「カラテRobo」ができるんじゃないかという話

 先回紹介した、アフガンの家屋内捜索をする米兵には、今後は「立ち技系」の徒手格闘スキルや、持兇器格闘の心得が必須となる――という報道を読んで、誰もが感ずるであろう素朴な疑問は、「だったら、最初から〈テーザー警棒〉でも用意してけば?」――だろう。
 ところが、これは空想されるほどに簡単な解決法とはならない。
 住民懐柔策として、シチュエーションは、さいしょはあくまで友好的なムードから始めねばならないのだ。いきなりテーザーをバチバチ鳴らしてドアを蹴破って民家に押し入るような真似は、マクリスタルの方針がゆるしてくれない。
 武術の道場で遊んだことのある者ならわかるだろうが、狭いスペースで相手と近接して立っていた場合、どんな良さそうな武器も、不意をつかれて簡単に相手に奪われてしまう可能性があるのだ。まして相手は複数人だ。
 最初から敵対的な家宅捜索をしたいのなら、むしろ着剣小銃を擬して進入する方がマシだろう。米兵が得意とする床尾板打撃を多用するためには、M-4のバットストックはもっと頑丈なデザインに変える必要もあるだろう。
 また、腰の拳銃には、ハサミやナイフでは切断できないワイヤー入りの紐を結んでおく必要も生ずるかもしれない。
 米兵が格闘に備えて簡単に追加できる装備は、あまり多くない。簡単には奪われ難くしかも相手からはそれと視認がし難い「防刃グローブ仕込みメリケンサック」だとか「肘撃ちに使える外板の固いアーム・プロテクター」……ぐらいではないか。
 将来は必ずこの分野にもロボットが投入されるであろう。音響、光学、電気、化学ガス等々、非殺傷系のあらゆる装備を幾重にも纏った、護衛&格闘制圧専用のロボットだ。もちろんキネティックな制圧力も有する。十手や刺股や梯子やトンファーを手にしているかもしれない。あるいは、パンチがバネでボヨヨン……と飛んでくる、そんな過去のマンガが現実になるかもしれない。もちろんその前に、「網」でも発射するのが合理的だろうが……。
 わたしの無人兵器系の講演でよくぶつけられた質問が「その無人兵器を敵が奪ったらどうするんですか?」というご心配だった。みんな、古い『鉄人28号』の心象が強すぎるようだ。
 今日では、高度な無人兵器のシステム立ち上げには各機に固有の暗号が必要なので、操縦インフラ一式を奪わない限り、戦場で鹵獲した無人兵器を即時に自由勝手に逆用することなどできない。報告されている鹵獲ロボットの逆用例は、単純な「爆発物運搬」だけで、それは農業用トラクターをガレージで改造したってさせられるようなミッションにすぎないのだ。
 むしろ、携帯電話や、IEDジャマーの無線電波が、味方のUAVの操縦信号を妨害してとつぜん墜落させてしまうというケースの方が、深刻なようである。