「さつちゃん」

 Jacob Bogage 記者による2015-8-8記事「Beretta’s fight to arm the military」。
 米軍用のベレッタM9拳銃はメリーランド州のアッコキークという町で製造されている。
 しかし米軍は、このM9にかえて、新拳銃を選ぼうとしている。それは2017年からの採用となるので「XM17」と仮称される。※採用されれば「X」がとれて「M17」と呼ばれるわけか。
 過去40年間、アッコキークの街ではM9工場のおかげで100人以上が雇用されていた。しかし米軍の次期制式が別メーカーのものになると、民間市場での売買規制強化もあり、相当人数は解雇されるだろう。
 次期米軍制式拳銃の契約総額は、5億8000万ドル。これを、いままでは軍への納入では後れをとっていたグロック社やスターム・ルーガー社と競わねばならない。
 老舗のコルト社はこの夏、破産会社となった。同社が左前になるきっかけも、70年間軍に納入してきたM1911(コルト.45オート)拳銃が軍制式の座を1985にベレッタM9に奪われた時だった。
 1985年にM9を軍へ納入するようになる前、アッコキーク工場の従業員は50人だった。いまは160人いる。
 しかしイタリアにある親会社のベレッタ社は、メリーランド州の銃規制が厳しいというので、工場そのものをテネシー州のガラティン市へ移したがっている。
 ガラティン市はベレッタ本社に対し、移転してくれるならば市が造成した工業団地の土地を無償で提供し、10年以上にわたって400万ドルの税金も免除すると誘いかけている。
 ベレッタの提案銃が「XM17」競試に敗れれば、この移転はまちがいなく実行されるだろう。
 2006年に、「海軍の分析評価のためのセンター」という外郭機関が、過去にじっさいに戦地でM9を発砲したことがある米兵にアンケートをとった。その結果、58%の者はベレッタに満足していたが、他は不満であると知られた。
 不満点は、アクセサリーが取り付けられぬこと(米軍用語では「モジュラリティがない」と表現する)。有効射程が短いこと。気が利いてなくて扱いにくいこと。
 そして今年、「XM17」の要求仕様が打ち出された。アクセサリー用のレール等があること。標準照準器もM9より改善されていること。グリップはM9よりもスリムでコントロールしやすいこと。全重もM9より軽いこと。
 スミス&ウェッソン社は1852年から拳銃を製造している。サミュエル・コルトが拳銃を造り始めたのは1836年。ベレッタ社はイタリアで1526年に創業したとフカしている。シュトゥルム・ルーガー社はオーストリーで1949年に開業。グロック社もオーストリーで1963年開業だ。
 軍が採用したとなると、民間市場でもその拳銃はよく売れるようになる。メーカーとしては、この競試に負けるわけにはいかないのだ。
 民間での小火器販売は、総計すれば、1年で450万梃にもなっている。
 ベレッタ社は、「M9A3」という改良型をすでに市販している。金属表面は「デザート・タン」色に焼付け塗装してあり、アクセサリー用レールがあり、サイトは明るく、グリップは細い。しかし「XM17」は、それ以上の「モジュラー度」を要求しているのだという。
 ※陸自の特戦群用にも新拳銃が必要だという話を12日発売の『兵頭二十八の防衛白書2015』の中でしてますので、興味ある方はどうぞ。今回は、昨年の2014年版よりも124ページも厚くなってしもたわい。とても立ち読み不可能なボリュームですので、お気をつけください。お金のない人は、図書館に入れて貰おう!
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 Doug G. Ware 記者による2015-8-9記事「Dwindling exports add to China’s economic worries」。
 中共の税関当局の統計公表によると、2015-7月の中共の輸出額は1950億ドルであった。これは昨年7月より8%以上少ない。
 また、7月の中共の輸入額は1520億ドルで、やはり2014年より8%少ない。
 輸出超過額は430億ドルだが、これは昨年よりも約10%減っている。
 ※このUPI記事に補足をすれば、中共国内の卸売り金額は過去40ヶ月、連続して下落しっぱなしである。需要がないのである。それでシナ企業は過去21ヶ月、雇用も減らし続けている。中共はとっくにマイナス成長に入っている。シナ政府の宣伝そのままに7%近くもGDPが成長……などと報ずる日本メディアの経済記者たちは、数学的頭脳がないのか、中共の工作員なのか、どちらかだ。日本の経済人に誤った行動を起こさせて破綻へ誘導するその罪状は、重く深い。
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 無記名スタッフライターズによる2015-8-5 記事「Global Five Eyes Spy System ‘Bigger Than Ever’」。
 米英加アンザックの5ヵ国連合が1988に結成した「エシェロン」について最初に暴露したリポーターのダンカン・キャンベル氏が久々に語る。ソースは、『Sputnik News』。
 エシェロンは、海底の光ケーブルを途中で「盗み聴く」ことと、各国首都にある大使館に目立たぬように設けたパラボラアンテナ等で「衛星通信」を傍受することにより、ほとんどのデータを集めている。後者は「フォーンサット(外国衛星傍受)」と略称されている。
 インテルサットをエシェロンが盗聴対象にしていることは、スノーデン情報からも裏付けられた、とキャンベル氏は言う。5ヵ国の政府による盗聴規模は、1988年とは比べ物にならぬくらい拡大されているそうである。
 ※エドガー・アラン・ポーに興味のある人は、産経新聞社のWEBサイト《いろんな》に2015-8-6に掲載された拙稿「核攻撃から日本人を守る5つの方策」を読むとおもしろいでしょう。タイトルで検索すれば、出てきます。これは、マハンについて調べているうちに溜まってしまった副次的なトリビアを吐き出したものです。地政学の創始者はラッツェルやチェーレンではなくマハンであること、そのマハンが米国の最大の脅威だと考えたのは英国であったこと、すべては英国から米本土を守るための太平洋拡張策であったこと、そしてその危機感をもたらした時代の学説はダーウィンとスペンサーであり、『進化論』の核芯もむしろ〈有史前の地層から観察されるおびただしい古生物の絶滅は自然の法則=宇宙の法則であって、これからも生存闘争に敗れた種の絶滅は普通に繰返され、人間もふくめて現存生物のほとんどは、変化をしなければすべて亡びる〉とした部分であったこと等々、来年の著作で明らかにする予定です。