南米沖で「対潜水艦作戦」が17年も進行中。既に50隻以上も沈没か?

 2010-2-24付けでアップされている「The Battle For the East Pacific」という記事。
 エクアドル国境に近い海域で、コロンビアの海軍が、麻薬密輸団の「半潜没式輸送艇」を撃沈した。
 フネは長さ17m、コカイン8トンを積める。
 30人が働く秘密の造船所も発見された。
 2009にはこの種の半没艇を20隻、海と陸で検挙した。
 この種の半潜航艇は17年前に初登場し、いらいコロンビア政府は合計54隻を拿捕してきた。
 ほとんどの場合、ヒュミントにもとづいて網を張って捕える。空からの捜索ではめったに発見はできないのだ。
 コロンビア北岸で、毎年75隻、こいつは建造されているとみられる。
 平均スペックは、乗員4名、積荷7トン(コカイン末端価格で2億ドル)。 1回北米に達したら、そこで捨てる。ワンウェイトリップである。
 麻薬密輸出団は、「1隻+積荷」につき、原価1000万ドルをかけている。
 乗員はコロンビア漁師が多い。その家族は犯罪組織の人質である。
 途中で沈没する危険率は1割。フネは「棺桶」と仇名されている。
 乗員は、もし沿岸警備隊などにつかまったら、自沈弁を抜くように言い含められている。
 そこで取締りのため法律が改められ、沈んだ船から逃げ出してつかまった男も麻薬密輸の現行犯で有罪にできるようになった。
 ボートの運航はほとんど自動化されている。
 密輸の航路は太平洋側である。
 コロンビアからは毎年800トンのコカインが北米に密輸される。その三分の一はこの半没艇が運び込む。いちどに最も多量に運ぶ手段なのだ。
 だが、これまでに半没艇全数の1割弱しか捕えられてはいない。
 典型的なコロンビア麻薬団の半没艇は、幅4m。船体はファイバーグラス製。主機はディーゼル・エンジン。
 上甲板とちっちゃな「覘き窓付き塔」だけが波の上に出る。この塔からエンジンと乗員に対して新鮮な空気が供給される。
 商用潜水艦が1000万ドルで市販されているが、その建造と販売は法律で規制されており、ギャング団はそんなお役所相手のペーパーワークに興味などない。
 ギャング団の半没艇は、建造原価はだいたい1隻につき70万ドル以上だ。最大でコカイン10トンを運ぶサイズ。造船所は、太平洋に注ぐ川の上流に秘匿されている。
 1航海はだいたい1000kmの旅になる。速度は15~25km/時である。
 しかもひるまは極度に減速するので、平均して到着までに2週間かかる。減速しないと、ウェイクが生ずるので、それが米国沿岸警備隊の航空機のセンサーに探知されてしまうのだ。※このセンサーとはレーダーではないようだ。なぜならレーダーならば昼も夜も関係はあるまい。
 初期には、この半没艇を、大型汽船が曳航して長距離を運んだ。そしてカリフォルニア沖で曳索を外した。この方式は、コロンビア=北米航路では廃れているものの、スペイン沖やスリランカ沖では現存。
 最近は排気ガスを冷却する装置がついているので赤外線でも発見しにくいといわれる。
 次。
 「North Korea Foiled Again  Democratic Republic of the Congo (formerly Zaire)」という2010-2-24のニュース。
 北鮮→シナ→マレーシア→コンゴのルートでT-55のパーツを密輸出しようとした船が3ヶ月前に南アにとっつかまっていた。
 コンゴへの武器輸出は国連が禁じている。マレーシアは今やこの種の密輸の基地と化している。
 次。
 『ポピュラー・サイエンス』のウェブ版2010-2-23に Eric Hagerman 記者が寄稿している「The Present and Future of Unmanned Drone Aircraft: An Illustrated Field Guide」は面白い。
 UAVにこれまで関心がなく、しかし、急にてっとり早くその全体イメージを把握したいんだという人には、とても親切なビジュアル事典となっている。
 現役および開発中の代表的UAV×30機種が写真付きでズラリと解説されている。
 ひとむかし前までなら、このくらい要領よくまとめてあってしかも面白い英文記事は、ほぼそっくり無断で翻訳をされて、趣味系の雑誌に日本文の記事として載ったかもしれない。しかしいまは欧文ソースに目を光らせている人も増えたので、そんな海賊原稿は商業雑誌には掲載できないだろう。
 防衛省およびメーカーの人で、これからUAV予算をとるためにプレゼンをしなければならない人は、この記事を保存しておくとよいでしょう。いかに日本が遅れてしまっているか、よく伝わってきます。
 おまけ。
 サーブ社のCEOに対するインタビュー記事。2010-2-21付『ディフェンス・ニューズ』。
 ブラジルとインドがグリペンを買ってくれなくとも、政府はこんご30年、グリペンを使うことにしているから大丈夫。
 グリペンと同サイズのUAVも開発中。そのデモ機は3年以内に飛ばすであろう。
 無人ヘリの「スケルダー」は、操縦はPCでOK。
 欧州合同で無人潜航艇もつくる。海底油田開発にだって無人潜航艇は必要になるのだ。
 UAVが大成するかどうかは、sense-and-avoid technology 次第。さもなければ有人機と空域を分けるしかないのだから。