全EU国が思っていること。小国がビジネスのために「大経済圏」を受け入れると、要らない難民が入ってくる。

 Eli Lake記者による2016-6-22記事「Obama Wants to Stop Subsidizing Israel’s Defense Industry」。
   アメリカから毎年、安全保障絡みの政府援助資金を受けている国はめずらしくはない。しかしイスラエルは特殊である。イスラエルだけが、その年次援助金の一部を、自国製兵器の調達や開発や軍需会社育成に使うことが認められているのだ。他の国ならば、軍事援助金をアメリカ政府から貰ったら、まずアメリカ製の兵器だけを調達しなければいけないのに。
 イスラエルは、アメリカから貰ったカネの26%もを、自国の兵器産業のために使っている。同格以上のアメリカ製兵器があるにもかかわらず。
 オバマ大統領は、この不合理な慣行をストップしたいと思っている。
 ちょうど、中期援助合意期間の終わりで、改訂交渉が始まっているので、この機会にオバマ氏はネタニヤフにうんと言わせる気である。拒否するなら総額を増額しないと脅して。
 オバマ政権は240億ドルもイスラエルに与えてきた。この金額は過去のどの大統領よりも多い。
 米国の軍需メーカーはイスラエルに苛立っている。イスラエルの兵器メーカーが、次々と、米国の兵器輸出市場を侵蝕している。
 スキャンダラスなのは「アイアン・ドーム」だ。2010年時点でアメリカはイスラエルに毎年31億ドルを与えていたのだったが、この「アイアン・ドーム」をイスラエル軍に調達させるためだとして、オバマ政府と米連邦議会は、それに加えて一時金として10億ドルを気前よくイスラエルに与えたのである。ガザからのハマスのロケット弾攻撃を防禦するためとして。
 政権インサイダーによると、オバマはこの援助には大反対だった。2008の金融危機のダメージでアメリカ国内が困っているときにふざけるなという話だ。イスラエル政府は自己資金でアイアンドームぐらいは楽に買えたのである。
 ※なぜトランプ候補は、オバマ政権によるこれらのイスラエル援助を非難しないのか? まったくダブルスタンダードだよね。
 イスラエルのGDPは、過去10年でほぼ2倍に成長している。いまは2300億ドルくらい。
 そして2015年には海外に57億ドルものイスラエル製兵器を売るようになった。
 特にインド市場への食い込みがめざましい。米国メーカーは、イスラエルのおかげで、巨大なインド市場で儲けることができないのである。
 イスラエルの反論。アイアンドームで得られた知的財産は、すべてアメリカの軍需企業にも提供されるようになっている。これは米国議会が立法してそう決めているのである、と。
 ※「アメリカを亡ぼすものはアメリカ自身+イスラエル」……ということに、ならなきゃいいんですけどね。
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 Franz-Stefan Gady記者による2016-6-23記事「Russia’s Deadliest Subs to Receive New Heat-Seeking Torpedos」。
  ヤセン級新SSGNと、ボレイ(北風)級新SSBNに搭載する新魚雷がすごい。
 フトリャーという大深度魚雷。
 径533ミリの「フィジク」ホーミング魚雷は昨年に装備化したばかりだが、それを早くも更新する予定なのだ。
 いま、テストがキルギスタンのイシククル湖で進められている。※とんでもない僻地の高地の湖である。よほどアメリカに試験データをとられるのが怖いのだな。
 うまくいけば、2017から量産に入る。
 駛走距離50km、駛走速力50ノット、そして深度は400mまで対応するであろう。
 シーカーは、熱探知式だという。
 開発メーカーはサンクトペテルスブルグにある。
 次。
 NYTによる大特集。2016-6-22記事「The New Panama Canal: A Risky Bet」。
 パナマ新運河はサンフランシスコなみに地震のことも考えなくてはならない。しかし考えてない。
 2009に受注企業が決まり、ようやく、完成する。
 第一号船はシナのコンテナ船で、日曜日に大西洋から太平洋へ抜ける。
 こんどの閘門はまったくパナマ政府が発注してつくらせた。
 しかし受注額があまりに抑制されているなど、おかしな点が多々あり、すぐにもぶっこわれるのではないかとNYTは気にしている。
 新運河の閘門は6箇所。そのコンクリートも鉄骨鉄筋も少なすぎる。スペインの応札者が無理をして受注したので。
 また閘門の幅がギリギリの狭さで、操船ミスがまったく許されない。船は巨大化しているというのに。
 タグボート用のスペースすら十分かどうか怪しい。
 くわえて、スペインから納入されたタグボートが酷い性能。
