『フロムG』から『とらばーや』を経て『暮らしのトンネル』へ!

並木書房さんのところで、拙著『予言・日支宗教戦争』が予約可能状態になっているらしい。まだ見本すら受け取っていない状態だから、いったいどんな仕上がりになったのか、わたしすら知らない。しかしこの兵頭を信頼してこれまで拙著を購読して来て下すった皆々様方は、是非この際、3月5日の発売日を待たずに、予約を入れちゃって戴き度い。
 この本は、「田母神論文ショック」を受けて昨年12月に書いた。
 何がショックだったかと言って、この論文を書いた人、審査した人、授賞した人、擁護している人、悉くが、《大国間での公式な約束を戦前の日本国政府が大国相手に公然と破ったこと》を不問に付し、それで日本の歴史上の立場が浄化されると信じているらしいことだ。支離滅裂だ。
 たとえば論文「日本は侵略国家であったのか」にはこうある。
 「……、我が国は日清戦争、日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。」
 ここで田母神氏は、侵略か侵略でないかのメルクマールは、国際法上合法だったかどうかだとまず主張している。
 日本は1929年以降は、みずから批准したパリ不戦条約を国際法と看做さねばならないだろう。もちろん、米国にとってもこの条約は国際法であった。米国は、大国相手に、この国際法を破っていない。大国同士の約束を守っているのだ。1928年以前の侵略は、国際法違反ではない。
 「もし日本が侵略国家であったというのならば、当時の列強といわれる国で侵略国家でなかった国はどこかと問いたい。よその国がやったから日本もやっていいということにはならないが、日本だけが侵略国家だといわれる筋合いもない。」という田母神論文の言い草は、日本や米国が、1928年のパリ不戦条約や、その後の九ヶ国条約の当事者であることを、忘れたものだとしか思えない。
 これが、次期統幕議長(旧軍ならば参謀総長)と目されていた人物の署名論稿なのだ。没倫理だ。ショック無しに読めようか?
 真珠湾攻撃は、1941年のできごとである。1941年は、1929年より前ではないはずだ。
 日本以外の大国はそれが「自衛戦争」だとは認めてはくれなかった真珠湾攻撃は、国際法違反であった。こちらから先に宣戦布告することじたい、戦前の精神では「侵略」に他ならなかったのである。
 田母神氏は、論文の前半では国際法を論拠に日本は悪くなかったと主張し、論文の後半では国際法など関係ないといって日本は悪くなかったと主張している。その支離滅裂な没倫理に、なんと、誰も気づかないらしいのだ。「日本人として我が国の歴史について誇りを持」ちたいのであれば、日本が大国同士の約束を公然と破った過去については、触れない方がマシだろう。
 のみならず田母神氏は、「日本はルーズベルトの仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃を決行することになる。」とたたみかけて、約束破りの責任を、挙げて当時の米国へ被せようと試みている。
 あの東京裁判において米国側は、日本外務省と日本海軍の開戦謀議(大国に対する公然の約束破り)を十分に知りながら、陸軍の「軍閥」だけを処断すべく四苦八苦しているのだ。(真相に興味がある人は、光人社刊の拙著『東京裁判の謎を解く』と『日本の戦争Q&A』を読めば、モヤモヤが吹っ飛ぶでしょう。)田母神氏のような軍令の最高責任者クラスなら、それに気づき、それに話をあわせるくらいの、政治家・外交官としての深慮も要求されるだろう。しかし田母神氏にはそれは無かった。それがなくても空幕長や統幕議長が務まってしまうような国が、もっかの日本なのですという真相が、図らずも、満天下に知れ渡ってしまった。
