「読書余論」 2011年4月25日配信号 の 内容予告

▼伊藤仁太郎『伊藤痴遊全集 続 第六巻』S6
 山縣有朋の帰依者ではなかった同時代人による講談体の伝記資料。貴重であり必読。S6頃は、反長閥の気運が参本内に強かった頃だが、山縣は貶なされていない。痴遊は「試験エリート」の官僚が大嫌いだったのだと察せられる。
▼藁谷勇三郎『剣術道具ノ手入保存法』M45、戸山学校pub.
▼美濃部俊吉ed.『西湖 曾禰子爵 遺稿 竝 伝記資料』大2-11
▼江森泰吉『旅順攻略 海軍陸戦重砲隊』
 黒井悌次郎による、ロシア艦砲の仮製信管についての証言などあり、貴重。
▼ハンス・デルブリュック著、山中謙二tr.「羅馬の盛衰と軍隊」(興亡史論刊行会編『史論叢録・前』大8所収)
 WWIの直前にロンドン大で講演した話。古代戦記の中の「数字」に着目する。
▼東京物理学校雑誌・第六百号別刷「宋の陳規の守城録と投石機の間接射撃」/三上義夫、S16-11
▼Prof.Dr. H.Arntz 編、牧信tr.『今日のドイツ シリーズ 第2版 5・防衛』(在日ドイツ大使館よりS43-10-18寄贈)
▼坂口楯雄『現代の科学戦』S12-12
▼橘純一ed.『橘守部全集第六』「蒙古諸軍記弁疑」大9
▼原田二郎『戦闘神技 戦術の常識』S18-12
▼ドイツ海軍軍令部ed.、軍令部tr.『潜水艦通商破壊戦史』3巻、原1914~1918
▼ブラッドリー・I・フィスク著、松宮春一郎tr.「海軍力の権威」(大類伸ed.『史論叢録 下』大7-9所収)
▼黒沢文貴『大戦間期の日本陸軍』2000-2
▼小林康雄『ソ連航空作戦史』1979
 著者は防研の戦史部員。なぜ「イリューシン2」は対独戦中にのみ活躍できたのか、等が分かる。
▼S・I・ルデンコ著、小林tr.『大祖国戦争中のソ連空軍』S51、原1977
▼渋江 保(羽化)『英国革命戦史』M29-2
 リボリューションとシヴィルウォーの違いとは何か。
▼防研史料『飛行集団作戦準備 並ニ開戦劈頭ニ於ケル用法ノ研究』S14-1
 対ソ開戦計画のおどろくべきアイディアの数々。
▼防研史料『満州上海事変ニ於ケル航空部隊所見集』S8-6-24陸軍航本
▼バーナム・フィニイ著、吉田哲次郎tr.『米国国防計画の全貌』S16-12-1
 「死の商人」のレッテル貼りが、戦間期の米国メーカーを武装解除させたのだ。
▼トビン&ビッドウェル著、原田禎正tr.『アメリカ総動員計画』S16-7、原S15-4
▼大戸喜一郎『若鷲とふる里』S19-9
 ハワイ散華の甲種予科練出身兵たち。
▼小野隆太郎『護謨印画法』S7-11小西六本店pub.
▼高橋九郎『ゴム工業』S18-1
 マッキントッシュは防水布の代名詞だった。
▼宮川一郎「最近に於ける合成ゴムの研究問題」(S17-8『応用有機化学最近の諸問題 第2輯』所収)
▼小出武城『ゴム・ゴム製品読本』1974
▼南方経営調査会ゴム専門委員会『ゴム資源を圜る敵戦時経済の動揺』S18-7
 ソロモン方面で鹵獲B-17の防弾内張りをゴムの専門家が調査した。
▼森山藤吉郎『合成ゴム』S14-6
 本書以前に日本語の合成ゴムの教科書はなかったという。
▼八尾坂 正雄『昭和金融政策史』S18-3
▼伏見韶望『趣味 常識 俚諺と世相』S15-2
▼棗田藤吉『外国為替講話』S7-4
▼森賢吾『国際金融』S5〔?〕
 震災公債を米国で売ったときの話。
▼中村古峡『迷信に陥るまで――擬似宗教の心理学的批判』S11-8
 大本教など新興宗教の背景。ソ連爆撃機の東京空襲があり得るようになって、日本の破滅という空想にリアリティが生じていたのだ。
▼ミシェル・ヴィレー著、田中・赤井tr.『ローマ法』1955クセジュ
 なんとこの訳書の前には、日本語でローマ法について解説したものはないという。それじゃ戦争に負けちまうわけさ。
▼柴田光蔵『ローマ法の基礎知識』S48
 「何人も思考のために罰を受けない」という法諺は、西洋には3世紀からあった。
▼『黄檗山萬福全寺』フォトガイド、H9
 日本の禅宗の古い2つが停滞していたので、明朝からシナ語のまま直輸入したこいつが第三の教派として江戸初期に流行った。
▼阿倍理恵『禅の寺』1996
 隠元は、日本の仏像の姿形は変、とか批判していたので、幕府の要監視対象であった。
▼竹貫元勝「黄檗宗教団の形成と展開」(『禅と日本文化』1999所収)
 隠元はそもそも徳川幕府に鄭成功を支援させるための、アンチ清朝派の工作員だったのだという。
▼小島精一『世界経済の常識』S15-12
 資本主義陰謀論を科学的に解説する。
▼市村光恵『国家及国民論』大3-7
 旧幕時代、橋はひとつひとつ形を変えて風致としたものである。
▼ルドルフ・イェーリング著、日沖憲郎tr.『権利のための闘争』イワブンS6、原1925
 ローマの十二表によると、ローマでは債権者が債務者を寸断する権利まで認めていた時期があった。シェークスピアはそれを読んでいたのでシャイロックのキャラを思いついた。日常の戦いを停止すれば、自由は必ず失なわれる。
▼ドヲパルム著、和田順吉tr.『訓蒙勧懲雑話』M8-1、原1872
▼ボンヌ著、箕作麟祥tr.『泰西勧善訓蒙』M4、原1867
 小学生に立憲主義の憲法学をひととおり教えているフランスの教科書。
▼渡辺正雄ed.『アメリカ文学における科学思想』S49
▼高瀬武次郎『陽明主義の修養』大7-1
▼福田徳三『流通経済講話』大14-5
▼預金部資金局『大蔵省預金部の話』S14-5
 大蔵省は郵便貯金を駆使して自作農を創設維持させようというグランドデザインを支那事変中から描いていた。
▼松好貞夫『金持ち大名 貧乏大名』S39
▼波多越 薫『建築礼式大全』S5-2
▼大日本産業報国会ed.『戦時工場管理』S19-1
 労働「マネージメント」の和訳が「管理」。日本流の統制経済では、釘とかセメントとか、工場改築に必要な基礎資材が手に入らなくなってしまう。
▼朝日新聞社経済部『国際資本戦』大14-5
 関東大震災のとき、ナショナルシティー銀行が1億ドルくらい貸してやろうと井上蔵相に言ってきたのに、高慢な井上がそのチャンスをみすみす逃した。
▼土田杏村『島国家としての日本の将来』大13-7
▼鈴木茂三郎『日本財閥論』S9-9
 「南部銃製作所」は「大倉財閥」傘下だ。
▼金子白夢「旧約外典」(『日本宗教大講座(9)』所収)
▼エ・タルレ教授著、昇曙夢tr.『奈翁モスクワ敗退記』S14-3
 おびただしい捕虜殺しが、この戦争ではあった。斬首であったという。これを昭和14年に訳刊させているのは、S15に対ソ開戦予定だったからである。
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