木があるために森が見えない。

 2015-12-10記事「The Real Story of the French Resistance」。
 新刊紹介である。
 ロバート・ギルディー著『日蔭者戦闘員』(Fighters in the Shadows)はフランスのレジスタンスについて仔細に調べた新刊だ。多数の生存者インタビューあり。
 フランスは6週間で敗北した。ブリッツクリーグ1940-6。
 フランス国民はまさか仏軍が負けるとは思っていなかったという。
 その後、フィリップ・ペタン元帥のヴィシィ政権は、ホロコーストに協力する。数千人のユダヤ系フランス人が死の収容所へ送り出された。
 そんな異常事態の占領が4年も続いたのだから異常事態のレジスタンスも起きた。異常が普通になったため、フランスレジスタンスはWWII後もしばらく消えてなくならなかった。
 ドゴール体制になってから、レジスタンスのおかげでフランス人は戦後に胸を張れるのだ、と宣伝されている。それは嘘だ。
 ドゴールが1940-6-18にロンドンから放送して武装抵抗継続を呼びかけたのは事実だが、D-Day以前に彼ら自身でフランスを解放しつつあったとは到底言えず、且つまた、どうもD-Dayに合わせた同期的サポートもロクにやってなかったらしい。したがってあくまで連合国とドゴールが外からフランスを解放したというのが真相である。
 米英軍の撃墜されたパイロットを救出するネットワークに協力するとか地下新聞を出すとかも含め、なんらかのレジスタンスに参加したフランス人は、D-Day以前において、トータルで仏国内居住人口の2%だった。
 レジスタンスに加わった者たちの動機の、小さくない部分。彼らの兄弟や父親が、第一次大戦でヒーローではなく、むしろその逆だった。それに負い目を感じていた。その家系的な不名誉を挽回しておきたいと思っていた。
 地下組織を大きくするにはリクルートが必要だ。しかしそうするとスパイも入り込みやすい。
 外国人も大勢加わった。第一次大戦の結果として郷土から逐われてしまった者。ドイツやソ連の支配下からの逃亡者、特にポーランドのユダヤ人。西欧の共産党員。スペイン内戦で敗北した共和派軍(アンチ・フランコ)の残党。
 この連中の動機の方が生粋のフランス人よりも鞏固であった。
 フランス共産党員は外人を都市ゲリラに組織化する活動を熱心にやった。
 シオニストは共産党とは別個に活動した。
 1942-6-16~17にパリで外国籍ユダヤ人の一斉手入れがあり、13000人が逮捕された。
 レジスタンスがドイツ人行政官を暗殺すると、犯人たちはテロリストと呼ばれ、近隣住民がしょっぴかれ、縁坐責任として処刑された。
 1944-8-15には南仏に第二の連合軍上陸作戦が行なわれている。このときにレジスタンスが果たした役割は、よく理解されている。
 しかしD-Dayのときに果たした役割は、特記事項が無いのだ。
 パリ解放後にフランス共産党は人民一斉蜂起を画策したが、ドゴールの方が一枚上手で、それは鎮圧されている。
 次。
 Ben Ho Wan Beng記者による2015-12-10記事「The Chinese Submarine Threat」。
 今、中共には、非核動力の魚雷戦用潜水艦(SSK)は57隻、核動力の魚雷戦用潜水艦(SSN)は5隻ある。
 そのうちつかいものになりそうなのは、商級SSN×2隻、キロ級SSK×12隻、元級SSK×12隻だろう。
 キロ級よりも劣ったSSKである宋級が、非核動力空母『キティホーク』を驚かしたのは2006のこと。
 そして2015-10には、『ロナルド・レーガン』空母戦闘群(CSG)をID不明のシナ潜×1隻がストーキングしたという。
 SSKは敵空母を追躡する能力はない。待ち受ける運用しかない。だから基本的性格は、「動く機雷」である。
 ピーター・ホワースは『おそるべき中共の潜水艦とシーパワー』という本を2006に出している。これがいろいろ参考になる。(Peter Howarth『China’s Rising Sea Power: The PLA Navy’s Submarine Challenge』)。
 米空母打撃群は、SSKの埋伏をおそれて、フィリピン海より内側へは、有事には入らないという。
 したがってシナ潜もフィリピン海まで出てこなければCSGを打撃できないわけだ。
 だがフィリピン海は500万平方kmある。そこでいったいどうやってCSGを発見する気なのか?
