『Voice』の最新号をみてくれたまえ。

 寄稿者の名前を見ただけで記事の内容もぜんぶわかってしまうものばかりではない――という意味での王道のオピニオン雑誌で最後まで生き残ったのが『Voice』であったとは……。ダーウィニズムの驚異をまのあたりにしますた。
 次。
 James Goldrick 記者による2018-10-9記事「Freedom-of-Navigation Operations Aren’t All About the South China Sea」。
      南シナ海の公海上にて、直進する米艦『ディケイター』(8000トン)に対して中共のミサイル駆逐艦(7000トン)が舳先45ヤードを横切って進路を妨害した事件。
 「海上衝突を予防する国際規則」(IRPCS)は、甲船に追いつき追い越さんとする乙船は、甲船から完全に離隔してしまうまでは甲船の舳先上に占位してはならん――と定めているのだが、中共海軍にIRPCSを遵守する気がサラサラないことは明瞭だ。
 軍艦の艦長も従わねばならない「海上における不期遭遇規則」(CUES)をなみした行為であることも明瞭だ。
 ただしCUESには法的拘束力は無い。米支は署名したけれども、任意指針である。
 ところでこれらのシナ海軍の行為は、冷戦中のソ連艦のやり口に比べたら、まだまだ遠慮がちなのである。
 1988に黒海にて、ソ連のフリゲート艦が、米巡洋艦『ヨークタウン』に意図的に舷々衝突してきた。
 この『ヨークタウン』に随伴していた駆逐艦の『カロン』は、ソ連のコルヴェット艦によってやはり舷々衝突されている。
 米海軍のこの2艦、やはり黒海でFONOPを実施していたところであった。
 スプラトリーの Gavenリーフ および South Johnsonリーフ は、満潮時に全没する岩にすぎない。その上に砂を盛って人工島を築いても、そこからは誰の領海も発生しない。したがって米艦であれ誰であれ、その海上構造物から500mの安全距離をとって航行するのは自由なのだ。それをデモンストレートしたのが今回のFONOPである(ただし米海軍は決して公的にはその狙いを表明しない)。
 なおベトナムは North Johnsonリーフに哨所を置いている。
 中共はパラセル群島のまわりに勝手に排他的ベースラインを引いているが、そんなものは認めないというFONOPをせんだって英海軍の揚陸艦『アルビオン』が実施した。
 フランス海軍も、ハッキリ広報してないのだが、南シナ海でのFONOPを今年前半にやったと見られる。
 スプラトリーは商船の通常航路から遠くはずれているので、砂盛島をめぐる法的・政治的争いが、商船の活動妨害に直結する事態は、いまのところは生じていない。
 しかし中共の関心は南シナ海を軍事的に支配することにある。
 SSBNの聖域を、そこに創りたいのだ。
 中共は次のような地域取り極めを欲している。すなわち、南シナ海の沿海諸国は、同沿海諸国ではない外部の国家との海空の軍事演習をしてはならない――と。