シナ大陸に花粉症は無い――というのは本当か?

 森さま。スポーツ用品を拝受しました。ありがとう存じます。
 さて、7日の質疑応答の時間が足らず、余した質問用紙が多かったのは甚だ遺憾でありました。そこで、記入済み用紙のコピーを軍学堂さまから頂戴しましたので、この場で簡単にお答え申し上げたく存じます(一部重複と割愛あり)。
Q:日本軍が作った風船バクダンというのは、無人兵器か?
A:その通りであります。サイバネティクスを応用した兵器はロボットだと申せましょう。つまり直進魚雷がすでにロボット兵器だったのであります。そして、高度12000~15000mを維持するように工夫してあった、わが「ふ号」兵器も、立派なロボット兵器でした。
Q:無人兵器を敵に奪われたら、困るのではないか?
A:そんな心配をする前に、日本の周辺国が、有効な無人兵器を、日本より先に、日本より大量に整備したらどういうことになってしまうか、それを心配するべきでありましょう。防衛族は利権まみれだし、既存の大メーカーは提案をしないし、防衛省は2流官庁化まっしぐらだし、軍事評論家はまだF-22がどうとか言ってるし、このままだと、どうしようもないですぜ。
Q:オバマ大統領は、軍需産業に白紙小切手を切る時代は終った、といっていますが。
A:既に大きな産業に公的資金を突っ込んでも乗数効果が生ぜず、不景気への治療薬にならんということですね。ちょうど、支那事変中の日本の軍事予算がそうでした。ほとんどが、弾薬代に消えてしまいました。しかし、小さなハイテク産業を大きく育てる場合は違うんです。長期的にその国の競争力を高めることは間違いがないからです。ですので、DARPA予算などは減らぬはずです。
Q:集団自衛権を認めたうえで、日米安保条約の片務性を解消すべきだと思うが。
A:おっしゃる通りです。『属国の防衛革命』などの太田述正さんの記事がご参考になるでしょう。
Q:もし79年にベトナムがカンボジアのポルポトを打倒していなければ、東南アジアはどうなったか?
A:「ポルポト=中共=北朝鮮」ですから、東南アジアは暗黒時代に遷移したでしょうね。
Q:世界不況の中で、中国・北朝鮮が、食うに困って他国を侵略する可能性は?
A:ないです。侵略者は、国ぜんたいの元気が余っているときに近隣を侵略するものです。これは歴史から誰でも簡単に読み取れるパターンの一つでしょう。
Q:最悪の事態である亡国状態に日本がおちいった時に兵頭氏はどこの国に逃げますか?
A:「官僚は国民と運命を共にせよ」と公言している小生が、日本国外への逃亡なんて考えるわけないでしょう。でももし宝くじで200億円くらい当たったら、アンティグアみたいな暖かそうな島へ移住したいですね。
Q:最近の注目のSF作家/SF小説は?
A:ヴェルヌ、ウェルズ、チャペックですね。新しい発想を得たくば、だんだんと古典へ遡ってみることです。これは、何の分野でもそうです。
Q:ロボコンはどうですか?
A:無異議だとは申しません。しかし、「撃ち合い」の要素を採り入れることは文科省の支配下である限りは不可能でしょう。「穴掘り競争」とかの新発想が欲しいですね。
Q:無人兵器をどの国と組んで開発すべきか?
A:国ではなくメーカー単位で考えるべきです。「ダッシュ」のメーカーが左前になったときがありましたが、そういうときに、買収してしまうという着眼も必要かもしれませんよ。たしかDARPAは外国人にもプロジェクト応募の門戸を開いていたでしょう。その真似をすれば良いだけです。
Q:国産兵器技術の進化・発展に関して国内でいちばん決定権を持っているのは、防衛省でしょうか、国民世論でしょうか。
A:いまのところは、天下り受け入れ法人なんじゃないですか。とにかく自民一党支配が続く限り、腐敗は止まりません。
Q:なぜ1920~60’sのSFなのか。70’s~現代のものはどうなのか。
A:もちろん米軍は最新SFも参考にしています。しかしほとんどのアイディアは過去に何度も出てきているものなのです。それを読み漏らすことの方が、怖いでしょう。
Q:無人兵器の運用も民間委託できませんか。戦争請負会社に。
A:戦場で人殺しをする権限を民間人に与えていいわけないじゃないですか。
Q:新しい別な有料メルマガを配信する意向は?
A:ありません。もっかのところ、「読書余論」がわたしの活動のメインです。
Q:軍事や兵器に関する数字をリアルに把握する方法は?
A:多読しかないですね。「読書余論」は役に立ちますよ。
Q:国の規制がありすぎるので、街工場の自動車参入は至難ではないのか。
A:その通りです。だから法律を変えて、ふつうの車道の法定速度を「時速35キロ未満」にしなくてはなりません。私有乗用車の最高速度が人の全力疾走以下に規制されれば、車体の安全基準も簡単になり、町工場の技術力・資本力でも参入が可能になります。
Q:Youtube などで見られる瀬戸弘幸さん、西村修平さんらの「行動する保守」運動について、どうお考えでしょうか?
