かの・よしのり先生があいかわらず絶好調!

 『歩兵の戦う技術』という新書が出た。版元はSBクリエイティブ(株)。
 《ハイテク時代に徴兵は役に立たないという人がいるが、ハイテクだからこそ短期間の訓練で、昔はベテランでなければできなかったことができる》――等のするどい指摘が、例によって充満している。
 ロシア軍の木製弾薬箱が世界一優れているなどの比較所見は、おそらく日本人ライターではこの御方しか書けぬものと思う。皆様にお奨めしたい。
 かの先生は、中共政府が11月の珠海航空ショーの入場券を売らぬというイヤガラセに出たためにJ-20の撮影ができなかったそうである。それは残念だ。
 しかし11月末の東京ビッグサイトでの日本の航空宇宙展や、12月はじめの百里の航空祭の仮設トイレの数の少なさなどを目の当たりにするにつけ、これではシナ人から「小日本」と言われるよなあ、とつくづく慨嘆せられたそうである。規模でも、準備の徹底でも、負けているのだ。
 わたしより10歳年長のかの先生はこのごろ加齢にともなって目が疲れやすくなり、そのため執筆ペースが年1冊に落ちているようだ。
 是非とも先生には、大型卓上ディスプレイ等を導入していただき、テキストエディターソフトの文字サイズを大きく表示できるようにして、楽に快適にワープロ作業に打ち込めるような仕事環境を整えていただきたいと、心から念願してやまない。
 この御方の知見は、日本ではあまりにも稀少で貴重なのだ。
 次。
Konstantin Kakaes 記者による2018-12-20記事「It’s only a matter of time before a drone takes down a passenger plane」。
   英国第二の民間飛行場を麻痺させてしまった、謎のドローン操縦者。
 今回の空港業務妨害テロリストたちは、痛いところを衝いた。
 この模倣犯は阻止できない。
 対策側はGPS妨害電波でドローンを墜落させてやろうとするだろうが、自宅で組み立てたドローンだったらさいしょからGPS受信回路を省くことができる。また、当局がGPS妨害電波を出せば空港機能そのものを自傷することにもなってしまう。
 ※INS=ジャイロのチップだけでも手製ドローンの飛行姿勢とコースは維持できる。しかも、プリプログラムのコース飛行(滑走路近くでの8の字周回とか、任意回収点への帰還、あるいは海方向への最終飛行と電池切れ墜落、等)が命じられていたならば、無線信号の送受も一切しないわけなので、通信を遮断させようと試みても無駄である。銃砲で撃墜しようとすれば流れ弾が空港のどこへ落ちるか分からない。
 1機のドローンで民航機においすがることは不可能だ。民航機は離着陸時にも時速150マイルから200マイルで飛行している。レジャー用ドローンはせいぜい70マイル/hだから。
 しかしスウォームが放たれたらエンジンに突入するドローンもあるかもしれない。
 ※タキシング中なら単機でも赤外線ホーミングさせられるだろう。こうした対空港テロで要注意なのは、拙著でも強調したが、FAE(空気燃料爆弾)とドローンの結合だ。素人が調合したFAEは「完爆」しないことがあり得るのだけれども、民航機の巨大なターボファンエンジンに粉末を吸い込ませることができれば、燃焼室内部を確実に損傷できる。その修理費用は民航会社にとっては莫大なので、誰かが1回しでかした後は、ドローンを空港近傍でちょっと飛行させただけでも、その空港の機能を麻痺させてしまうことができる。どうして反体制主義者が、この手を思いつかぬはずがあろうか? 露軍が「RPO-A」という焼夷ロケット兵器を完成させたのは、アフガン占領中の84年だった。大量のマグネシウムの微粉体とイソプロピル化合物をまず少量の爆薬で洞窟内に飛散させ、すぐに続いて全体を轟爆させるFAE兵器だ。マグネシウム粉だけだと「完爆」してくれないことがあるそうだが、着火しやすいイソプロピル化合物を媒介とすることで爆発現象を持続させ、「自然消火」を防ぐのだ。これは94年からはチェチェンのグロズヌイでの市街戦にも投入され、ビルの内部空間を制圧するのに使われた。だがテロリストが民航機のエンジンにドローンで突入させる場合、この「燃焼持続媒体」は不要になると思う。ちなみにFAE兵器用の理想的な燃料素材は、体積あたり、および、重量あたりの燃焼熱が大きい物質だ。ボロン(硼素)やジルコニウムが過去に着目された。それらは単体だと微粒子にしても「完爆」しにくいと分かり、捨てられているのだが、エンジン破壊用には使えるのかもしれない。同様、重量あたりの酸化発熱量は大なのだが発火しにくい珪素、ハフニウム、炭素化合物などをナノ粒子化して「芯」とし、それを、延焼発火しやすい硫黄、セレニウム、ヴァナジウムなどの「薄皮」で覆えばどうか、という「ナノ複層粒子」も各国軍が模索させているところだが、エンジン燃焼室内部に送り込めるならば、「皮」は要らぬ道理だろう。以上、余談。
 網などでドローンから守ろうとする試みは実行至難だろう。空撮用ドローンといえども高度2000フィートまで容易に上昇できる。あるいは超低空を移動することもできる。ホワイトハウスのような建物ならば、網でミニドローンから防禦できる可能性はある。しかし、空港は、不可能だ。
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 マティス長官の辞表の全文が公表されている。
 《米国は世界の警察官になるべきではないが同盟国は支援〔リーダーシップ、と言い換えている〕するべきだ。》という文章は欧州を念頭したもので、マティス氏はやっぱりアジアは二の次だったのだなと印象される。
 《次の長官を決めるのにかかる時間を見て、2月28日を最終日として辞任する。NATO防衛相会合が2月中にあるが、それは新前には酷だから自分が出る。統合参謀本部議長が9月に交替するのに十分先行して長官交替がなされる。》