海でも山でも周回遅れ――と分かってウンザリなトピックス集

 本日、書店で『Voice』9月号を立ち読みするついでに、光人社NF文庫の『たんたんたたた』を買うことをお忘れなく!
 『Voice』ではあいかわらず伊藤貫氏は、日本が長射程の巡航ミサイルを国産でき、その巡航ミサイルは何の問題もなく韓国/北鮮領空を侵犯することができ、シナ軍保有のソ連製防空システムでは撃墜もできないという誤った前提に立っているように見えるが、その大誤解部分を脳内削除すれば、正しい議論のまとめをしてくれている。
 伊藤氏はSSMが侵略的でCMは非侵略的だと思っているらしい。伊藤氏の年齢とこの主張に関するこれまでの一貫性から推して、残念ながら斯かる価値判断はもう一生改まらないだろう。
 「空手に先手なし」という言葉が、庶民には誤解されているように思う。
 そもそも沖縄空手の「上段受け」は、刀をもっていない農民が、武士の刀の攻撃を受け流すためのものだったはずで、したがって肘はまっすぐ伸ばさねば受け流すことなどできず、直角に曲げて受けたら前腕を切断されてしまう。
 もちろん、二回続けて受けることはない。受け、即、攻撃・制圧とつなげねばならず、しかも、こちらの最初の一連の攻撃で敵を完全に制圧できなければ、二の太刀でこっちが殺されてしまう。
 現代の多くの流派が見せる空手の型では、刀で襲ってくる敵に対する合理的な自衛(=致死的な反撃)は不可能であり、それは要するに古態を伝えていないのである。
 さて、ディフェンスニューズに09-8-10に Todd Neff And ben iannotta氏が寄稿している米軍の次期通信衛星の話。
 現有の米軍のマイクロ中継衛星(8基のコンステレーション)は「UFO」という1993登場の古いものなのだが(といっても軍事通信衛星ゼロの自衛隊とは比較にならぬが)、もし一人のユーザーがビデオ動画を送るためには、他のユーザーに通信を切れと命じなければならない。
 そこで通信量の最も多い米海軍が主導して、「MUOS」という、4基の静止衛星(+予備1基)で、全地球上の移動ブロードバンド通信ができる軍事衛星中継システムを、ロッキードマーチン社に開発させて、2010年に間に合わせるはずだった。
 ところが、このシステムのコンセプトが野心的すぎた。
 なんと、携帯電話の3G方式を、衛星コンステレーションで実現しようというものなのだ。最寄のアンテナ局が通信発信者をロックオンして、そのユーザーの移動にともない、信号をアンテナ局間でリレーする方式を、衛星でやろうというのだ。
 しかもUFOだと同時600通信しかできないのに、MUOSは同時7000通信を狙っている。〔もちろん重い動画データの送受ではなかろう。〕
 あんまり野心的すぎて完成が延びに伸び、2011-2まではシステムの切り替えは不可能。つまりそれまでに製造する車両には、UFO用のかさばるパラボラ・セットの別途搭載が必要なのだ。(MUOS完成後に製造される車両は、平面アンテナをとりつけておくだけでよくなる予定。)
 この記事で見落とせないのは、米海軍が、〈太平洋にはミサイル防衛に必要なワイドバンド衛星通信が確保できていない〉と認めていることだ。
 兵頭は断言する。日本がマイクロ中継衛星を打ち上げて米軍にリースしない限り、次世代のMDも不可能だろう。
 MUOSの完成が遅れている理由の一つは、米軍としては、古いUFO対応器材への下位互換性も、どうしても確保せにゃならんこと。
 日本にはこんなハンデはないのだから、準天頂衛星を複数打ち上げて、先にやっちまったらどうだい? ガラパゴスばんざいだ。
 とにかく米軍の衛星通信チャンネルの需要は伸びる一方だから、米軍相手の衛星通信回線を有料リースするビジネスはとても有望ですよ。現に彼らは民間の「Leasat 5」を借り上げている、と記事にもある。三菱電機は筋悪なDSPを諦めて、こっちに賭けたらどうですか?
 つぎは『LAタイムズ』のAlexandra Zavis氏の09-8-8寄稿記事だ。
 アフガンでは、IED=路傍爆弾が4発爆発もしくは駆除されると1人の米兵が死ぬ。
 2008年には3594発はぜた。前年の2倍以上だ。
 2009はすでに154人死亡。イラクでは34人なのに。
 しかもイランがイラクに自己鍛造爆弾を流している疑いがある。遂に路肩爆弾にセルフフォージングが登場だと。
 イラクの道路はほとんど舗装だ。だから地雷は使えない。
 リモコン装置は、携帯電話の他、車庫の自動扉にコマンドを出すリモコンも利用される。
 他方、イラクよりも教育レベルが低いアフガンでは、無線ではなく、有線式起爆。または、原始的な踏み板方式。そもそも舗装道路がないから地雷式でいいのだ。車両の真下で爆発する方が、もちろん、より致命的。農薬も爆弾材料に使われている。
 そこで、米軍は地中レーダーを考えている。しかし地面の18インチ下には何でもあるから困る。
 アフガンは人口もイラクより多い。
 米軍は車輪つき地雷警戒ロボットも投入しているが、ペンタゴンの本格回答は、2200両の耐地雷車だ。
 舗装道路の多いイラクは、やたら装甲しまくりの重い車両でもいい。しかし、アフガンは不齊地の山地だから、とにかく軽くなきゃダメ。〔高地だから酸素も少ない。エンジンの負荷を減らしてやらねばならず、できるだけ軽くすべきだろうね。〕
 かつてアメリカ軍のハンヴィーを真似てトヨタにジャンヴィーをつくらせた(米軍様の先躡を踏襲しますので…という説明だけが、大蔵省を首肯させ得る)防衛省は、こんどは困ったことになった。日本国内の運用に限れば、IED対策なんて必要ないんだから。
 必要が認められたとして、こんどは、米軍の新車両のうち、「イラク戦域型」を模倣するのか、「アフガン戦域型」を模倣するのか? オバマ=クリントンはまちがいなく日本に、〈アフガンに兵隊数万人を出せ〉と要求してくるぞ。どうする民主党?
