「読書余論」 2017年2月25日配信号 の 内容予告

▼筑摩書房『世界文学大系65 中世文学集』S37
 佐藤輝夫tr.「ローランの歌」。騎士道と武士道の違いを知るためには11~12世紀に作られたこの武勲詩を読まねばならぬ。
 史実では、敵はイスラム教徒軍ではなく、ピレネーのバスク人。しかも合戦は夜襲であった。ローランらは戦死し、シャルルは懲罰作戦を実行できなかった。
 欧州ではオリーブの小枝が古代から和平と降服のしるし。白旗ではなかった。
▼カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本/権力構造の謎』1994 早川文庫
 執筆は1988になされ、ハードカバー訳刊は1990だった。
 戦前と戦後の日本官僚は連続していると初めてチャルマーズ・ジョンソンの『通産省と日本の奇跡』が指摘。
 零細企業は、不景気のショックを、大企業にかわって吸収する役目を果たしている。そのため、日本では企業倒産率が高い。
 日本の企業内労働組合は、非正規社員は、何年勤続していても、組合に入れてやらない。
 筆者は早稲田大学で4年間教えた。政経学部の学生はほとんど何も勉強しない。それでも講義に出席する限りは単位を与えなさいというのが大学の指示事項であった。
 ※今日、大学生は偏差値を問わず「貧困世代」なのだとする意見があるが、リアルの講義に出席する必要も認められないような講義がすべての大学に間違いなくあるので、カリキュラムをリストラしてオンライン化もしくはタブレット化もしくはスマホ化して大学の過半を実質「通信制」化または「夜学」化すれば、学生の居宅問題は解決したようなもんだろう。
 秦野章は、日本大学専門部(夜学)卒で、中曽根内閣で法相になった。東大京大法科卒でないために、司法官僚はつまはじきにした。
 ※高校の夜学率ももっと高くていいはずである。そして大学の夜学は、朝の4時から8時までやったっていいはずだ。
 ココム関連国内法規違反を、外務省と防衛省は監視しようとしたが、通産省は拒否した(p.248)。
 外務省は、特亜に対して一貫して、象徴的な謝罪のジェスチャーを示すべきだと政府に要求。それを文部省が拒み続けていた。
 儒教圏では「野党」がそもそもありえない。統治者は本来高潔だとされる。その統治者に反対する勢力というものがあるなどおかしいから。
 ※よって儒教圏には議会制民主主義はなじまない。
 1985-8の日航機事故。
 空自のF-4×2はレーダーから消えた日航機の墜落現場を、4分でつきとめた。
 運輸省航空局は、それから2時間半も、陸自に捜索を要請しなかった。
 事故から10時間後に陸自のヘリが、日の出後になって旅客機残骸を視認。暗視装置がなかったので。
 すべては日航が悪いことにされた。日航は運輸官僚の天下り先なのに、運輸省とは仲が悪かったので。
 鮎川は戦後の中小企業を政府が統制するのに大貢献した。その成果が、中小企業基本法。
 鮎川の死後、その仕事は岸が引き継ぎ、1987の岸没後は、田中義一の長男である田中龍夫に。龍夫は旧満州の革新官僚。通産大臣、文部大臣を務めた。
 エリツィンは予定の数日前に訪日を取りやめた。日本外務省がかたくなに北方領土返還問題だけをとりあげようとしたため。応ずればエリツィンは国内で袋叩きになるしかなかった。
▼福島安正・著、太田阿山ed.『大陸征旅詩集』東亜協会S14-9 非売品
関東都督として、関東州内の産業道路を500里建設し、愛川村柘地植民を創始した。
 長野県出身者を軍人にしてやるための組織は、信星会といった。初代会長福島の死後、それは財団法人信武会となる。坂本俊篤が二代目会長。
 ロシアが大国になったのは偶然ではない。辺境の軍政がじつに厳峻によく機能している。隣辺に隙あらばかならず前進躍進。こうやって国威を張ってきたのだ。
 モンゴルで便秘になりたくなければ、朝と昼は羊肉を口にしないで乳茶を鯨飲せよ。
 まず旅行前に現地語を図書で研鑽することを勧める。言語が分れば、旅行中に、一事・一物からも学ぶことができるのである。回顧すれば、この企画が承認されてから、ほとんど睡眠を廃して下調べをした。
 土地によって相手から尋ねられることが全部違ってくる。ロシア人は馬に興味があるようだった。ドイツ人は、異国の地形にしか関心がない。蒙古では、物の名前について訊かれた。清国人は、物の値段を問うてくる。そして日本では、危険だったでしょう、お疲れでしょうと、そればかりを言われる。有り難さを覚える。
 3-19に黒竜江の愛琿に到達。シナ人は夜郎自大で天下の情勢を全くわかってない。数が多いのを誇るだけでは未開人だ。
 ロシアは、バンデラバス(バンダルアッバス)の港が欲しくて南侵のチャンスを窺っていた。ペルシャ軍の礼砲が湿っていてうまく鳴らず、国の軽重がよくわかった。
▼浜谷英博・松浦一夫・他『災害と住民保護』2012-3
 内閣にはエマージェンシーパワーがあるというのが英米流の考え方なので、憲法明文がなくとも、必要に応じてどうにもできるはずだ。
 「国会拒否権制度」を確立しておけば、事前承認のような白紙委任にもならず、実効性のある民主統制は可能になるだろう。
 州兵が、連邦正規軍に編入される場合、U.S. National Guard と呼ばれる。そこに入隊した個人は、州兵と連邦軍に dual enlistment したことになる。
 ドイツでは、ヨウ素剤は、45歳以上の成人には処方されない。甲状腺代謝障害を起こす可能性が高いため(p.268)。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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