真の友人あらわる。

  Dan Leaf 記者による2018-7-30記事「Japan’s risky Aegis Ashore radar choice」。
       日本が地ージス用にLRDR(Long Range Discrimination Radar)を選んだのは、リスキーな大博打だ。
 米国は海外でLRDRを使う気はない。あくまで従来のAN/SPY-6レーダーのの改善だけを続ける。ルーマニアやポーランドもこれだ。
 唯一、米本土外で、日本だけが、ABMシステムとしてのインテグレーションが取れるかどうか、その証明も実験もされていない開発中の新奇レーダーを採用しようというのだ。それでABMになるのか? 何を考えているのか?
 LRDRは、完成そのものが遅れるだろう。そのあとでBMDとのインテグレーションに入る。いったい何年かかるかわからない。2023年のシステム運開など、間に合うわけはない。
 これは何を意味するか。かなりの長期にわたり、日本は地ージスを対北鮮の「圧力」としては少しも役立たせ得ないことを意味するのだ。
 米海軍は30隻以上のイージス艦を持っている。そのレーダーも AMDR AN/SPY-6 になる。LRDR になんかならぬのである。つまり日本だけが米同盟国の共通システムからは外れてしまうことになる。
 SPY-6は、何十年もの実績があるSPY-1の発展型である。だから信頼できる。ところがLRDRには、先行するシステムも実績も何も無い。カタログスペックだけがあり、それが実用的なのかどうかは、誰も知らないのだ。
 BMDの新システムを実戦で使えるようにするには、無数の迎撃テストを繰り返すステップが不可欠である。それには天文学的なカネがかかる。そのカネは誰が負担するのか? もちろん、その実験だけで、時間が何年もかかってしまう。今そこにある脅威には、すこしも対処し得ないお荷物が、なぜ日本政府の選択なのか?
 ABMを実戦本番で失敗するということは致命的なのだ。だからどこの国でも、実力が証明済みの、長年頼られてきたシステムだけに頼る。日本は何を考えているのか?
 ロイター報によると日本政府がLRDRを選んだ理由は、ライフサイクルコストが最も安くなるからであるという。耳を疑う説明だ。
 これから完成させる武器システムのトータルコストをどうして日本政府は予言ができるのか? ABMの新システムなら、開発予算も調達予算も天文学的に膨れ上がるというのが、既往からの常識ではないか。まして買い手は日本しかないのだ。
 日本は考え直した方がいいだろう。
 LRDRは米本土防衛のために設計されているものなので、日本の地ージス用にはほとんどふさわしくないのである。
 記者は元空軍中将でパコムの副司令官だった。出身は戦闘機パイロット。
 ※日本国家にとって真の友人とはこういう米軍人のことだろう。降って湧いたこのLRDR構想は、ごく簡単にいうと、カナダに置かれているDEWL(遠隔早期警戒線)の日本版だと思う。非常にカネもかかるので、それを日本で負担してくれと外務省が要求されたんだろう。「北鮮は無力化するから地ージスそのものが無用。だったら巨大レーダーを置け」と言われたんだろう。またも「赤紙」だ。DEWLの刷新構想について知りたい者は、Vivienne Machi記者による2018-7-27記事「United States, Canada Studying Options to Replace Arctic Early Warning Radars」があるからそれを読め。俺は本日は暑くなる前に『すずかぜ』の見学に(一無名人として)行きたいゆえ、こんなもの抄訳している暇は無いのだわ。ともかく、米本土防衛のために、日本領土に最強レーダーを置かせろ、という話に変わっちまった。あくまで米国が、中共や北鮮発のICBM/SLBMを最前縁(日本列島)で見張りたいというだけなので、それならば経ヶ岬と車力のXバンドレーダーを置き換えたらいいだけの話のようにも思う。時間がないので良いアイディアを述べる。『こんごう』のような古目のイージス艦のCICと上構を切り取り、それを道南の狩場山のような僻地の国有林上に据えれば、北方の地ージスは一丁あがりだろう。西日本は呉のイージス艦でカバーができるからぜんぜん急がなくてもいい。これまた古いイージス艦を「バージ」に改修して、軍艦ではなく「浮体」です――ということにしちまえばいいだけ。それで海自のフネの定数にも影響が及ばない。とりあえずロシアが地ージスを厭がっているという朗報があるから、北方だけは絶対に進めるべきだ。