「読書余論」 2014年11月25日配信号 の 内容予告

▼Louis Bruchiss著『AIRCRAFT ARMAMENT』1945, NY
 この本の時点では対戦艦用のAP爆弾の存在そのものが秘密にされていることが推定できる。
▼B.Cooper著『The Story of the Bomber 1914-1945』 1974pub.
 米国がWWII末期に日本の『大和』級戦艦に対して使った投下爆弾のうち、AP/セミAP爆弾のスペックは今でも「軍機」のようだ。特殊な対艦ミサイル、たとえば米空母の原子炉隔壁をぶちやぶれる弾頭の設計に使えてしまうからなのかもしれない。
▼平山黄巌ed.『古今兵学 和魂之友』M33-11
 前半にM30版の陸軍マニュアルを載せ、後半に、七書などを併載したもの。赤十字条約も教えている。
▼早川純三郎『武術叢書』大4-5、非売品、国書刊行会pub.
 正徳年間に書かれた「本朝武芸小伝」には、鎖鎌は見えない。
▼瀧川喜祐『露国軍隊 服装武装写真帖』M37-2
 戦場写真ではない。ロシアの写真帖をコピーしたらしい。
▼日佐友香ed.『闘ふ戦車』朝日新聞社S14-2
 鹵獲した青天白日マーク入りのルノーFTの写真が超めずらしい。
▼野寺哲二郎『趣味の絵科学 タンクと自動車』S6-11
 木炭自動車をわが国陸軍が「盛んに」使用している、とあり。
▼戸伏太兵『日本武芸達人伝』S30
▼東京市役所『航空港建設の基本問題』S14-3
▼内田胤彦『兵学初歩』M28-1
 操典・教範・要務令を、師範学校と旧制中学生徒に教えようというもの。
▼螢谷衛『兵法虎之巻 評釈』M29-9
 密教系 山伏系の軍陣呪法を集めた珍資料である。
▼佐伯有義[ありよし]ed.『武士道全書 第十二巻』S18-7
▼大平喜間多『海防の先覚者 真田幸貫伝』S19-5
▼内務事務官・秋山進『米国統治時代の比島の警察制度』S23-2
 なぜ参考になるか。この時代、比島には国軍なく、警察が、治安の最後のバックストップであった。警察予備隊のための研究資料のようだ。
▼岩附一雄『犯罪手口の研究』S23
▼松井茂『警察の根本問題』大13
▼田村豊『警察史研究』S7
▼木村行蔵『正しきを索めて』S26
 S23~24の千葉県で、拳銃利用の強盗殺人(未遂含む)は61件もあった。
▼政界ジープ編集部・中西清ed.『United States Strategic Bombing Survey 太平洋戦争始末記』S25-5-20pub. ¥20-
▼航空自衛隊幹部学校『空幹校教資 5-2-16-94A 米国戦略爆撃調査団報告 日本人の士気に対する戦略爆撃の影響(その1)』S34-3
▼『空幹校教資5-2-26-77 部外秘 日本陸海軍情報』S33-11
 日本は写真偵察をたった14回(サイパン4回、沖縄10回)しかしてない。
 陸軍18人、海軍30人が、写真偵察担当のすべてだった。
▼空幹校教資5-2-26-198「総括報告(ヨーロッパ戦争)」
 Summary Report European War
 訳S36-7、国37-6-20。
 全38ページ。
▼『長崎被爆50周年記念 米国戦略爆撃調査報告書』上下 H8-3-25
 和訳の上巻には、USSBSパシフィック 第3巻、第5巻、第13巻、第59巻を訳出。下巻では、第93以降を完訳する。これで長崎市関係の文書すべて網羅される。
▼国会図書館・憲政資料室所蔵マイクロフィルムCPD-1 『Captured Japanese Ships’ Plans and Design Data 1932-45』(押収された日本船舶設計図及び図面)