 キロ級も元級も、潜航では20ノット、それも短時間しか出せない。ニミッツ級空母は作戦中はしょっちゅう30ノット以上を出す。つまりシナ潜は遠くから米空母に近付きたくとも、置いてきぼりにされる。
 商級は核動力だから30ノット出せるが、大騒音ゆえバレバレで、追躡など非現実的。
 旧い漢級SSNになると、いちおう現役だが、輪をかけてうるさすぎる上に、水中でも25ノットしか出せない。追躡したくても無理。
 衛星から「攻撃キュー」を出してもらわぬ限り、フィリピン海で米空母をシナ潜がとらえるのは絶対に無理である。
 艦上対潜哨戒機だった米海軍のS-3ヴァイキンクは、1991以降は敵潜がいなくなったというので、艦上空中給油機にされてしまった。そして2009にはリタイアさせられた。
 いまや米CSGは、ヘリコプターのシーホークだけに空からのASWを頼っている次第だ。
 対艦攻撃の考え方として、ミッション・キルと、プラットフォーム・キルがある。
 前者は、撃沈などを狙わず、機能不能化だけを狙う。空母は、飛行機を発着させられなくなったらもう無価値なのだから、ミッション・キルでいいのだ。
 ※偶懐。そもそも味方機が敵の輪形陣までたどりつけるかどうかもあやぶまれるようになった1944~45年時点では、敵大型艦の撃沈にこだわるのは利口ではなかった。このミッション・キルの概念があれば、「零戦+30kgの4号爆弾×2、もしくは50kgクラスター弾×2」でよかった。偵察&嚮導機としての「複座零戦」(20mmは卸す。操縦者=偵察士官とすれば三座の必要はなく、士官の戦死レートも抑制できる)と、攻撃任務用零戦の「オール・ゼロ」チームでまとめることができた。これなら商船改装の小型低速空母からも運用可能だし、カタパルト発進もできたし、生産も訓練も一切が合理化され、特攻は必要なくなった。
 中共海軍は、米空母の甲板を損壊させるか、スクリューもしくは舵を破壊することで、航空機発着を不可能にしてやれる。※水中核爆発でもね。
 中共の「航跡ホーミング魚雷」は、スクリュー破壊を狙ったものである。
 中共の「53式魚雷」は炸薬300kgである。
 「54式ホーミング魚雷」は炸薬450kgである。
 ※海自は「Mark 67」のような自走敷設機雷を水上艦から運用できるようにしなけりゃならぬ。しかし、いわくありげな長魚雷を「放流」しているところを他の航空機や艦船から偶然に見られてしまっては面白くない。そこを工夫せんといかん。モノハルの水線下に発射管など設けるのは設計も工作もメンテナンスも面倒であろう。蓋を開け閉めするノイズでも気取られてしまう。ならば、カタマラン船型として、中央「橋渡し」の橋桁裏面から静かに泛水させるのが解法になる。もしくは、ドック型軍艦の後尾からリリースするか……。
 もしシナ潜から対艦ミサイルを発射すれば、西側のISRに位置がバレる。
 キロ級のように発射管が6個ある潜水艦の場合、最大ミサイル連射可能数は5発。なぜなら必ず1本の魚雷はスタンバイさせておく必要があるから。
 ただし商級改型はVLSが装置されている。改型は今3隻ある。
 商級改のVLSチューブ数は未確認である。8基じゃないかとは想像されているのだが。
 イージスは鉄桶ではない。かならず漏れがある。だから過去に誤射事件も起こしているのだ。
 1969-1に空母『エンタープライズ』の飛行甲板で500ポンド爆弾が9個、火災によって誘爆したことがあった。その爆発力は、ロシア製巡航ミサイル6発の命中に匹敵した計算だという。27人が死亡。
 だがなんとカタパルトにもアレスティングギアにも支障はなく、1時間後には飛行作業を再開したのであった。
 フォークランド島で英軍艦『シェフィールド』がやられたときの目撃証言によると、亜音速のエグゾセは外鈑は貫徹したが、弾頭が炸裂しなかった。しかし火災が発生し、艦は大損傷。
 ※いっそ対艦ミサイルの弾頭をさいしょから無炸填と割り切ってしまい、終末加速のキネティックとモーター残燃料による焼夷効果だけ狙うのでもミッションキルとして合理的になるのかもしれない。無炸薬なら弾薬としてのメンテもハンドリングも楽、プラットフォームの安全性も大いに高まる。終末加速はガトリング砲の照準をまずつかなくするだろう(わずかづつでも加速し続けている限り)。ところでKyle Mizokami記者の2015-12-3記事によると、1980年代に米海軍はSM-1すなわちスタンダードミサイル初期型をイランのパトロール艇に5発も撃ち込んだが、その小型艇は沈まなかったという。またハープーンはなぜか垂直ラーンチには不適で、VLSと別個に甲板上に据えねばならず、数を増やせない。そこで、VLSに入れやすいトマホークを対艦型にするとか、SM-6を対艦用途にするとか、いろいろ考えられているという。