 運河のアドミニストレーターの息子の会社からそのタグボートは購入されているのである。
 ネオパナマックス船が満載で通航するためには、閘門の中に陸水が無尽蔵に再注水されねばならない。ところがパナマにも日照りがある。今は雨水が足りない。だから積荷を減らさないと船底がつかえてしまう。
 米国の小麦農家、大豆農家、そして液化天然ガス産業は、ネオパナマックスをフル活用することでアジアに安価な運賃で商品を輸出できると皮算用していた。
 が、それは怪しくなってきた。ネオパナマックス船は3年くらい前から多数発注されて建造されているというのに。
 ネオパナマックスがダメだとなれば、巨大船舶は皆スエズを使う。それだけだが……。
 旧閘門は扉が1個で700トン以上あった。
 旧運河は、電気機関車で閘門内を牽引してくれた。
 中間にあるガトゥン人工湖が海抜85フィートで最高点。ここまで3段にわけて船を持ち上げねばならない。通過後は、やはり3段の閘門を経て海まで出る。
 閘門は基本的に重力を利用して上げ下げする。
 中共経済の爆発成長の結果、2000年には旧パナマックス船では商売にならなくなってきた。このまま旧パナマを放置すると、北米のエリー運河(五大湖とハドソン川を結んだ)のような衰退が待っていると人々は怖れた。
 パナマの太平洋岸は潮汐の干満差が19フィートある。これに対して大西洋側は2フィートしかない。だから直結はできない。
 パナマ拡張工事を入札で受注したスペイン企業は、その能力が疑われる企業であった。
 二番札の企業の入札価格よりも10億ドルも安かったのである。これでまともな大工事ができるだろうか? じっさい、破綻しかかっている。
 ほんとうは1914年から100年目に新運河を開通させたかったが、この会社にはとても無理だった。
 ベルギーのベレンドレクト閘門が、今は唯一、ネオパナマックスのコンテナ船を通している。そこでの最新型タグボートと比較すると、新パナマの用意したタグボートはチープすぎる。
 ベレンドレクト運河は淡水のみだが、新パナマは海水と淡水が混じり、浮力が刻々変化するので、一層厄介なのだ。
 新閘門は、その囲われた水面面積が、長さ1400フィート、幅180フィートである。
 巨大コンテナ船は、長さ1200×幅160フィート。
 タグボートはタテ・ヨコともに100フィートのサイズだ。
 つまり新閘門ではタグボートの動ける余地はゼロなのである。
 タグボートに頼る方式とするなら、安全性と効率性を実現するためには、1528×200フィートの水面面積が閘門内に確保される必要があったのだ。ネオパナマックスに対応させるために。
 9段に詰まれたコンテナは風を受けると帆の役割をする。12万2000トンのコンテナ船に、タグボートは圧壊させられてしまうだろう。
 欧州の港湾専門家の助言。対策としては、運河の内側に黒色プラスチックのバッファーを貼り付けるしかなかろう。
 「浮き」のフェンダーも役に立つ。
 水先案内人は、すべてを1/25につくった人工湖とタグボートで練習中である。
 海運会社は、ネオパナマックス1隻の通航に、80万ドルの通行料を支払うはずである。
 太平洋側から大西洋側へ行くには、船尾を先にするようになるという。
 セメント配合が少なすぎると、「す」だらけになってしまって、しかも隅々まで行き渡らない。よくない。多すぎると、充填しやすく、塗りやすいのだが、ヒビ割れしやすくなる。
 コンクリートの骨材としては太平洋側から砂や砂利が集められた。しかし太平洋の砂は、骨材としては不適切なのだという。
 スペイン語で「安いものは高くつく」ということわざがある。新パナマはそれを実証するだろう。
 水を入れてみたら、やっぱりあちこちで漏れた。いきなり。
 漏れの原因はしかしコンクリートではなく設計だった。それで、あとからドリルで孔をあけて補強の鉄骨を挿入している。ただし一部分のみ。泥縄。
 日照り続きでガツン人工湖の水位は2016-2月に81.75フィート。その季節としては過去最低に。
 その翌月から、旧運河通航貨物船の積荷規制がはじまり、どんどん強化されている。
 この調子だとネオパナマックスに積載して通航可能な貨物量は、旧パナマックス船よりも少なくなってしまう。船主と荷主は怒るだろう。
 すでに6月9日(木)に第一船が新パナマを試験通航した。
 ただしこの船は大型ではない。長さ836フィートしかなかったのだ。
 バラ積み船なので背が低く、風の影響も受けない。
 新運河は、計画では、1日に12隻のネオパナマックスを通す予定だった。
 ※季刊『宗教問題』で広告しているように、7月2日(土曜日)に都内で軍事情勢の講演をします。わたしは暑いのは超苦手なので、羽田空港から往復しやすい浜松町に会場を設定してもらいました。北海道は風邪をひきそうなくらいに涼しいです。すぐ日帰りする予定です。