 二等輸送艦=LSTや、タグボートまで網羅。内火艇=Motor Boats 全タイプ。
▼空襲・戦災記念館をつくる会「米国戦略爆撃調査団資料」他
 1976に渡米して検索し、日本関係のものだけマイクロにして持ち帰った。
▼日本図書センター『米国戦略爆撃調査団 太平洋戦争白書 第1巻』
 Office of the Chairman 本部報告
  ※これは Final Reports, 1945-47 のうち、マイクロのロール18から25。
 USSBSは、報告書316巻(325冊)からなる。
 うち、太平洋は、全108巻(109冊)、1万5000ページである。
USSBSは、「団長」の下に「団長室」(本部)、「民事局」、「経済局」、「軍事局」、「軍事顧問部」(G-2情報部)、「編集局」が横並ぶ。
 団長室は 全〔108〕巻のうちの〔1〕~〔3〕巻担当。そのうち〔1〕〔2〕巻は、みすず『現代史資料』「太平洋戦争5」で1975に訳出された。
 民事局は、民間防衛〔4〕~〔11〕、医療部〔12〕〔13〕、戦意部〔14〕を担当。
 経済局は、航空機部〔15〕~〔35〕、基礎資材部〔36〕、資本財・設備・建設部〔37〕~〔39〕、電力部〔40〕〔41〕、労働力・食料・民需部〔42〕、軍需工業部〔43〕~〔48〕、石油化学部〔49〕~〔52〕、全般的経済効果部〔53〕、運輸部〔54〕、都市地域部〔55〕~〔60〕を担当。そのうち〔15〕〔43〕〔46〕〔48〕〔54〕の一部および〔66〕の抄は、みすず『現代史資料』「太平洋戦争5」で1975に訳出。また〔51〕〔52〕は、石油評論社が1986に訳刊。また〔53〕は日本評論社が1950に訳刊している。
 軍事局は、陸軍分析部〔61〕~〔71〕〔71a〕(※bは無い)、海軍分析部〔72〕~〔89〕(※政治家訊問多し)、物資的損害部〔90〕~〔96〕を担当。
 軍事顧問部は、写真分析として〔97〕~〔108〕を担当。
 編集局の下には、「編集部」「原稿作成部」「写真部」とあり。
 〔1〕総括 of Pacific、〔2〕終戦に向けての日本の策、〔3〕広島と長崎に対する原子爆弾の効果、〔4〕東京防空、〔5〕長崎防空、〔6〕京都防空、〔7〕神戸防空、〔8〕大阪防空、〔9〕広島防空、〔10〕防空の総括、〔11〕防空 Final Report、〔12〕保健・医療施設への効果、〔13〕同・ただし広島と長崎、〔14〕戦意への爆撃効果、〔15〕航空工業、〔16〕三菱の飛行機工場、〔17〕中島の工場、〔18〕川西の工場、〔19〕川崎の飛行機工場、〔20〕愛知、〔21〕住友金属(プロペラ生産)、〔22〕日立の飛行機工場、〔23〕日本国際航空、〔24〕日本楽器(プロペラ製造)、〔25〕立川、〔26〕富士飛行機、〔27〕昭和飛行機、〔28〕石川島航空工業、〔29〕日本飛行機、〔30〕九州飛行機、〔31〕正田製作所、〔32〕三鷹航空工業、〔33〕日産自動車、〔34〕陸海の空廠、〔35〕地下工場、〔36〕石炭と金属、〔37〕建設業、〔38〕電気施設、〔39〕日本の機械製造工業、〔40〕電力、〔41〕同・工場調査、〔42〕生活と労働力、〔43〕軍需工業、〔44〕海軍兵器、〔45〕陸軍兵器、〔46〕造艦、〔47〕自動車、〔48〕造船、〔49〕ケミカル、〔50〕同・付録、〔51〕石油、〔52〕同、〔53〕経済に対する空襲の効果、〔54〕輸送に対する空襲の効果、〔55〕都市に対する空襲総括、〔56〕京浜に対する効果、〔57〕名古屋に対する効果、〔58〕大阪・神戸・京都に対する効果、〔59〕長崎に対する効果、〔60〕広島に対する効果、〔61〕米国以外の空軍、〔62〕日本の空軍、〔63〕日本の航空兵器と戦術、〔64〕地上軍への航空攻