館内放送。ドクター伊藤、メルアドを知らせてください。

 6日間もたてつづけに出張してきたが、そのあいだの面白いニュースは一つしかない。それは william matthews 記者が2010-2-15に載せている「The Nuclear Option  Are New, Small Reactors Answer to U.S. Military’s Power Needs?」です。
 米議会は2009秋に、米軍基地が固有の原発で電力をまかなえるかどうか研究しろ、と注文を出していた。
 これはチープ且つ単純な特殊原発に見込みがある。
 (米国といえども本格的商用原発の建設には23年もかかってしまったりするのだ。それでは急場に間に合わぬ。)
 いま、一メーカーから提案されているその超小型原発は、家庭の風呂桶×2コ分のサイズでしかない。中心システムの重さは20トンに納まる。つまり陸上可搬の設備とすることができるのだ。こいつを地下深くに据えつける。
 1基のコストは $50 million で済む。出力は25メガワット。町でいったら2万軒の家庭用電力がまかなえる。
 ポータブルなので、廃炉の面倒がない。地下から引き上げるだけ。燃料の寿命は7年~10年なのだが。
 10年経ったら、燃料はふたたび濃縮【?】されて再使用される。
 炉心で発生した熱は、「鉛・ビスマス」の液体状の合金が伝達する。
 鉛・ビスマス液は加圧されていないので、万一漏れてもどうということもない。
 濃縮ウラン燃料は、セラミックのペレットに入っている。
 ボロン・カーバイドの制御棒が12本。
 炉心反応の緊急停止用として、それとは別に、6本のボロン・カーバイド棒。
 万一、その緊急停止棒がうまく動作しなかったときには、ボロン・カーバイド球を中央部に投入してバックアップする。
 ただしこの提案、いまのところ、机上のシステムでしかない。実物はどこにもないのだ。
 別の会社×2も、小型原発を軍に提案している。
 その一社は加圧水型。40メガワット。寸法は、60×14フィート。
 以下、兵頭コメント。米空軍は、〈基地が必要とする電力を自前の小型原発で安定的にまかないたいものじゃのう〉と前々から観測気球をブチ上げていました。詳しくは3月11日発売の『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』でも読んでくれ。
 今月、オバマ大統領も、〈エネルギー独立と環境保護を一挙両得できる原発に政府が金融支援するぜ〉と演説してくれたので、それに合わせて米陸軍も要求をあげようというわけでしょうか。
 この調子ですと、嘉手納や横田にだって将来は原発が導入されることになりそうですなぁ。
 なお、米海軍は、発電所よりも、むしろ艦隊の原子力化の方を強く議会に働きかけたいという下心がございますので、横須賀住民はこのニュースは気にしなくて可いでしょう。
 さあ、日本のメーカーも超小型のHTTR炉を開発しようぜ。1都市1原発が理想ですよ。
 次。
 Bruce Mulliken記者が『 Green Energy News』に2010-2-14に「SOLAR FOR SAUDI ARABIA」という記事を寄稿しています。
 サウジが初めて太陽熱を利用した海水蒸留装置を建設するんですと。
 そのサウジ王国は、世界の蒸留事業の18%をやっている。もちろん、これまでは、火力発電所の予熱などを利用しているのです。
 しかし、太陽発電で国内の石油消費を抑制すれば、それだけ余分に原油を輸出して、もっとカネを稼ぐことができるわけ。
 2010-2-16の浜松基地の面白リポートは、また別枠にて写真付きでご報告をします。来週までお待ち下さい。