樋口幹さま、ありがとうございました!

 先般、函館から130kmも離れた三沢基地から送信されている、出力わずか0.6キロワットの中波米軍放送(1575kHz)が聴けそうな、性能に定評のあるMW受信用ラジオの喜捨を呼びかけましたところ、さっそく1台の差し入れを賜りまして、わたくし感動をしております。
 頂戴したお品物は、ソニーの「ICF-EX5」。中波受信用の内臓バーアンテナの長さが、他社製品の追随を許さぬ18センチもあり、さらに混信回避用の高度な機能まで備わっていて、これで受信ができなかったら、まず諦めなさいと言ってもよさそうな、電池式ポータブルラジオ中の最高機種です。
 で、結論ですが、昼間はまったく聴こえません。日没後になりますと、確かにうっすらと聴こえて参ります。強度が低くて、混信のひどいときはロシア局や、どこかの「NHK第二」にマスクされてしまいますが、混信がひどくないとき、神経を集中すれば、音楽やアナウンスを聴き取れるだけの明度があります。さすがだと思いました。
 夜が更けるにつれ、聴こえなくなり、未明にまたスイッチを入れてみると、弱いながらもハッキリと聞こえます。夜明け前の混信がないときの状態は恐るべきものと思いました。
 他方、810キロヘルツの横田からのAFNは、出力が50キロワットあるはずですが、昼、夜を通じて、函館からICF-EX5では聴くことができません。ちょうど方位的に正反対にあるロシア局からの混信がひどすぎるようです。
 通信の世界では、「某町からは某局は普通に受信できぬ」という情報も、大いに貴重で役に立つのであります。
 そういう書き込みがインターネット上に不足しておりますために、みんなで無駄をやってしまうわけでありましょう。
 そこでわたしはここに書き込んでおきたい。
 北海道地区にお住まいの皆様、「ひょっとして1万5000円前後のラジオで三沢や横田のAFNを昼間から快適に聴けるのでは?」と希望的想像をたくましくするのは、御止しになったほうが善さそうですよ。
 なおちなみに、百均ショップで買ってきたテレビ用5mイヤホンをバラして10m線とし、室内に張りわたしてICF-EX5の外部アンテナ端子へ螺子止めしてみましたが、その効果は、FMおよび日本短波放送の受信で僅かにあるような気がする程度。
 ネットでダウンロード&印刷できたICF-EX5のマニュアルを読みますと、外部アンテナがMWにも効くように読めるのですが、ICF-EX5のMWの感度にはなんら影響がないようです。(なお我が家は木造で、近くに3階建て以上の鉄筋構造物もありません。)
 これにてキッパリと見極めもつきましたから、「ラジオ喜捨のお願い」は只今をもちまして終了といたします。あらためまして樋口様には深く御礼申し上げます。もちろん、この貴重な高級ラジオは、末永く情報収集に活用いたします。
 ところでわたしは皆様からの喜捨が待ちきれず、ひょっとしてグアム島の短波のAFNが受信できるかもしれぬと思い、DEGEN(徳勁)社製の「DE1103」の輸出仕様機を、新品送料コミ¥9400-ほどで買い求めてしまいました。
 こちらの使用感報告もしておきましょう。
 この製品はシンセン市のシナ企業製で、がんらい「愛好者3号」と称し、短波受信の性能の高さを誇り、中波もかなりの感度で受信できると、無線マニアの間で熱い評判になっていたものであります。(内臓バー・アンテナの長さは13cmのようです。)
 そして、インターネット上のリポートによりますれば、回路の心臓部品は日本製のようです。
 この「DE1103」は、発売されてから数年にもなるようですが、いまだにこの価格でこの性能を上回る短波受信機は出ていないんだそうです。
 つまり、〈性能自慢なシナ製品〉。これって珍品ですよね。おそらくはシナで唯一なのじゃないかなと思います。それでこの際ついでに確かめてみたくなったという次第です。
 ソニーの「ICF-EX5」は、短波帯は「日本短波放送」(NSB、旧名「ラジオたんぱ」)だけが固定水晶で受信できるようになっており、それで価格が1万5000円前後に抑えられてあったようです。もちろんそれですと、ハワイやグアムにあるAFNの短波局は、受信はできません。
 わたしの「DE1103」は、注文してから配達されるまでに9日かかりました。梱包には、日本国内の100Vから6ボルトへ変圧してくれる交流アダプターと、外部アンテナ端子にジャックで差し込める10mワイヤー・アンテナと、FM聴取用のステレオイヤホンが附属していました。
 結論を先に申しましょう。「愛好者3号」は、短波AFNの受信用機としては、期待はずれです。
 ハワイやグアムの短波は、電源を電池のみとして、夕方、夜、そして早朝に、複数の周波数を順番に試してみましたが、それらしき信号の兆候すら、聴き取ることはできませんでした(SSBに切り替えてもダメでした)。
 もはやこれらを受信するためには、庭に高い鉄塔を建てて巨大アンテナを設備する必要があるのかもしれません。わたしはさすがにそこまでする気は無いのであります。
 VOAなどの日本向けの英語放送、それから台湾や北鮮などからの日本語放送を聴くだけでしたなら、どこのホームセンターでも2000円台で売られているオールバンドラジオ(もちろん、短いロッドアンテナのみ)でも十分に受信はできます。1万円の投資をわざわざする価値はどこにもありますまい。