撃効果、〔65〕南西太平洋方面部隊、〔66〕B-29による第二十空軍作戦、〔67〕シナ・ビルマ・インドでの航空作戦、〔68〕航空輸送、〔69〕第十三空軍、〔70〕第七&第十一空軍、〔71〕第五空軍、〔71a〕太平洋戦争における航空戦、〔72〕日本官吏にたいする訊問、〔73〕太平洋諸作戦、〔74〕ウェーク島の陥落、〔75〕対ラバウル、〔76〕ウォッゼ~マロエラップ~ミレ~ヤルート、〔77〕トラックの陥落、〔78〕対日航空機雷撒布作戦、〔79〕一九四五年の艦砲射撃、〔80〕同分析・釜石7/14および8/9、〔81〕浜松7/29および7/30、〔82〕日立市7/17および7/18、〔83〕函館7/14および7/15、〔84〕室蘭7/15、〔85〕清水市7/31、〔86〕潮ノ岬7/24~7/25艦砲射撃と野島崎7/18~7/19、〔87〕艦砲射撃の精度、〔88〕同、〔89〕艦砲射撃の効果、〔90〕焼夷弾の効果、〔91〕一万ポンド爆弾の効果、〔92〕広島に対する原爆の効果、〔93〕長崎に対する原爆の効果、〔94〕四千ポンド爆弾の効果5例、〔95〕二千ポンド爆弾~一千ポンド爆弾~五百ポンド爆弾の効果9例、〔96〕日本の物質的損害に関する総括、〔97〕日本陸海軍の情報機関、〔98〕本土写真情報 綜合報告、〔99〕本土飛行場写真集、〔100〕爆撃地点の算定、〔101〕都市の写真、〔102〕偽装の写真、〔103〕船舶の写真、〔104〕エレクトロニクス、〔105〕海岸、〔106〕海岸砲台とAA、〔107〕道路と鉄道、〔108〕産業分析。
 以上、国会図書館の〔GB531/A70〕で請求できる。United States Strategic Bombing Survey 全50巻に、山田朗の日本語解説が1巻付属。版元は日本図書センター、1992刊。邦題は「米国戦略爆撃調査団太平洋戦争白書」。
▼『海軍 第10巻 潜水艦 潜水母艦 敷設艦 砲艦』S56 後半
 末次中佐はドイツから何を導入したか。
 WWIにおいて、主力艦数が劣勢のドイツ海軍は、潜水艦隊を対水上艦隊攻撃に指向した。それによって英水上艦隊をまず戦力的に漸減させ、そののち水上艦隊同士で決戦しようという皮算用。
 これを欧州で見ていた末次は、大12-12-1に少将に昇任すると同時にみずからすすんで一潜戦司令官に転出した。
 末次の考え。潜水艦戦術のような、何か新しい試みをしようとすると、「素人は困る」といって反対する者が組織では大多数である。しかし、いわゆる専門家よりも、切実なる用兵上の要求にもとづいた素人の常識のほうが確かなことがある。ようするに専門馬鹿には国家の切実な要求が二の次になるのである。不動の信念、十分に部下を納得せしむる異常の根気、そして果断決行がなければ、改革なんてできるわけがあるか。
 末次らが計算したところ、米艦隊の監視には三直交代が必要である。一直は三個潜戦。一個潜戦は旗艦+3個潜水隊=10隻。したがって、総計90隻の大型潜水艦を新造する必要がある。ロンドン条約でこれをオジャンにされたので海軍は怒った。
 演習をくりかえして分かったこと。潜水艦で警戒厳重な敵の港を見張ったり、敵艦隊を尾行するのは無理。まして敵の前程には出られない。S14には、もう潜水艦でなくて飛行機に手段をきりかえなければならんとみんな分かっていた。
 水雷学校における戦訓調査会に技術者(造兵将校と技師)の列席が認められず(艦政本部が認めず)、酸素魚雷の欠点修正は滞った。
 日本の潜水艦隊は散開線の移動が頻繁すぎた。ワスプを撃沈した潜水艦は、その移動命令を受信しなかったので、艦長のイニシアチブでうまく会敵できたのである。
 大6-6に「潜水艦定員二倍制度」。
