日本の原発としては「アメリカ型軽水炉」は、ふさわしくなかった。

 日本には原発は必要である。ただし、基本的に「アメリカ型」である「軽水炉」は、島国には向かないともうハッキリしたので、再建新日本の新原発は、海水にも海浜立地にも依拠しない、「ガス減速・ガス冷却・ガス駆動タービン」の型式に切り替えて、再出発を図らねばなるまい。
 ABWR(改良型沸騰型原子炉)は、大間原発の竣工をもっておしまいにするべきだろう。
 旧来のアメリカ式軽水炉の専門技師は、米国に移民してGEかウェスティングハウスの社員となってもらうのが良いだろう。
 じつは日本で最初に導入した東海村の一号炉(いまは廃炉)が、英国型(コールダーホール型)の「ガス減速・ガス冷却・蒸気駆動タービン」の型式であった。
 が、しかし、「それはプルトニウムを取り出しやすい(核武装の道具になりやすい)」というイチャモンがアメリカからつけられて、そのご、「軽水炉」などという、まったく地震国や島国にはふさわしくない方式が押し付けられた。
 軽水炉は、プルトニウムを取り出しにくいので核武装の道具とはなりにくい。が、そのかわり、地震や津波やテロや敵国からの攻撃には、根本的に脆弱だったのである。
 島国や地震国で陸上軽水炉が脆弱となる理由は単純で、水はガスより重いためだ。どんな圧力容器も敵軍に爆弾をヒットされたらヒビくらい入る。まして二次冷却系の取水システムを大地震や津波のパワーから防護し切れるわけはないのである。そこから水が下へ洩れてしまう。
 圧力容器内の軽水も、二次冷却系の海水も、予備の冷却水を貯えるタンクも、それが海抜0mより高い基礎の上に存在するならば、重力によって、破孔から漏出してしまうことがあり得る。あり得ることは、起こり得るわけだ。
 これがたとえば、加圧水型原子炉を海面以下の水中に置くスタイル(すなわち原潜のエンジンに他ならない)だったならば、最後の手段として一次冷却系に海水を導入する弁を設けておきさえすれば、それを手動で開くだけで、軽水が炉心に殺到するから、炉心融解は起きない。電力も、ディーゼル動力も、ポンプもいらぬ。弁を開くだけだ。
 だから今後、この「原潜方式」の沖合い海中発電所を考えるという手もあるのだが、もっと早く、たくさん整備ができるのは、やはり、内陸に分散的に新設する「ガス減速・ガス冷却・ガス駆動タービン」の型式であろう。詳しくは小著『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』を読んで欲しい。
 規模はもちろん今までよりもずっと小さくして、多数分散するのがいい。発電所の規模を大きくして場所を集約するのは、地震国の日本では、国家安全保障に反するのだ。それは理論的可能性であったものだが、今次の震災以後は、現実の実例である。誰も机上反論はできない。
 日本政府と議会が急いで決心すべきこと。HVDC(高圧直流)による全国網羅の融通送電線を、先づは鹿児島の川内原発から太平洋経由で東京まで1系と、北海道の泊村から日本海経由、新潟新幹線併走で東京まで1系と、つごう2系、敷設すること。これは新規原発計画の100倍早く、東京の電力不足を解消してくれるだろう。
 アフリカでは1700kmのHVDC送電線があるといわれ、シナでは2000kmのHVDC送電線が建設中である。札幌から福岡までの直線距離は1420kmにすぎず、それぞれ東京までなら約半分。ほぼ海底ケーブルなので十分にフィージブルである。
 第二日本海系として、玄海~島根~敦賀を海底ケーブルで串刺しして、そこから陸路、塩尻経由で東京にHVDC送電できる系も、続けて着工すべし。こちらは陸路部が長いだけに、少し手間はかかるだろう。
 天災も人災も、理性を働かせれば、事前に「最悪の事態」を想像することはできる。
 遠い昔、チグリス河とユーフラテス河にはさまれた一帯で畑を耕そうとした者は、地形によっては冠水のリスクを覚悟していた。ある村では、大洪水に備え、救命ボートを常備した。家畜を乗せる大型の筏まで製作された。他の土地の者が見て、無駄な投資だと冷笑した。ある年、チグリス河の源頭山地に、かつてない激しい雨が降った……。
 これが、古代メソポタミアの伝承である「ノアの箱舟」の原話の背景なのだろう。
 日本でも、渡良瀬川と利根川の合流点附近(今の群馬県板倉町や埼玉県北川辺町)の低地の農家は、江戸時代より今に至るまで、軒に舟艇を吊るしておき、突発的な河水氾濫にも慌てぬよう、常日頃から備えを怠らないでいるという。
 今回の大震災の前から、AC電源が長期間使用できない非常時をいろいろと想像して、「自然通気式・開放式」の石油ストーブをじぶんの家庭に1個以上確保しておいたり、やはり同じ理由から、ダイヤル式の固定電話機をわざわざ予備用に買っておいた人も、いることであろう。そうした危機想像力の働く人ならば、如上のわたしの説明が腑に落ちてくれるはずだ。
 屋根式ソーラーパネルは、災害時には家ごと壊れてしまって頼りにならなかった。だが、独立式のソーラー・ライトは頼りになる。
 「災害時ヘリ取材制限法」をすぐ通そう。成立までは「勅令」で。
 1995年の阪神淡路大震災から16年経つのに、あいかわらず、大災害が発生して人命救助や行方不明者の捜索が進行中の現場の上空を、報道大手各社の旧式の有人ヘリコプターが乱舞しては、その耳障りなパルス状の騒音によって、地表と半地下におけるかすかな肉声の聴取・伝送を、いちじるしく妨げているようだ。彼ら報道ヘリは、ときには自衛隊や消防等の救難航空機の活動を空中で邪魔することもある。
 「災害時ヘリ取材制限法」(仮称)を早急につくるべきである。
 マスコミは、上空からの映像取材がしたくば、外国製の固定翼無人機を買って飛ばせ。それらなら、数百mの高度でも、そこから地上に到達する騒音はほとんどなく、さらに高度を上げれば、有人救難ヘリの活動を邪魔することもない。
 この緊急法案には新聞社とテレビ局が総力で抵抗するに決まっているので、雑誌かネットが主導するしかなかろう。
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