ヘイティストビーチ

 ストラテジーペイジの2018-3-29記事。
   イスラエル軍は2017-8から輸入品のDJIクォッドコプターを採用している。ユーザーは、歩兵旅団と、南部の国境警備大隊。
 商品名はメイヴィックとメイトリスだ。
 まずすべての歩兵部隊長は「メイヴィック・プロ」を受領する。空飛ぶ双眼鏡として。
 じっさい、メイヴィックは折り畳むと双眼鏡サイズにおさまる。自重734グラム。
 バッテリー1個がついてメイヴィックプロは1000ドルくらい。部隊長は予備バッテリーを多数携行する必要がある。1個の充電に1時間以上かかるので。
 メイヴィックは21分滞空できる。戦場ではそれを100m以下の超低空で飛ばすであろう。水平距離だと7kmは進出させられる。
 クオッドコプターの世界では「上昇限度」の高度のスペックにはあまり関心が払われない。というのは、いくら高く昇れるとしても、そこまで行くのにはものすごい時間と電池を消費してしまうから。だからみんな、超低空で飛ばすのである。
 メイヴィック・プロは2016年後半に発売されている。
 2018前半にDJI社は、重さが半分で一層小型のメイヴィック・エアを発売。滞空時間は同じ。
 自律的に障礙物との衝突を回避するソフトがついて、価格は800ドルだ。
 他方、「メイトリス100」は、逆に大型化した製品。メイヴィックより滞空時間は2倍長く、しかもナイトヴィジョンカメラ装備。イスラエルの国境警備部隊に、これが支給される。
 市販価格は1機3300ドル。しかし軍はまとめ買いするから、もっと安く収まるだろう。
 メイヴィックは、2015リリースの「ファントム3」の後継機である。
 ファントム3も単価1000ドル。しかし重さは3.9kgあった。
 滞空20分。
 進出水平距離2km。
 そもそも「ファントム」の最初のモデルは、2013年クリスマスシーズンに市販された。
 市販後、毎月のようにアップグレードとオプション機材がリリースされている。※この改善ペースがすばらしいのだ。詳しくは来月発売の拙著『AI戦争論』を読んで欲しい。日本の玩具メーカーはDJIの足元に及ばない。
 「ファントム3」は水平進出距離5km、ビデオは4K規格で、単価は1800ドルだった。
 米軍はこれらDJI製品のハードとソフトを、中共に部隊情報が漏れてしまうとして個人ユースであっても全面禁止している。が、イスラエル軍は「空とぶ双眼鏡」として使用する限りはノープロブレムだと判断した。
 メディアは、「恐怖」「不確実性」「疑い」を飯のタネにするものだ。FUDと称する。
 イスラエル軍にいわせると、DJI社をそこまで疑うよりも、その製品から得られる情報の方が、自軍を安全にする。
 ※陸自にミニUAVが普及しない事情の一つに、装備類を「消耗品扱いできない」というお役所流の文化があると思う。だが解決法はある。50mの有線テーザー式とするのだ。テザリング給電ならば機体にバッテリーをとりつけなくていい(ロスト時のビーコン用としてボタン電池がついていればいい)。そして「トンボの脚」をとりつけて、屋根の上や巨大鉄塔の途中の梁にマイクロ・クォッドコブターがしがみつき得るようにする。こうすると、高所にとまらせたあとは、ローターは停止させ、カメラ用に最小の給電を続けるだけで、無限の時間、「高所からのビデオ映像」が小隊長の端末に有線ブロードバンドで届く。こんな楽なことはない。小隊長がみずから屋根の上に登る必要などなくなるのだ。有線通信のみだから敵のECM妨害はまったく無駄である。しかも機械的不具合等が起きて飛び戻っては来られなくなったという場合には、そのテザー紐をたぐりよせれば、ほぼ確実に回収ができる。これで財務省もニッコリするはずだ。50mというのは「森田」が製造している最長の消防梯子車の到達Max高度と同じ。戦艦『大和』の艦橋トップの測距儀だって海面から40mしかなかったのだ。「遠見」のためには、もう十分であろう。