七月四日売りのSAPIO記事にご注目ください。

 Alan Tovey記者による2016-6-22記事「RAF will have to send F-35 kit back to US for repairs – even though it was built by a British-owned company」。
   英空軍が使用するF-35の電子機材は、米国支社のBAE工場で製造するのだが、もしもRAFが使用中に修理が必要になった場合には、その電子機材を英国内で修理することは決して許されず、セキュリティ上の要請から、すべて米国まで運んでいって米国内のBAE工場で修理しなければいけないのだということが判明した。
 ついでに暴露されたこと。英国のBAEシステムズ社は、米国内の電子戦兵器専門支社から、9億5000万ポンド(14億ドル)の年収を上げている。BAE総体では年に170億ポンド稼いでいる。
 英空軍は、F-35を140機買うつもりである。その大宗は、垂直着陸ができるB型である。
 ※英国はいやしくもP5の一員として、制空戦闘機を米国製にすることはぜったいにしない。CAS任務機・小型艦上機のハリアーの後継機を米国と共同開発することにお相伴したのみである。なぜなら米海兵隊はハリアーの顧客だから、F-35Bに相乗りしなかったらば大顧客を喪なうからである。
 F-35の電子戦機材は、ブラックボックスとして扱われる。修理やアップデートが必要になったら、そのブラックボックスだけを取り外し、米国へ輸送する。機体は英国に置いたままでいい。
 BAEのランカシャー工場ではF-35の胴体の一部を製造する。
 米軍機が使う電子機器を作る工場は、米国内に置かれなくてはならない。これは米国の武器商売ルール「ITAR」の縛りである。BAE社はF-15用やB-2用の電子機材でも稼ぐ必要があり、工場を米国内に置いている。
 宇宙放射線に強い衛星用の電子回路も、BAE支社はすでに数百個、米国衛星用に納品している。
 ※ゲイツ長官がF-22を葬ってF-35に一本化させたのは、F-35がF-16のように安価な戦闘機になると思ったからではないのだと、ようやくわたしはこのごろ理解した。F-35こそは、米国が同盟国と友好国に勝手なマネをさせないで「情報鵜匠」となるためのツール、いわば「情報拘束衣」だったのだ。しかし皮肉にも米国国内法が、イスラエルの戦闘機と同格の高性能戦闘機を周辺イスラム国に売ってはならないとしてしまったため、GCC諸国がF-35の買い手となる日は来ない。すなわち米国はF-35を売ることによってGCC空軍の動静を居ながらに「見張る」ことはできなくなった。商売的にもとても苦しいことになった。「F-35を売らないならストライクイーグルとスパホを売れ」というGCCにアメリカは答えなければならない。しかしイスラエル向けのF-35の量産は急には増やせない。どちらでも儲けることができなくなっているのだ。
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 Thomas Gibbons-Neff記者による2016-6-21記事「Watch an A-10 land on a highway for the first time since 1984」。
   NATOの14ヵ国がロシア周辺で実施中の「セイバーストライク」演習の一環として、ミシガン州兵空軍所属の4機のA-10が、1984以来やったことのなかった、高速道路への着陸を実施した。エストニアで。
 ※この動画をSNSで拡散させるのがアメリカの狙いである。ロシア人にバルト3国侵略を思いとどまらせるために、これに限らず、インパクトある動画が次々に米軍の手によって製作され拡散されている最中だ。ロシア空軍はバルト3国の飛行場を数日間~2週間ばかり使用不能にすれば戦争に勝てると踏んでいるが、それは不可能だと思い知らせる目的がある。
 着陸を誘導したのはJTACたち。つまりJTACの仕事はCASを地上から指図するだけじゃなく、CAS機を臨時滑走路に着陸させることまでやるのだ。
 ドイツとポーランドでは、今でも、高速道路の一部が、代用滑走路として平時から指定されている。※ただしそれがどこか、公開はされていないはずである。
 2015年には、フィンランドとスウェーデンのF-18およびグリペンが、訓練で「ハイウェイ924号」に着陸し、また離陸した。