 未来は、次の記事の中にある。
  kris osborn氏が09-8-10にディフェンスニューズに寄稿してる記事。
 アフガンで無人の輸送用車両を来年から実験する。すでに米国内で完成しつつあるものだ。
 SMSSというロボットの小型トラック。歩兵分隊~小隊の荷物をぜんぶ載せて、部隊のあとから一定の距離をおいて勝手についてくる。そういう自律行動ソフトができつつある。
 リモコンでも動くし、あらかじめ指定された数点のGPS座標を自動で辿ることもできる。
 最適の障碍回避路はじぶんでみつける。もちろん味方の兵隊を大きく避けて通りすぎる機能もあり。
 1000ポンド搭載可能というから、昔の最強の騾馬×5頭分の働きをしてくれるようだ。
 ジョンディーア社が、これに対抗した別のロボット車両を提案中だが、SMSSに対して歩が悪そうだ。
 穴やガケのような、みおとしやすい障碍も自律探知&回避。
 ルートを記憶するから二度目からは完全自動で何往復でもしてくれる。
 この自律車両にミニロボットを乗せる。するとミニロボットの機動距離が倍化する。
 もちろん兵士がとびのってマニュアルで操縦することもできる。
 自衛隊も、すべての車両に、これからはリモコン装置を標準装備とすべきだろうね。
 ていうか、米軍用に気の利いた無人車を提案して売り込めよ。
 お次は、台湾の国民党の退役中将(元歩兵)で米陸大卒のShuai Hua-Ming氏へのディフェンスニューズのインタビュー。09-8-10。
 台湾が66機の F-16C/D Block 50/52 を売って欲しい理由は、電子戦の能力だと。台湾はそこが遅れているんだと。※つまり中共も遅れているということだね。米国は海峡上に低レベル・バランスを作ろうとしているのだから。
 過去60年、海峡の航空優勢をたもっていたから、台湾は侵攻されずにすんでいた。主戦場は海峡中にこそあり、島の中ではない。F-16A/Bと Mirage 2000-5 は古くて、最新のJ-10s and Su-27s には対抗しにくいので。
 ※これは信用できない話だ。wendell minnick氏の09-8-7の別記事によれば、台湾のミラージュ2000は独自メンテができずに運用休止状態だとある。日本のファントムはもっと古いぞ。
 Shuai氏は続ける。米国がF-16を売らないなら、その予算は訓練に回されるだけだ。
 中共の1000発のSSMを防禦しようとおもったら、すべての重点ごとに2000発のPAC-3を置くしかない。まったくコストイフェクティヴではない。
 そして現状ではパトリオットは6ユニットしかないのだ。台湾の3大都市を守れるだけだ。
 台湾は潜水艦を8隻欲しい。しかし国産するとなっても、兵装とエンジンは輸入するしかない。
 8隻製造しても輸出できないとしたら、その投資が無駄である。
 ※台湾人の根性無しなところが遺憾なく告白されている。国防問題を経済問題と考えているのだ。じゃあせめてスマート機雷とか長距離ホーミング魚雷でもつくったらどうだ。やる気を見せろ。
 いまさらP-3Cを売るといわれたって、すぐ製造中止じゃないのか。※P-8Aができてますからね。
 とにかく米国兵器は古く、しかも無力化措置がとられているのだ。
 台湾向けダウングレード・モデルを「Tモデル」と言っている。そんなものはいやだ。
 Q:米国兵器が大陸に流出しちゃうのでは?
 A:ありえん。
 台湾陸軍がついに全志願制になったのは良いことだ。台湾も人口減少しつつあるし。
 前政権が徴兵年限を2年から1年にしてしまった。しかも休日が100日もある。実質200日の訓練で近代軍の新兵をつくれるか? もはや徴兵制の時代は終ったのだ。
 台湾軍には将軍が多すぎる。これは蒋介石の意向で、大陸に反攻したときに農民をかきあつめて大量の旅団や師団を急造するためであった。
 おしまいは、インドの英字新聞に09-8-9に載っている、北鮮貨物船の記事。
 タイで砂糖をつんでイラクへ向かうはずの北鮮船。インド領海に不法投錨し、しかもインドの軍艦をみて逃げようとしたので警告射撃して臨検した。
 インドは過去10年に2隻の北鮮貨物船をつかまえている。不法侵入で。
 1999にとっつかまえたのは、名目は13000トンの砂糖と浄水装置となっていた。しかしこの船はパキスタンに核関連部品を送ろうとしていた。
 2006-10にとっつかまえた2隻目はカラッポだった。
 米軍がインドにP-8を贈りたくなるのも分かりますね。
 ところで小泉元総理が北鮮から人質を連れ帰れたのは、その直前に工作船の撃沈命令を下しているからですよ。しかも何度も靖国に参拝してシナにも嫌がらせをし続けた。これができるような首相でなかったなら、北鮮とは交渉なんかできないのです。人材が絶えたから、自民党が滅びる。もうしょうがないでしょう。
 8-29の文京区講演では、こういう話もしましょうか。