学』(S18-5pub.)をどこかの図書館で閲読したときのメモを見ていて、さとりました。
 板垣によれば、丹羽は、日本で初めて海戦を実見して小説にした、プロ作家の第一号であるそうです。1942年9月1日に、「ツラギ海峡、壮烈な夜襲戦」という新聞記事を寄稿。
 さらに、単行本の『海戦』まで出していたのです。船から魚雷を撃つと、「シユッ・パチャン」と聞こえる……などという、生々しいリポートを、してくれていたらしい。