擬古文の研究

 いったい二世三世議員がなぜ生まれるのかといえば事情は単純で、親父の借金を子が返すと貸主に約束することができるからである。それが日本の伝統的な信用創出術なのだ。
 衆議院議員選挙がかつて中選挙区制だったとき、選挙を一回乗り切るだけでも、おっそろしいまでの資金が必要だった。支援者や貸主に対するアカウンタビリティー(ケツ持ち)保証を息子がやりますからとハッキリ約束しない限り、誰もカネや労力を貸してくれなかったのだ。
 数千万円から数億円の借金を背負った候補者は、中小企業の経営者と同じくらい必死になる。その代わり、彼の頭の中は、借金返済のことだけでいつも満杯だ。
 が、何代も政治家を続けるうちに、借金返済のお釣りが出るようになって、ついに借金フリーに成り得た「ジュニア」たちも現われる。
 ところがそうなってみると、こんどはこの人たちには「殺るか殺られるか」という闘争者のオーラが亡せてしまう。安倍氏、福田氏、麻生氏、鳩山氏……みんな去勢されている。しかも彼らは、バックのどんな選挙区民に対しても、もはやアカウンタブルな感情など背負ってもいない。
 これでは日本はやっていけなくなるぜ、と思うのなら、完全小選挙区制か、完全大選挙区制にするしか道はなかろう。
 完全小選挙区制とはイギリス型だ。
 候補者個人のマニフェストをパンフレットにして全戸に配り、さらに個別訪問をして丹念に口頭説明をするが、街宣カー連呼などは禁止される。
 一人の候補者で選挙区内の全戸を個別訪問できるくらいの小さい選挙区としておくなら、数億円の選挙資金などは当然無用となるわけである。貧乏人の倅の新人にも、当選のチャンスが平等に与えられる。
 現行の日本の衆議院議員選挙制度は、資金力不要な候補者本人による個別訪問を禁じてしまっている一方で、資金力で優劣が分かれるに決まっている諸活動を大々的にゆるし、比例区復活まで可能としているのだから、まったくイギリス型でも何でもない。「孫まで三代で借金返済」予定の候補者か、閨閥リッチか、特定組合組織エージェントが、勝つようにできているのだ。
 資金力不要の選挙CMの最良の媒体はインターネットだ。(コミュニティFMは、私人による電波妨害が簡単にできてしまうので、理想的ではあるまい。)
 逆に、資金力にモノをいわせる大衆工作が最も確実に巧めるのは地上波アナログTVである。
 とすれば、公示から投票までの間、政治がらみのTV・ラジオ・新聞の私的広告は一切禁止とし、インターネットは逆に選管も立候補者に対してウェブサイトを貸与/提供するというのが筋であろう。次の参院選はそうしたらいい。
 滋賀県の渡辺透氏が『亟書』という兵法書をお書きになってJSEEO事務局に送ってくださった。せっかくなので、自民党の教訓となりそうな三つのポイントをご紹介する。
【24ページ】
 「敵亡ぶや、君の威は高し。而して将の権は低めらる。よって、君は敵を憎み、将は敵を愛す。」〔原文を短縮改変〕
 ※中共はソ連ではなかった。シナ人は西洋文明を継承できないことが、最新の見掛け倒しのパクリ兵器の数々から、米国政府の奥の院にはもはやハッキリした。シナの20発のICBMすら米国にとってはなんら脅威でない(ただし内外の愚民どもにはコレ秘密ね)。とすれば、シナが民主化(=西洋化)しないでこのままでいてくれることが米国の国益に適う。とすれば日本はシナを刺激しないように対IRBM迎撃能力を持つべきではない。東京は「東風3/東風21」の前には、丸裸でいるべきだ。日本には短距離SSM用のMDだけ買わせておけ。それには、北九州までしか届かぬ北鮮のノドンが、東京まで届くかもしれないという偽情報を信じさせておけ。対北京牽制が必要なら、それは直線距離が近い韓国空軍のハマリ役だ。日本にF-22など売る必要はなく、逆に韓国軍のストライクイーグルで日本の旧型F-15と「低レベル均衡」させておくのが将来的に好都合じゃわ……。
 米国の敵が将来の核テロリストしかなくなったとわかり、つまりソ連だけでなく中共というリアル脅威大国もじつは居なかったのだと認定されたことによって、冷戦時代からずっと飼われていた日本という走狗は、いよいよ鍋で煮られる運命に陥ろうとしているのである。2009の政権交代が、このピンチから日本を救出した――と、思いたい。
【52ページ】
 「強たる所以は, 其の強を信ぜざるに有り. 賢たる所以は, 其の賢を信ぜざるに有り. 久しき所以は, 其の久しきを信ぜざるに有り.」〔原文ママ〕
 ※己れの無知に常に自覚的になれる者が真の知者なのである、とソクラテス先生がおっしゃっていることを、東洋人よりも早く西洋人は理解している。「属国」の現実に感覚麻痺している自民党はいまや有害であるから野に下れ。そこで目を醒ましやがれ。
【80ページ】
 「敗れざるは変易ゆえなり。しかれども、勝ちに因りて変ずるは難し。敗けに因りて変ずるを可とす。」〔原文を短縮改変〕
 ※強い者が生き残るのではなく、変化する者が生き残れる。政権交代がなければ、属国日本は変わることができず、冷戦後の宗主の無体な搾取からは生き残れなかったであろう。
【101ページ】
 「衆を一とするは、衆志を一とするにはあらで、衆欲を一とするに有り。」〔原文を短縮改変〕
 ※このたび国民が民主党に権力を与えたのは、属国のくびきから自由になりたかったからで、日本の法律で日本領土と明記されている竹島を軍事占領している法破壊者の敵国民に裏日本の自治体の行政権をくれてやりたいからではない。北方領土を占領しているロシア人に北海道の条例をつくらせるか? 同じことだ。
 2007年にコリン・グレイ教授も『戦略の格言』という著書(奥山真司氏の訳あり)で、古今の名言40をとりあげるという試みに挑んでいる。こういうのは物事を整理して一から考え直す良い訓練になるので皆さんもやってみるといい。
 (ただし、JSEEO事務局に送られてもどうしようもないから、ご自分のウェブサイトで公開なさるのが「吉」だろう。)