タルアファ市の住民数もIS人数も、米国は過大評価をしていた。豊富な情報アセットが却って米国の外交を歪めてしまう。

 日米戦争中の日本帝国の現有する航空燃料量について、米軍情報部は非常に正確な見積もりを出し続けていたという。
 ところが、それ以外の見積もり、すなわち航空燃料以外の日本国内の軍需品の生産力や物資のストック等、日本の継戦能力を占う基礎数値については、米軍情報部は常に「過大評価」のあやまちをおかし続けていたという。末期に至っても、日本軍はもっと粘れると信じていたのだ。
 このために、米政府は1945年、ソ連のスターリンに対して、しなくてもよい譲歩をすることになった。
 おかげでソ連は大膨張した。その結果、戦後の冷戦期を通じて米国はどのくらい損をさせられたかわからない。
 畢竟、米国のようにスタート時点から「不滅」の地歩を手にしている強大国の政府にとって、「Bクラスの敵国を過大評価する」行為は、自国のプロ軍人たちとプロ外交官たちの不名誉を予防してくれる効能ぐらいは有するけれども、別な敵国を大膨張させてしまい、長期の国益には必ず反する結果を招くのだ。
 この1945年とまったく同じ間違いを現在、トランプ政権は、北朝鮮について犯しているところだ。
 Cクラスの敵国でしかない北朝鮮を過大に評価するということは、潜在敵国の中共に、しなくてもよい譲歩を重ねて進呈することを意味する。将来の米国は、もっと重い災厄に苦しめられるだろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-8-27記事。
 中共軍のH-6K重爆に空中受油プローブが取り付けられている改造機が撮影された。
 この改造の意味は、H-6Kに、特別に重い「ASAT」ミサイルの発射母機としての任務を与えるためだ。
 最低の燃料と重いミサイルを抱えてまず離陸し、上空で満タンにするのだ。これで最大兵装と最大航続距離とが両立する。上昇高度も稼げる。
 米空軍が1985年に実用化したASATミサイル「ASM-135」は重さが1.2トンしかなかった。成層圏のF-15から発射してソ連の低軌道衛星を破壊できた。ソ連はこれと同じものは遂に造れなかった。
 だから米空軍は1988にこの計画を中止してしまった。
 次に1990に民間企業が、個体三段式のLEO打ち上げロケット「ペガサス」を開発した。これはB-52の翼下から発射できるものである。500kgの衛星を低軌道へ投入できる。
 ※これはすごいポテンシャルだ。ケネディ時代に放棄された「スカイボルト」は実は完成していたのだ。つまり米国は単弾頭の水爆を地球の裏側へでも投射できる。米本土上空のB-52をプラットフォームにするだけで。だったら、新しい核弾頭付きの巡航ミサイルの開発など、無駄も甚だしいといえる。
 「ペガサス」ロケットは1990の初期型は全重19トンだったが、2016年の最終型は23トンである。
 これまで43回発射されており、失敗率は7%にとどまっている。主に初期型が失敗した。
 中共軍は、このペガサス・クラスの重たい対衛星ミサイルを吊下させたH-6Kを離陸させたいのだ。それには離陸時の燃料を限界まで減らすしかない。
 ※となると気になるのは「みちびき」の周回高度までこの支那製ASATは届くのかということ。ASATが届かないとすれば、別の衛星による衝突攻撃法が採用されるしかない。これを平時から監視するために米国は、廃用されたピースキーパーICBMのロケットを再利用して「ORS」という敵性衛星監視衛星を次々に打ち上げているところだ。自衛隊でも宇宙監視レーダーを強化することにしている(もちろんアメリカから命令されて大綱に追加するわけである)。中共は奇襲開戦時の衛星破壊に関してはかなりマジに努力しているということなのだろう。