Lara Seligman 記者による2018-10-16記事「Pentagon Criticized for ‘Spray and Pray’ Approach to Innovation」。
T・ステフェンス氏。ベンチャー投資会社「ファウンダーズ・ファンド」や「軍用AI企業「アンドゥリル工業」の経営者である。
彼はペンタゴンのためのAIプロジェクト「メイヴン」も推進している。
従来のペンタゴンの新技術養成戦術はこんな感じだ。
もしここに1億ドルの使える資金があったとしたら、それを25万ドルづつの400枚の小切手に分割し、400社のベンチャーにばら撒く。
ステフェンスは批判する。このやりかたでは、ごくわずかのベンチャーが、新案の製品化にまで漕ぎ付け得るにすぎない、と。
25万ドルでは、有望ベンチャーにとって、小さなスタートアップにも足りない額だ。
中共のやり方は違う。もっと数社に絞って、公的資金をドーンと突っ込んでやる。すると、そのベンチャーは市場から見ても有望だと信じられるので、そこからさらに民間資本をかきあつめやすくなる。
たとえば1億ドルの育成資金が政府にあるのなら、それを2500万ドルの小切手4枚に分け、4社に対して資金を与える。何かベンチャーに投資したいと思っている民間機関投資家は、その明瞭なサインに食いつくだろう。
※法的な「公平」などという価値観をハナから無視できる儒教圏だからこそ、斯かる政策マヌーバが可能なわけだ。
※そしてもうひとつ。米国流ならば「天下り」が関係なくなる。DARPAの成功因だ。日本政府のやり方は、このシナ流でも米国流でもない中途半端流だから、成果が貧しいのか?
ステフェンスの焦り。中共方式はとにかくスピーディに事業を前進させられる。米国流バラマキ育成方式では、どうしても芽が伸びるのが遅い。
※そのかわり基礎分野での大躍進の種が発芽するだろうが!
ステフェンスの驚き。民間でソフトウェアの天才を示している開発者たち数百人にペンタゴンの代理人として会って話をもちかけたのだが、彼らは誰もペンタゴンとの仕事には関心を抱いていないことがわかった(けっきょく、たったひとりだけが応じてくれたと)。
ペンタゴンの仕事を請け負うといえば、すなわち窓のない地下室で延々と仕事に打ち込まされるのだといったキャリア未来図を、有能なコンピューター系大学院生に想起させてしまう。これではなかなか人材は集まらない。
アンドュリル社についてのステフェンスの抱負。軍用AIに関心の強い人材だけをリクルートできる、そんな会社を立ち上げたかった。ペンタゴンと組んでスタートアップをやるからには、ゆくゆくその無名会社を、ノースロップグラマン社とかロッキードマーティン社に匹敵する巨大軍需企業にまで育てたいんだよ。
※つまりてめえの会社に政府から巨費を投資してくれよってこと? 腐敗の第一歩だろうが。
アンドゥリル社と対蹠的なのが、中共のセンスタイム社だ。同社は顔認識AIを北京政府から請け負って開発している。大群衆の中から指名手配容疑者をすばやくピックアップできるのだ。
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John Ismay 記者による2018-10-16記事「Neil deGrasse Tyson on the Surprising Alliance Between Astrophysicists and the Military」。
軍事技術がいかに天体物理学を進歩させたか。それを書いた新著の著者にインタビューした。
最初の望遠鏡はそもそも陸軍用であった。それが17世紀に天体観測用に転用されたのだ。
「キーホール」スパイ衛星があったから、「ハッブル」宇宙望遠鏡もできた。
天文学が軍隊に貢献したという話ではない。まさにその逆。
ただし核兵器は然らず。
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Courtney Kube and Carol E. Lee 記者による2018-10-17記事「Trump administration has new plan to drive Iran out of Syria」。
トランプ政権は、シリア再建にかかわろうとするロシア企業やイラン企業に制裁を課すつもり。
在シリアの米軍は勝手にイラン系傭兵と戦争することはできない。2001に米議会から法律によって授権されている戦争条件がある。米軍は彼の地では、ISおよび2001-9-11テロに責任あるグループとだけ交戦してもいいのだ。
もしイラン軍とシリア内で戦争したいならば、そのための新授権法が必要だ。※イスラエルが望んでいること。
米政権が標榜している4つのゴール。
ISをやっつける。
アサドに化学兵器を使わせない。
ダマスカスの政権交代。
シリア国内からイラン傭兵は撤退させる等してシリア内でイランが影響力を発揮できないようにし、それによりイスラエル等を脅威し得ぬようにする。
※原文ではイスラエルの名は挙げていない。これが「政策はAIには決められない」理由のひとつ。レトリックで示唆することしかできぬ問題が、現実政治には多々ある。それを堂々とデータ入力してしまうと、漏洩したり後年に情報公開されて、大スキャンダルとなってしまう。
※このような「ゴール」をまず公式に掲げる米国軍事外交の技法については、並木書房の新刊『作戦司令部の意思決定』がわかりやすい。著者は元海将の堂下哲郎氏。
トランプ個人は、ISが片付いたら米兵はとっとと帰国させたいと念じている。
米軍が去ればISとイラン傭兵はシリア内で盛り返す、と米政権の軍事系アドバイザーは口をそろえる。