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 ストラテジーペイジ 2016-6-22記事。
  ファルージャが奪回されたとか言っているが、残敵掃討には1ヵ月以上かかるはず。これはラマディの前例から推定できる。
 ファルージャだけでISが2500人死んだと。
 市内へ戻りたがっている元住民は8000人。
 ファルージャが位置するのは、イラン側の完全な沙漠地帯と、チグリスユーフラテスの緑地帯の境界線上なのである。バグダッドからは60km。
 イラク政府軍は2016末までにモスルも奪回すると言っているが、シーア兵士の訓練度は非常に低い。
 2015後半からトルコはイラクに越境爆撃し続けている。6月21日にはPKKに対して誘導爆弾を投下した。
 トルコのUAVは毎日越境偵察飛行している。
 イラク内のクルドは、その支配下の原油を、トルコ経由のパイプラインで外世界に売るしかない。だからいくら爆撃されても堪えている。
 クルドは支配地で毎日50万バレルの原油を掘っている。しかし国際油価が下がっているので、それは月に3億2000万ドルの収入しか、クルド自治政府にもたらさない。
 イラク政府は、1日に300万バレルを輸出している。
 イラクの北東国境のすぐ向こう側のイラン領内にはPJAKというクルド集団がいて、イラン革命防衛隊と戦闘中。PJAKはイラク領からイラン領へ浸透してきた。
 PJAKとイランの戦闘は、2003のイラク占領以後、ずっと継続している。
  ※『白書2016』でも解説するが、トルコとパキスタンは正反対の構造をもっている。トルコはエルドアンと政府与党が「オスマントルコ帝国を復活させるのじゃ」主義者で、逆に軍が近代世俗主義勢力。パキスタンではまったくその逆である。
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 ストラテジーペイジの2016-6-22記事。
   イスラエルのエルビット社は、F-35のヘルメットに似た機能を有する統合情報表示ヘルメットを、ヘリコプター操縦手用と、戦車クルー用にも、開発した。
 戦車用のは「アイアンヴィジョン」という商品名。このヘルメットを装着すると、AFV車内にいながら、車外の全周を、昼でも夜でも、まるで装甲鈑などないかのように、見回すことができる。もちろんヴァーチャル・ビデオ映像がバイザー内に映示されるため。
 ※F-35用のは映像のディレイ問題が解決不可能なのでおそらくダメだろう。しかし車両用はディレイについて航空機ほど問題がシビアではないから、これから流行る。すでに民間乗用車のバックミラーはビデオモニターで置き換わる趨勢にある。戦車のドライバーは、将来は車体の最後部に位置できるようになる。車長もだ。もちろんフロントエンジン。そのような2人乗り戦車がすぐにも実現するだろう。
▼ストラテジーペイジの2016-6-22記事。
  ラインメタル社が130ミリ戦車砲を1年前から開発中であることがあきらかになった。2025までに完成させる。
 近代戦車の正面装甲が強力になりすぎたので、120ミリではもう不足だと判断した。
 砲の重さは3.5トンで今の120ミリと変わらず、弾薬も殊更特別なものにはしないという。すなわち飛翔体と薬筒が最初から結合された完全弾薬。
 120ミリ弾薬は重さ22kgあるが、これがおそらく2割り増しとなるだろう。サイズもだ。
 砲身は51口径長、つまり6.5m。
 もし120ミリを140ミリにすれば、11メガジュールに対して22メガジュールを与えられるので、パンチ力は2倍になり、M1戦車の正面をブチ抜ける。しかし戦車に積める弾薬総数は、三分の一ほど減るだろう。すなわち20発か30発しか搭載できなくなる。
 中共は2005年にこの140ミリ戦車砲のテストをやっている。もちろん自動装填にしないと完全弾薬としては扱えない。
 テレビ報道画像を見る限り、その大砲はラインメタルの技術を盗んだものらしかったという。
 しかし140ミリ戦車砲のリコイルに堪えるには最低でも60トンの車体が必要である。おそらくこの破壊的リコイルに対処できるような機械技術と60トン車体を大量調達する予定がシナにはなかったので、導入はあきらめられた。ちなみに中共国内の橋梁で60トンに耐えられるものも多くはない。