生き延びたくば偽善憲法は捨てろ

 日本は米国と軍事同盟を結んでいます。その米国の大統領や上院は、じぶんから先に外国を攻撃しないという言葉の約束は絶対にしません。過去にしたこともないし、これからもしません。これはリアルワールドを経営するための常識です。
 1981年にイラクのオシラク原発をその稼動前に破壊したイスラエルの言い分はこうです。「生き残る権利は国際法に優先するではないか」(レイモン・アロン著『世紀末の国際関係』柏岡富英tr.)。
 西側各国は、口先ではイスラエルを非難しましたが、内心ではイスラエルの公式説明は十分に説得的だ、と思っていました。ここが、世界のほとんどが同情をしなかった日本の真珠湾攻撃との大きな相違です。イスラエルは、嘘をついていません。NPTにも入っていないし、「原爆を持っていない」とも言ったことはありません。そして、事前にも事後にも、自国の行為をあくまで説得的に世界に説明しようとしています。これは近代人の態度です。北朝鮮も、核実験前にNPTから脱退しています。これも近代外交がよく分かっているテクノクラートの態度です。しかし米国は、日本人は肝腎なところでどんな嘘でも吐く連中だろうと疑っています。いまだに真珠湾は正しかったなんて叫んでいるんですからね。呆れて当然でしょう。
 理論的には、いつ外国に対して水爆ミサイルを発射するかわからない米軍に対して、日本は沖縄基地を貸与して、シナを脅し続けていますよね。いわば、鎖の無い放し飼いの猛犬を自宅の敷地に置いています。そうするわけは、シナの水爆ミサイルも、いつ東京に向けて発射されるか知れないからです。北京から見れば、「オレもワルだが、日本人はずいぶん偽善的な連中だよな」と思うのではないでしょうか。
 できもしない言葉の約束をみだりにしないという態度が、近代社会の基礎をつくっています。公人が公式の嘘をついたら、非難されるのはあたりまえです。だから、自衛権すら否定しているようにしか読むことのできない「1946KEMPHO」を、改廃もせずにいつまでも奉戴している日本人は、米国からも信用されはしないのです。日本政府や日本議会の言葉が、信用をされてないのです。閣議や国会で何をどう決議しようが、マック偽憲法が奉戴されている限り、日本人の軍事外交政策に信用などありません。それが、米国が日本にF-22を売らない根源の理由です。
 かつてF-2の機体部分の日本の国産企図を米国は強く警戒して、むりやり共同開発に割り込んできました。米国は、日本がそれを特亜や潜在核武装国へ輸出するのではないかとおそれたのでしょう。「武器輸出三原則」なんて、法律じゃないので、関係ありません。通産省の役人の「行政指導」が海外では悪名高く、とにかく日本人は一夜にして前言を翻すと思われていたのです。
 有人飛行機は、核爆弾の投射手段となるので、あまり性能が良いと、地域のバランスを決定的に崩す可能性があります。しかるに通産省の役人や日本の企業人には、グローバルな安全保障を顧慮する教養など何もなさそうでした。だから、米議会や米政府の意向でいつでも export restrictions をかけやすいように、米メーカーに一枚も二枚も噛ませたのでしょう。
 F-22を売らないという判断のもうひとつの理由は、〈日本には、すでに直接侵略の危険はなくなった〉との地域分析が、あるものと想像できるところです。
 もう、リスクを冒してF-22を日本に売る必要はないし、売った場合の米国のメリットも、リスクを下回ると計算したのでしょう。
 たとえば、もしF-22が、ロシア領やシナ領に不時着してしまったとき、米国大統領ならば、その機体をどんなことをしてでも爆砕するか回収せよ、と、参謀総長に命令できるでしょう。国際法との整合性は、説得的説明によって事後的に調整できるとの自信の下にです。
 しかし、日本政府と自衛隊に、それができるでしょうか?
 たぶんは、F-22の技術が、みすみす敵陣営に知られてしまうことになるでしょう。米国の国益にとっては、大損ですね。
 米軍は、将来は、衛星から世界のすべての飛行機を監視したいという野望も持っているようです。米軍のF-22がそれに映らないのは、かまわないでしょうけど、日本軍の飛行機が監視し難いのは、ちょっと困るでしょうね。
 おそらくF-35は、衛星から見てステルスではないために、大々的に輸出が可能なのではないでしょうか。
 ところで SAM LaGRONE 氏が2009-6-16に英文サイトに寄稿している「Air Launched Hit-to-Kill」の記事を、みなさんは読みましたかい?
  F-15/16/22/35から、弾道弾迎撃ミサイルを発射できるようにして、西欧を防衛しようという構想が浮上中のようです。
 米陸軍のABM弾頭と米空軍のAMRAAMを組み合せるらしい。
 わたしは1995年の『日本の防衛力再考』の中で、核弾頭付きの巡航ミサイルから日本列島を防空するためにはAMRAAMが重宝するだろうという話を書いたことを記憶しますが、とうとう空対空ミサイルで弾道ミサイルを迎撃する時代が来るとは……。
 日本はすでにAMRAAMの同格品を国産しているのですから、国産の「ALHK」も可能かもしれません。
 わたしとしては、GBIとの二本建てを考えて欲しいと思います。サイロ発射式のGBIは、サイズ的にも対北京報復用の中距離弾道弾に即・転用できますからね。もちろん専守防衛ですし、日本国憲法がありますし、改憲を党是としていたはずの自民党はもうじき野党になりそうですし、ヒロシマのようなことは「二度とあってはならない」ですし、北京が灰燼に帰したら甚だ遺憾の意を表明するばかりですよ。