どんどん増えてきた日本絡みのフェイクニュース。

 Kyle Rempfer 記者による記事「Ever heard of ‘deep fake’ technology? The phony audio and video tech could be used to blackmail US troops」。
  2018-6-7にリトアニアと米軍の合同演習中、4両のストライカーが衝突事故。先頭車が路上の障害を見て急ブレーキをかけたので。
 まもなく、リトアニアの人気ニュースサイトが「この事故で地元の子供が死亡した」と報じた。
 それには、子供の死体、自転車、意識不明の米兵たちが一緒に写っている写真が加工して添えられていた。
 このケースでは、捏造ニュースは世間的にすぐ否定された。が、これからはそうはいかない。
 最先端の捏造テクニックがある。
 音声付きの動画を自在にこしらえることができる。編集の痕跡を粗探ししようとしても、見破れないほどに自然に。
 この域に達したものが「ディープ・フェイク」である。
 マルコ・ルビオ上院議員はこの問題に関心がある。
 ロシアは、米国の要人がバルト三国を見捨てる意向を語った加工音声、などをリアルのフッテージに重ねる演出もできる。その類の捏造証拠を次々に流布せしめることにより、NATOの団結を壊すことが敵の狙いだ。
 国家レベルで捏造に精励している文化圏もある一方、ISのような非国家のテロ集団も、かなり高度なフェイク動画を制作発信できるようになっている。
 ロシアは昔から、他国の外交官の公的信用を失墜させる情報工作も繰り返してきた。
 2009年、ロシア国内での人権問題を調べていた米国の外交官が、売春婦を買っているところだとする、ざらついた画質の動画が流布。
 この動画の人物は、その外交官ではなかった。しかしその外交官が電話をかけているリアルの別な動画と巧妙に接合することにより、フェイク・シチュエーションが仕上がったのだ。
 ルビオ議員の認識。今日では、リアルなフェイクビデオを作れる者は、空母やミサイルを所有していなくとも、米国を脅せるのである。
 米国の複数の大学と研究所が「パペテーリング(puppeteering)システム」を開発中である。
 リアルの人物の動画をたくさん蒐集して、マシンにラーニングさせておく。しかるのち、フェイクスミスが言わせたい「偽発言原稿」をテキストで打ち込めば、ソフトウェアが自動的に、その人物の口の周りを自然によどみなく変化させて、まさしくその発言をしているようにしか見えないCG動画を製造してくれる。そこへ合成音声をアフレコすれば、ディープ・フェイクの一丁あがりというわけだ。
 フェイクスミスは、リアルな政治家を、みずからの「あやつり人形(パペット)」と化し得るわけである。
 昨年、何者かが、このようなディープ・フェイク製造用のソフトウェアを「Reddit」というサイトにアップロードしている。だから今日では、只の個人でもディープ・フェイク動画を作成できる。
 ただしPCの処理力増強のためにグラフィック・ボード(またはグラフィック・カード)を買い足す必要はある。そのコストは1000ドル未満だが。
 どうしたらディープ・フェイクに対抗できるのか。この動画はフェイクではないかと、背後の政治的な意図を勘繰る癖をつける以外にない。
 しかし残念ながら、虚偽を暴き、真実が勝利するのは、常に何歩も遅くなってしまうだろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-7-21記事。
   ハマスがイスラエルにネットハニトラを仕掛けて部分的に成功。
 「ハートブレーカー」というプロットだ。
 まずSNSのワッツアップやフェイスブックの中にある、イスラエル人男女のための出会いサイトに、フェイクプロファイルのイスラエル女性をたくさん参入させる。
 この偽女たちは、イスラエル軍の若い兵隊たちに、アンドロイドスマホ用のアプリとして「ウインクチャット」「グランスラブ」、あるいはサッカーファン向けの「ゴールデンカップ」といったアプリをダウンロードさせようと誘った。
 じつはこのアプリがスパイウェア。ハマスは兵士のアンドロイドスマホのカメラをリモート操作できるようになるのだ。
 ただしネット上でのみ使われるヘブライ口語というものにハマスは通暁していなかった。そこから疑いが持たれた。
 ハマスのオペレーターは11人であったことをイスラエル軍は解析している。けっきょく、ダウンロードまで成功させた事例は多くはなかった。
 いま、イスラム圏でスパイウェアを最も多く開発している国は、パキスタンである。
 1980年代の「ブレイン・ヴァイラス」もパキスタン人が書いたものだった。つまり歴史が長いのだ。
 そうした有能なパキスタン人をISI(パキスタン公安部)がリクルートして使っている。