 日本が核武装するまでは必死で隠さねばならなかった「日本=米国の属国」という真実が、とうとうあられもなくバレてしまったのである。これで日本の核武装の目は完全になくなった。
 (ちなみに渡部昇一氏は老の一徹でマッカーサー発言を引用し続けるけれども、「セキュリティ」は「自衛」とは訳せない。日本海軍と外務省は、確信犯として実行するつもりでいた奇襲開戦を「自衛=セルフディフェンス=国際法上の合法」だと言いくるめることは不可能だと十分に承知していたから、「自存自衛」という珍妙な造語を京都大学の教授連と一緒にひねりだした。この語は英訳不能なのである。その意味を米国政府は、開戦後に解釈するのに苦しんだ。「セルフディフェンス」と訳せば、日本政府のやっていることは支離滅裂だ。そしてついにマッカーサーは、「自存自衛」の英訳は「セキュリティ」が妥当ではないかと思いついたのである。つまり日本の開戦が「セルフディフェンス(自衛)」だとはマッカーサーも少しも認めてはいなかった。……この話はもう十回くらいも書いているんだが、聞きたくない人の耳には絶対に届かないようだね。)
 日本の歴史を輝かしくしたかったら、公人が公的な嘘をつかぬ用心をすることだ。
 今の日本の人口は、世界で最初に3発の原爆をつくった頃のアメリカの人口とほぼ近似だろう(最も元気の良かったときの戦前ドイツだって5千万とか7千万だろう。それで西暦2060年の日本が小国のわけがあるかい)。然るに、今の日本に、「マンハッタン計画」を推進できるような政治家や大学教授や技術者や高級軍人が見当たるだろうか?
 卑小な人材ばっかりだ。人口は同じなのに、今の日本では、とてもじゃないが、1941~1945頃の米国の足元にも及ばない。
 その理由は、「公人が公的な嘘をつくことを恥じない」ことにある。
 ではそんな没倫理がいつまでも改まらない文化的な原因は?
 答えは、宗教的バックグラウンドの違いにある。
 だから、今回は、宗教の話を、めいっぱい書いたわけ。
 1946マック偽憲法が、だいたい「公的な嘘」の最たるものでしょう。
 そうそう、『予言・日支宗教戦争』は2008年12月に脱稿したものなので、その第6章でとりあげた防犯グッズの、ここ2カ月ほどの進化にまでは筆が及んでいない。ちょっとここで補足しよう。
 いずれもネットで商品をながめれば見つかるものなのですが……。
 無害な白煙を噴射することで、室内に入った泥棒が何もみえなくなる――という装置が売られている。濃密な煙覆が30分も持続するらしい。これはカーナビ狙いの車上泥棒に対しても有効でしょうね。値段はかなり高そう。
 赤外線で人の接近を検知し、デジカメでその姿を撮影・保存すると同時に、無線で警報を携帯電話へ飛ばす、しかも電池式――というスグレモノが発売されている。これを自宅屋内や自動車内の窓際に置けるようになったら、すばらしいでしょうね。コンパクトで、値段もリーズナブル。
 玄関ドアの上の隙間に引っ掛け金具とケーブルを通し、ドアの前で立ち止まる人を自動的にデジカメで撮影録画してくれる、というドアカメラも発売されているようだ。つまりピーピングホールには依存しない。こういうのを政府は日本の全戸全家庭に配給すべきだろう。大量調達で単価が2万円台に落ちれば、予算は総額2兆円で足りるし、しかも「社会を安全にする」というすばらしいインフラが、あとあとまで残る。定額給付金などは、後の世代の恨みを買うだけだろうが、防犯用テレビドアホンの現物支給なら、犯罪グループ以外のすべての日本人が、総理に感謝するだろう。
▽『予言・日支宗教戦争』のコンテンツ
第1章 日本には新しい宗教が必要だ!
第2章 武士道という「自衛の宗教」
第3章 見えない日支宗教戦争が始まっている
第4章 老子の兵法
第5章 「40代、職歴無し」を放置すれば日本は滅びる
第6章 自宅警備員に捧げる《泥棒よけ》虎の巻
第7章 政治家も役人も頼りにならぬ時代の在宅ロビー活動