 ところが、驚くべき発見もありました。これは、あくまで電源として電池を使用している時だけに限られるのですが、「愛好者3号」は、むしろ中波受信力が凄いのです。
 なんと一時的にですが、昼間、三沢のAFNらしき中波を拾うことができました。(夜はまったくダメ。また、MW受信時に附属の外部アンテナを差し込んでいると、余計な電波を拾いすぎてノイズが甚だしくなり、むしろ有害のようです。)
 また、横田のAFNも、昼間、激しい混信ノイズの陰にかくれがちながらも、時々聴こえるようです。日没後は、方位正反対のロシア局が強烈で、まったくマスクされてしまいます。が、夜明け前の810キロヘルツ横田は強く入ります。
 韓国のソウルのAFNらしい中波放送(1530kHz)も、昼間、瞬間的に聴こえることがあります。
 大したものです。
 しかしAFNを聴く価値はそもそもどこにあるかと申せば、それは普通の番組の途中に挿入される軍の広報テープ(これはVOAなどで流されることはない)や、臨時番組や、臨時のアナウンスなんであります。
 それは、何時何分に放送されるか、予期することができません。
 ですので、常時途切れなしに漫然とBGM状態にして聴いていられるくらいの受信感度と明度が、一日の随時に得られないのであるならば、その受信機は、初めから使えないのと同じようなものであります。
 夜中の3時によく聴こえる、とか、昼間は途切れ途切れにかすかに聴こえる、という程度では、よほどのヒマ人でない限り、役立てようがありません。混信ノイズが多すぎますのも、聴き苦しく、すぐに疲れてしまいます。
 もし函館から見て方向的に真後ろに位置するロシアの中波局や、同一周波数の国内局がなければ、三沢のAFNをもっとクリアに受信できるのかもしれません。
 まあ、1万~数万円ていどの投資では、快適な受信は無理だったのだなぁと察しがついただけでも、今回は有意義な収穫があったと思っております。
 あと一点、驚きのリポートを付け加えましょう。「愛好者3号」によって初めて、わたしは青森の民放FMを受信できました。(昼間です。夜はなぜかダメ。)「ICF-EX5」でも、この局は(昼夜ともに)聴けません。
 オフ・ザ・シェルフ(ありあわせ)の要素部品の組み合せで、ソニーやパナソニックをも凌ぐオリジナル機能を叩きだしたとは、DEGEN、なかなかやりますわ。
 ひょっとして、英国サリー大学に留学してアマチュア無線を極め、2000-6-28にロシアのコスモス3Mロケットで「清華-1」衛星をうちあげた技術者たちのお仲間が、同社には集っているのかな?
 ただし「DE1103」には、大きな不便もあります。やはりシンセン市の徳勁[DEGEN]電子有限公司で製造されている容量1300ミリアンペアの単三電池×4本に充電中のとき、AMの受信性能が、ホームセンターの2000円級の最低価格ラジオ(非充電電池式)よりも低下してしまうことです。
 インターネットには、ACアダプターをつないだ状態でもノイズを拾わない――とか書いて褒めちぎってあるのですが、みんな回し者ですか? うそをつけよといいたい。充電ならびに電池節電のためにACアダプターをつないだ状態では、ローカル局以外、ほとんど受信ができなくなってしまいます。
 ビデオカメラのリチウム電池のようにすぐに充電が済んでくれるのなら、2時間ぐらい待てばいいので文句もありませんけども、このラジオはニッケル水素の1300ミリアンペアを一杯にするのになんと13時間もかかりやがるのです。つまりその間は、DEGENが売りとしている遠距離局受信の目的には、まったく使えぬわけ。しかも、1晩中充電したはずなのに、4時間くらいでバッテリー切れとなったりします(これはひょっとするとニッケル水素の学習特性に固有の問題で、何度も放電させているうちに次第に改善される可能性があるのかもしれません。またリポートします)。
 要するに、本体とは別に、外部で充電できる専用の充電器でも買えということかもしれません。
 台湾あたりのメーカーが、こうした点を改良したもっと使い勝手の優れた製品を出してくれることを期待します。手回し発電機付きとかね。
 ついでに、マヌケな感想。BBCの日本語放送って、いつの間にか、無くなっていたのですね。では、シンガポール中継局からの英語放送しか、今はないのか。これもインターネット発達の結果ですね。ジョン・ニューマン氏よ、いずこ。
 それから、夕方のモンゴルの日本語放送と、朝のイランの日本語放送は、「愛好者3号」でも受信できない。要するにこれらは、庭に鉄塔アンテナを建てているBCLマニアだけが聴いている特殊放送ということ?
 それと、平壌放送は、むしろ2000円級の安ラジオの方がよく聴こえてしまうのは何故なんだ?
 いずれにせよ、5000円前後級の中途半端な機能の日本製ポータブルラジオは、もう商品の生命がなくなったと理解しました。
 また、ロシア、シナ、北鮮の3カ国からの中波放送が受信できるICF-EX5に、海外短波局の受信機能が省いてある措置は、妥当なのだということも納得ができました。