ミッション・キルか、プラットフォーム・キルか?

 ストラテジーペイジの2015-12-12記事「Submarines: Reminding Russia And China」。
  米海軍は2015後半から、潜水艦による「自走敷設機雷」の放出訓練を再開した。これは冷戦以来のこと。マーク67「SLMM」という。1950年代のマーク37魚雷をレーガン政権時代に改造したもので、全重750kgで、プリプログラムに従い10km以上駛走したのち、複合感応式機雷となる。深度は180mまで対応する。1991までは秘密兵器扱いだった。
 ※深度180mで爆発しても水上艦は大破すまい。深さ40m以上に播く場合は、こいつの狙いは対潜水艦だと考えていいのか?
 敷設は自走ではないが、攻撃が自走であるロボット機雷として、マーク60「キャプター」もある。いちおう潜水艦からも播けるが、航空機で播くことが多い。CAPTORは深度900mで繋維状態で待ち続け、上を通過する敵の潜水艦の音紋だけに反応してマーク46ホーミング魚雷を放出する。攻撃半径は、着底点から7kmである。
 ※豪州は『そうりゅう』型を採用するしかない。それを「命令」しているのは米国である。理由は、中共が『JIN級』SSBNの遊弋を南支那海で今年から開始した(米戦略コマンドが12-9に認めた)から。たぶんリアル弾頭はついてないが、いつかはつくかもしれないし、射程も何十年もかけて延ばす気だろう。これをいつでも撃沈できるようにしておくのは米国指導部にとり至上命題である。そのためにはシナ潜尾行をじっさいに行ない得ている日本の潜水艦を豪州も採用してもらう必要があるのだ。ドイツ製やフランス製ではASWの頼りにならんというのが米海軍の判断なのだろう。いちおうコンペ形式にしているのは豪州政府としての国内納税者向けのショーにすぎない。すべてはワシントン命令で既定だ。ただし米国の国益と日本の国益はおのずから違う。米国は『JIN級』×4隻が全滅すればそれで危機は去る。しかし日本はそれではちっとも危機は去らない。中共体制そのものを崩壊させない限り、日本人は安全にはならない。だからこそ日本が「Mark 67」のような自走敷設機雷を量産してベトナム、フィリピン、マレーシアに格安援助しまくらなくてはいけないわけだ。ところで中共が『そうりゅう』の豪州取得を阻止しようと思ったらその方法は簡単である。習近平が「調査捕鯨に断乎反対する」と繰り返し演説し、豪州大衆輿論を反日へ誘導すればいい。そうなったら豪州政府にもどうにもならないだろう。水産庁利権が、日本を核の危険に曝してくれるのである。
 次。
 Mike Pietrucha記者による2015-12-9記事「The Case for the Centuryfortress: Defining the B-52J」。
  ※記者は空軍大佐でシードの電子攻撃が専門だった。
  中共が海上に対して作戦するのに使える公式の軍用飛行場は60箇所以上もある。
 これに対して韓国と日本にある米軍の戦闘機用の航空基地は、たった6箇所である。〔だからB-52のような長距離重爆の予算を米国は決して削減してはならない。〕
※このレトリックはひどいね。日米協定により、空自基地や海自基地も随時利用できることになっているのだから。それにフィリピン基地はスルーかよ。こういう書き方をするということは、このオッサンは〈空軍と爆撃機産業のための予算獲得工作員ライター〉ですよと自白しているようなもの。まあ、それをまったく隠してないんだけどね。
 中共空軍に関して興味深いことは、基地が沿岸部に集中していて、奥地にいくと、もう防備努力をしていないこと。※シード専門家が言うんだからこの情報は重視したい。
 そして、攻撃力のリーチが短い。動物にたとえるならば「義足のグリズリーベア」で、近寄ると怖いが、ちょっと離れればこっちは安全だ。
 そして中共は、大陸国なのに、貿易に関しては完全に「島国」で、物料の96%は海の上を運んでいるのだ。空輸や、陸上国境だけで完結している貿易は、重量換算で全貿易の4%しかないのだ。すなわち、海を封鎖すればシナは亡ぶ。
 シナ沿岸を中心とした、貨物船の航路図を見よ。※この挿入chartは素晴らしい。「Figure 1: 2014 Maritime Traffic Density (Marinetraffic.com)」で検索してみることをお奨めする。ニューブリテン島の両端に日本にとっての「チョークポイント」があったとは知らなんだ。ラバウルの意味が、違って見えてくる。
 ハープーンを装備したB-52Gは冷戦期にソ連艦船の大西洋での行動をありえなくしていた。同じことは中共の艦船についても言える。シナの沿岸を少し離れれば、B-52が海を支配する。
 最新のB-52J型では、8基のエンジンの燃費が20%以上改善された。
 これにより、ハワイ、もしくはニュージーランド、もしくは中東の基地から離陸し、南支那海でシナ艦船を沈めて、給油機なしでまた元の飛行基地まで戻るという作戦ができるようになった。すなわち途中無給油で戦闘半径9000海里を実現。※中東といってもUAEだと経路上の陸地が邪魔だしジブチだと狭いから、ディエゴガルシアか。理論上は、ケニアから離陸しても余裕で戻れる。凄すぎ。
 B-52Jには、空対空用のアムラームも搭載できる。※もう空中戦艦。
 いまB-52は年に250時間ほど飛んでいるが、このペースで2050年を超えてなお現役だとすると、主翼の上面は、張り替える必要がある。いちばん疲労する表皮部分なので。
 ダーウィン飛行基地から、3機のB-52Jが離陸し、スル海に達して海上監視を開始するまで3時間。そこから12時間連続で哨戒飛行できる(現場海域までの往復まで含めると連続19時間)。
 AESA方式の側方監視レーダーは高度45000フィートからならば片側260海里も見張れる。それが両側である。それが3機である。
 この3機は、敵大艦隊を発見したら、60発の空対艦ミサイルを即座に発射してやれる。これは海軍のF-18が2個半中隊も出撃しないとできない技だ。つまり空軍のB-52の方が、海軍の「空母+戦闘機」よりもはるかに税金の節約になるのだ。