A:わたしが新風を買っているのは、瀬戸さんがいるからですよ。
Q:我が国が真の独立国となるために、個人レベルで何から始めたらよいか。
A:新風の選挙運動にボランティアで飛び込んでください。ポスター貼りの仕事からあります。それと、今週から好評発売中の拙著『予言 日支宗教戦争』の宣伝カキコなどを、諸方のサイトで展開してくださいませんか? ご批判でも構いません。
A:無人兵器を開発するために旧軍のような「工廠」が必要か。
Q:あたらしく別な機構をつくるまでもないのでは。
A:本を探したり読んだりする秘法はないですか。
Q:いちど、公共図書館の分類番号の000から999まで、数冊づつランダムに読んでみることです。乱読から入門すると、自分の興味が分かってきます。自分の興味が分かれば、その分野での必要な案内人も、おのずと見えてきますでしょう。
Q:『経○○学会』という雑誌と兵頭のかかわりについて。
A:『ヤーボー丼』所収の2篇の「研究ノート」(「論文」よりも完成度の落ちるもの。研究ノートよりも学術的に格が下がる文章は「エッセイ」です)をまず御覧ください。初出が書いてあります。それが『經○○學会』であります。研究者は無論のことですけれども、修士課程の大学院生でも、できれば、何らかの学術雑誌に論文やエッセイを載せると、若いうちから箔がつくわけです。また、「この発見はオレが世界で最初だぜ!」という公的な証明にもなります。学術雑誌に寄稿するには、その学会に所属しなければならず、それには年会費とか推薦人とかが必要です。しかも、権威のある学術雑誌のレフェリーは、出来のよくない論文が寄稿されてもリジェクトしてしまいます。ところが、中には、会費さえちゃんと払っていれば、推薦人も要らず、かなり〈?〉な内容の論文でも、ときおりは載せてくれるという、間口が広くて鷹揚な「学会誌」もある次第です。おわかりでしょうか? 今日では、自分の特異な見解を一刻も早く世界に公表したかったら、インターネットにアップロードすればよいだけです。ところが、20年くらい前は、商業雑誌に載らない文章をいかにして活字の紙印刷媒体に変換してもらうかを、苦労して考えねばなりませんでした。学会誌は「抜き刷り」というものを別に印刷して寄稿者に売ってくれますので、寄稿者は、その抜き刷りを他の研究者に郵送したりして自己宣伝をしたわけなのです。
 ――こんな感じで、雑駁ですいません。
 あとN・龍太さん。管理人さん経由で絵を見せてください。いつでも良いです。
 以下は余談。
 英文サイトの「ディフェンス・ニューズ」を見たら、 William Matthews 氏が、石炭から合成ジェット燃料をつくろうという米空軍の本気プロジェクトの話を書いている(09-3-2)。
 ちょっと部分意訳をしてみよう。
 原油はバレル150ドル弱から40ドル以下に下がったが、そんなの関係なく、USAFは、石炭、天然ガス、動物脂肪等からジェット燃料を取り出すつもりだ。
 2016までに米国内のジェット燃料の半分は合成品にしたい。
 モンタナのマルムストロム空軍基地で、石炭合成ジェット燃料の本格計画がスタート。 すでに B-52、 B-1、 C-17 で合成燃料を使って確認。次は、 F-22、 F-16、 B-2、 KC-135、C-5、 T-38 を、半分合成燃料を混ぜたJP8で飛ばすつもりだ。
 国際民航協会IATAでも、2025までには四分の一の燃料は合成油にしたい、と。
 原油が バレルあたり60~70ドルになれば、合成油は経済的に競争力をもつ。
 米国は全消費油の7割を輸入している。そうである以上、原油はいつか必ずバレル170ドルにもなるに決まっていよう。※そうそう。「投機家の操作だ」とか言ってる能天気な経済専門家が日本には多いんですけどね。安全保障関係者ならそんな甘い見通しは抱かないわけ。常に最悪の可能事態を考えましょうよ。
  Fischer-Tropsch 法という製造工程を用いると、石炭、コークス、木材、トウモロコシの茎などを、華氏1600度でガス化できる。
 そのガスから水銀や硫黄を除去し、一酸化炭素と水素を残す。二酸化炭素と水素を反応容器に注入すると、鉄の小片が触媒となって合成ワックスができる。それを精製すると航空燃料やらディーゼル燃料やらが取り出せる。
 製造過程と燃焼消費時とをあわせ、ふつうの石油に較べて2倍近くも二酸化炭素を生じてしまうのが、合成石炭油の一大欠点だ。
 これについても解法は研究されている。たとえば液体中から二酸化炭素を隔離・捕獲して土中に埋めてしまう方法。実用化すれば、JP8よりも1~2割、二酸化炭素を減らすことができる、と開発メーカーは主張。
 〔部分意訳、おわり〕
 どうです、この本気度。
 これから、我が国が原発を百基つくったとしても、飛行機だけは液体燃料で飛ばすしかないんですから、日本でもマジメに取り組みましょうや。この分野でもアメリカに置いていかれたら、目も当てられませんぜ。
 ちなみに、日本にも炭鉱の鉱脈なら、まだいっぱいあるわけです。ただし、採算が合わないので、もう掘ってないというだけ。
 石炭をうまく液化できるなら、なにも地上まで掘り出す必要はないんです。プラントを地下に設けて、ロボットに掘らせながら、その場で液化すればよい。そのやり方なら、日本でも採算は合うはずなのです。
 全力で取り組むべきだと思いますね。