高校を全廃すれば少子化は止まる

 人類の歴史が目指す「絶対善」があるとしたら、それは、個人の自由が増進することです。
 己れの自由のみならず、他者の自由まで尊重できるように進化したすぐれた国民は、無謀にセックスしませんし、無謀に結婚しませんし、無謀に子供をつくりません。
 なぜなら、無謀な紐帯は不幸の再生産機構でしかないと、彼は、見聞によって承知しているからです。
 女や子供の将来の幸福を願えばこそ、やさしい貧乏人の若い男は、慎重になっているのです。
 それは「自他の自由の増進」と同義である以上、道徳的にまったく正しく、世界の後進国人の無慚なありさまと見比べて、大いに誇るべきことのはずです。
 これをまず褒められないような没道徳的な政府や政党ならば、亡んでしまった方が人類の為でしょう。
 かりにもし、そのような貧乏人の男子が、3億円の宝くじに当たれば、彼は、まるで金持ち一家の生まれながらの坊ちゃんのように、他者に対して強気になることができ、濫りにセックスを求め、結婚を求め、子供をつくってもかまわんと思うようになるでしょう。それは、財産は己れの一家の将来の自由を約束すると一般に考えられているからです。金銭によって責任が取れる以上、彼の乱脈な私生活は、他者の自由を甚だしく侵害しないでしょう。
 今、2000万円あれば、1人の嬰児を出産させ成人させることができるといいます。しかし2000万円ポッキリでは、その子供が幸福になるかどうかまでは予断ができません。ではトータルの養育経費として、はたして親は、幾ら用意できる見込みが立てば、わが子を確実に幸せにできると思えるのか?
 これが、分からないのです。
 分からないからこそ、人々は、結婚の前から、より安定した、より高収入が必要だと計算し、結婚後も、〈3人も4人も子供を増やすべきではない〉と自制するのです。
 そうした判断の基準は、すべて、他者の自由を尊重する気持ちに出ているのです。これがじつに、一国の庶民の全般的な風潮なのです。
 なんという美徳を日本国民は、獲得したのでしょうか。全世界の諸国民の中で、道徳的に最も急激に進化を遂げつつあるのは、日本国民ではないでしょうか。
 諸政党の中にまずこの国民道徳を褒めるところが一つもないということは、いまや、すべての政党が例外なく庶民よりも道徳的に劣化したという、まぎれもない証拠です。既成政党はチンカスです。
 断言します。未来社会では、着る物、乗り物、住む家、すべてが「ロボット化」されるでしょう。
 介護も、医療も、単純労働も、農林漁業も、兵役も、ロボットがアシストすることで「人手不足」などは完全に解決されているでしょう。
 これを予見する政党も役所も一つもないのですから、いかさま日本は危機的状況に違いありません。道徳的にはこんなに高いところまで来たのに、国民の安全を守るために必要な人材が、みるかげもなく払底し去っているのです。
 危うい!
 他者の自由を何とも思わない外国人たちも、ロボットを買って軍隊を強化してくるでしょう。それまでに、日本に、ロボット化社会に適応できる有能な人材が育っていないと、日本国は、外国軍のロボットのために支配されてしまうかもしれないでしょう。
 高い道徳を獲得したわたしたち日本国民の未来社会の安全のためには、今の不自由な教育制度では、必要な人材など供給不能です。現今の学制は、現今の役所や政党と同様、袋小路に迷入しました。
 日本の大学に入学するための資格要項から、年齢に関するものなどは一切なくし、それによって「制度としての高校」を中抜きしてしまうことを、わたしはもう何年も前から提案しています。改めて、ここでまた提案しましょう。
 これは、各党が発表する、子育てバラマキ政策などよりも、格段に健全です。なにより、財源が無用です。
 秀でたポテンシャルある中学生は、ミドルティーンにして、大学において能力を全開させられ、ただちに先端的な生産や研究を推進することになります。もちろん、彼は20歳以前にして高給取りにもなるでしょう。
 親がわが子のために負担すべき養育経費は、従来より数百万円も少なくなる可能性があるのです。それは、国が若い夫婦に数百万円をプレゼントするのと同じことでしょう。
 江戸時代の藩校や私塾は、年齢が規定に達していない天才的少年の入校を拒んだりしませんでした。現在の学制は、むしろ江戸時代よりも不自由です。官僚的統制主義に由来するこの戦後学制の不自由さこそが、戦後のわが国を、政治的に三流の人材しか輩出せぬ国に変えてしまったのです。革めましょう。
 制度としての高校をなくしてしまうという〈学制の中抜き〉によって、中学校でも、大学でも、学問の場としての活気は倍増するでしょう。なぜなら、もはや不自由ではなくなるからです。
 今の20歳以下の日本人の人生が如何に不自由なのか、日本人自身が分かっていません。それを指摘できる政党も一つもないという情けなさ……。
 そして、それをブログでならこうして指摘ができるという、有り難さ……。