「読書余論」 2010年12月25日配信号 の 内容予告

▼国際事情研究會・眞隅伴雄ed.『日蘇戦争は何時始まるか?』S12-5
 ある人からプレゼントされるまで、わたしはこの古書の存在すら知らなかった。稀覯本にして、目から鱗が落ちる快著。
▼三根生久大『戦略――アメリカはアジアを見捨てたか』1975-11
 「抑止」の概念がどのように戦後の米軍に導入され定着したかを学びたい学徒にとり、本書は必読である。
▼マイケル・アームストロング著、宮崎正弘tr.『’86年 日本は核武装する』1981-9。
 この著者は実在しない。イザヤ・ベンダサンの成功にあやかろうと、この変名IDで書いてしまった初期の数冊は、宮崎氏の黒歴史かもしれない。もしも本名で書いていたなら、今頃どのくらい胸を張ることができていたか分からない。
▼エドワード・N・Luttwak著、川島・稲葉共訳『米国海軍戦略――海洋力の政治的利用』S54、原1974“The Political Uses of Sea Power”
▼田辺英蔵『統率のパラドックス――闘争とヒューマニズムの挾間』1983
 旧海軍の「次室士官心得」を紹介する。米海軍のマニュアルと対比して。
▼篠崎孝子『相模湾上陸作戦』H7-12、有隣堂新書
 繆斌はホンモノだったのに、外務省が潰してしまった。神奈川と静岡の海岸に、28cm榴弾砲を据え付けた。1952に中共軍が日本本土を占領した場合、米軍は茅ヶ崎に再上陸して奪回するつもりで研究と演習を重ねていた。
▼『「昭和軍事秘話」――同台クラブ講演集 上巻』S62-12
 タイトルに芸がなさすぎて看過されているのだが、陸軍の機甲兵器がなぜダメだったかを考え度い者には、必読の好資料だ。
▼『大蔵省印刷局百年史 資料編』S49
 下瀬火薬の発明者はじつは大蔵省の技手であった。
▼『七十五年の歩み――大日本印刷株式會社史』S27、非売品
 アンチモニー導入史は、国産鉛弾の硬化時期と関係する。
▼松村黄次郎『撃墜』S17-3
 ノモンハンの航空戦事情。
▼ゼークト著、斉藤栄治tr.『モルトケ』S18-1
▼服部敏良『奈良時代医学の研究』S20-7
▼高貫布士『旅順大砲撃戦』1998
 海軍の陸戦重砲隊に注目した、半分ノンフィクション。
▼佐々木達治郎『岩波全書 14 航空計器』S8-12
▼河村清『満州の河川の話』康徳6年4月pub.
▼城戸久『城と要塞』S18-5
▼綱淵兼錠『史談・往く人来る人』1987文春文庫
 元中公の編集者が、人肉食事件を機に、古い人肉食事情の薀蓄を傾けた。
▼『第2期 現代漫画 (11)』筑摩書房1970-12
 ロボット三等兵の作者は、原田三夫の息子で、ビルマ戦線の脱走兵であった。
▼新村出『船舶史考』S18-2repr. 原S2
 「マル」はポルトガル語のメールなのだろうか?
▼木俣滋郎『帝国陸軍兵器考』S49-5
 前年に韓国から60式自走無反動砲等を買いたいというオファーがあり、武器輸出が解禁されるのではないかというタイミングで、吉川弘文館からの刊。ところが「ガムを咬みながら米兵が…」の木俣節炸裂で歴史研究書の体裁を相当逸脱。
▼川合康『源平合戦の虚像を剥ぐ』1996-4
▼犬飼哲夫『北の風土と動物』S18-7
 爆薬「口発破」によるキツネ猟につき。
▼土申昇『日本航空輸送史 輸送機篇(1)』H4
 海軍もディーゼル飛行艇をつくろうとしていた。
▼竹内富子『現代の技術』S15
 なぜスウェーデン鋼に価値があったか。製鋼法が発明されると資源の価値も見直されること。
▼アルフレッド・ハッドン著、植木謙芝tr.『呪法と呪物崇拝』S2、原1910
 爪の垢……は、じつは南方の呪術であった。
▼小田切信夫『国歌君が代講話』S4-8
 もともと「よ」とは寿命のことだった。
▼真樹日佐夫『兄貴』2000、原1997
 『荒野に一騎咆ゆ』を改筆したもの。
▼『撰名講話』S10
 弥太郎とか又二郎とか、いちいち厳密な意味があるのだ。
▼徳田浩淳『国民常識 名づけ心得』S17-7
 皇族と同じ名前をつけてはいけない。
▼北里 闌『日本古代語と国民精神』
▼『奈良平安時代論集 下巻』S59所収、笹山晴生「左右近衛上級官人の構成とその推移」
 大将とか中将とかの歴史。
▼円谷勝『強健への道』S19-4
 玄米をいかに調理して生きのびるか。
▼『岩波講座 倫理学 第八冊』S16-9所収、金倉圓照「印度の倫理」
▼駒林&松浦『航空機沿革史』S18-10repe. 原S17-5、
▼釋悟庵『禅と武士道』M40-9
▼血達磨・著『風塵録』M36-2
▼遠藤早泉『東国及東国精神』S19-3
▼小川菊松『猟犬銃猟射撃事典(増補改訂版)』S35
▼圭室諦成[たまむろたいじょう]『西南戦争』S33
▼『日露戦争統計集 12』
▼荒木貞夫ed.『元帥上原勇作傳』上・下 S12年10月
 ※古書で買えば数万円する資料です。その要点は……。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
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