 1号機雷は「軍機」だったので艦長の許可がないと誰もマニュアルすら読めず、現物をたまたま目撃しても名前が分からぬという機雷専門家も多かったほど。一度も実戦で使われずに終わった。日本海海戦でも使用されず。
 日本軍はWWII中に5万5000個の機雷を仕掛けた。ただし、飛行機から撒いたものはひとつもなし。
 『厳島』は開戦直後に、サンベルナルジノ海峡(ルソン島とサマール島の間で、最狭部10浬、水深は60m~150m)に機雷敷設。『八重山』は、スリガオ海峡(レイテ島とミンダナオ島の間で最狭部。水深はサンベルナルジノと等しい)に機雷敷設。
 日没までに敷設海域の100浬以内に近接する。そして夜のうちに敷設し、夜明け前に離脱する。
 病院船に改造しても、備砲を残し、海軍将校が指揮官であれば、いくら赤十字旗を掲げていても、軍艦とみなし、戦利艦として接収できる。
 初代『隅田』は吃水わずかに60cm。
 揚子江砲艦の吃水は1m20cmくらいであった。
▼雑誌『工藝記事』からの抜書き
 ※国会図書館に〔雑49/10〕で所蔵されている昭和前期以前の定期刊行物。発行元は東京砲兵工廠。第1輯はM40-11刊で、所蔵最終の第89輯は大11-12刊。工廠の改編とともに廃刊か。
 大11-11月号の時点でも26年式拳銃の製造法の改善研究がなされている。
▼三宅宅司『日本の技術・8』1989
 大阪砲兵工廠の研究である。
▼福島太郎右衛門ed.『遠きビルマよ』S46
 歩兵第16聯隊 第1機関銃中隊(越林隊)の記録。
▼参謀本部ed.『各国兵事摘要』 
 ※国会図書館にはM26の第53号から、M27の第86号まで所蔵されている。1巻は3号からなる。請求記号〔雑32/15〕。内容は、欧米の軍事雑誌の記事の転訳である。
▼『兵学研究会記事』
 ※S17年に刊行された分が国会図書館に所蔵されている。請求記号〔雑32/56〕。創刊は大4。陸大候補者向けの、戦術問題集。白紙戦術。
▼Georg Markham著『Japanese Infantry Weapons of World War Two』Arms & Armour Press, London 初版1976、全96頁。
 ※この本の情報は盲信すべからず。しかし貴重な指摘もある。
▼雑誌『地理』1995-8月号
 旧軍の飛行場が今の空港になっているケースを紹介。
▼高橋誠『空港概論』H5
▼『東京空港工事事務所 30年誌――空港づくり・人と技術の歴史』H7-5
▼関川栄一郎『空港と安全――問題点と事故例について』1980-4
 バードストライクは、群、渡りを吸い込むのが危ない。単体ならまずOK。
▼平井磨磋夫『新体系土木工学69 空港』1984
▼『水交社記事 第64号』M29-1
▼『水交社記事 第91号』M31-5-30
▼『水交社記事 第92号』M31-6-30
▼『水交社記事 第97号』M31-11-30
▼『水交社記事 第99号』M32-1-?
▼『水交社記事 第110号』M32-12-31
▼『水交社記事 第117号』M33-7-31
▼『水交社記事 第126号』M34-5-4
▼『水交社記事 第61号』M28-9-?
▼『水交社記事 第62号』M28-10
▼『水交社記事 第63号』M28-12
▼『偕行社記事 No.30』M23-2
 第一師団「村田銃侵徹力試験ノ始末」
▼『偕行社記事 No.31』M23-2
▼『偕行社記事 No.34』M23-4
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
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