常識の働かんやつが多すぎるぞ。

 Col. Liam Collins & Capt. Harrison “Brandon” Morgan 記者による2019-1-22記事「King of Battle: Russia Breaks Out the Big Guns」。
    湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争では、敵砲兵が戦闘員の死亡原因になる率は低かった。しかし2014のドンバス戦線(ウクライナ)では露軍の砲兵が圧倒的な力を見せ、ウクライナ兵の死亡原因の8割を占めている。
 米陸軍は射程22kmの155ミリ野砲を使っている。
 しかし露軍は射程37.5kmの203ミリ自走砲「2S7」を倉庫から引っ張り出してきた。
 露軍はまた、迫撃砲のお化けも倉庫から復活させた。「2S4」といい、口径240mm、射程は通常9650mだが、ロケットアシスト弾を使うと20km飛ぶ。
 いっぽう米陸軍の重迫は120ミリである。
 露軍は、時間あたりの発射レートの低さを、砲数の集中でカバーする。その威力は2014のルハンスク国際空港に対する砲撃で示された。空軍のCAS並の破壊をもたらしたものだ。
 また露軍の一大特徴は、野戦砲兵を、独立して機動できる諸兵種連合大隊に分属させていることである。
 米陸軍は、大所帯の旅団が砲兵を控置している。露軍の方が、最前線の部隊長からの火力支援要請が即座に叶えられるようになっているのだ。
 露軍砲兵は、UAV観測との連携も、近年、板についている。
 さらに露軍の「撃ち返し」のスピードが速い。これは対砲レーダーを実用化できていることを傍証する。ウクライナ砲兵は、数発撃ったらすぐに陣地転換をしないと、その場に、クラスター弾頭やサーモバリック弾頭の多連装ロケット弾が雨注するのだ。
 ※サーモバリックの研究がわが国では遅れているのは何とかしないとね。1983年、米海兵隊が宿舎にしていたベイルート市内の4階建てビルのロビーに突っ込んできた自爆テロリスト(2名)のワゴン車が大爆発を起こしてビルが崩壊、241人もの米兵が死亡した。入手の比較的に容易な、プロパン、ブタン、もしくはアセチレンのような気体をまず主燃料として空気中(1階スペース)へ放散し、酸素とほどよく混ざったタイミングで起爆剤の軍用爆薬(TNTやヘキソーゲンのようなもの)に点火して全体を轟爆させたとすれば、その破壊原理はFAEそのものだ。1993年2月の、米国の世界貿易センターに対する、アルカイダによる爆弾テロでは、地下2階の駐車場にとめた自動車の中で600kgの自作爆弾を炸裂させ、ビルの地上4階までを破壊(電気配線と電話回線はビル全体で瞬時に断線)した。犯人は水素入りのボンベを、爆発の威力を増強するために添えていたという。また02年のインドネシアのバリ島のナイトクラブに対するイスラム過激派の爆破テロでも、粉状の固体の可燃物がまず飛散させられて、次に爆薬が炸裂し、効果を倍化したのだともいわれる。対テロ掃討作戦の最終局面では「ビル壊し」がどうしても必要になる。シリアでも、比島(マラウィ市)でも、同じ教訓が得られている。それを戦闘機に頼れば誤爆が起き、砲兵に頼れば時間ばかりかかる。サーモバリックを背負ったロボット工兵(無人トラック)に突っ込ませるのが一番だ。それを今から研究しておかないでどうする?
 しからば米軍は、露軍と対決するときには、何に気をつけたらよいか?
 一つ。擬装の徹底。注意深くカモフラージュできる部隊は、敵のUAVにも見つからないし、電子的なエリントによって居場所がバレてしまうこともない。偽装こそが対砲兵戦の勝利の入り口と言える。
 ※UAVの前に偵察衛星をごまかすテクニックを磨くことだ。露軍や北鮮にはそれができる。
 二つ。指揮所の移設訓練。もし味方部隊の指揮所が露軍のUAVに発見されてしまったなら、即座にそこを移動しなくては、指揮所は全滅だ。しかも移動はてれんこてれんこやっていたらダメで、最大速度でその場から遠く逃げ去る必要がある。これを部隊長以下、習性化するためには、「野戦シミュレーター」では緊張感がなくてダメ。野外の演習場や生地で、徹底して「指揮所の夜逃げ」を繰り返さねば、身に付くものではない。
 演習情況では、めったに「大隊指揮所、全滅」という情況は付与されない。これもよくない。露軍相手の実戦となったら、この事態はしょっちゅう、発生するはずなのだ。もちろん、敵からの正確な砲撃によってである。
 演習シナリオでは、敵が強烈なジャミングをして通信できぬ情況、および、野戦砲兵の先進的戦術データシステムAFATDSが使えなくなったという情況を常に混ぜなくてはダメだ。
 その三。対砲兵戦の演練。米軍はあまりにも長くゲリラ相手の掃討戦をしてきたために、対砲兵戦の腕がなまっている。対砲レーダーを使えば、そのレーダー放射源も敵から電波標定され、数分後には攻撃されると思わねばならない。
 こちらが砲撃する前には、弾道途中に味方航空機が割り込んでこないかどうか、調整がされていなければならない。それも演習するしかない。
 次。
 Kyle Mizokami 記者による2019-1-29記事「The Pentagon Wants a Nuclear Reactor That Fits in a Transport Jet」。
        ペンタゴンは、C-17で運搬できる、つまりM1戦車くらいの重さにおさまるポータブル原発を、欲している。これを任意の戦地まで空輸して、レーザー兵器などの電源にするためだ。
 また、アフガニスタンのような土地では、灯油(米陸軍はディーゼル燃料としてもガスタービン燃料としても油種を灯油で統一している)を遠隔哨所まで補給してやるトラック列がゲリラのIEDに狙われるので、これを護衛するための費用が馬鹿にならない。
 モバイル原発があれば、灯油(車両用と発動発電機用)の補給量を減らせるわけだ。
 具体的なスペックは、重さ40トン未満で、1メガワット~10メガワットを発生し続けられるもの。寿命は3年以上。
 この可搬式原発を開発できるという会社は応募してくれ。公募は、2019-2-8までなされている。
 いま、ストライカーに搭載できるレーザー砲は5キロワット。これを2023年には50キロワットにする予定だ。その電源が要るだろう。
 参考。1964年から72年にかけ、南極のマクマード基地には「PM-3A」という1.8メガワットの原発が持ち込まれていた。しかし故障が多く、稼働時間はトータルして72%であった。しかも、基地の研究者たちの発癌率上昇と関係があったと結論付けられている。
 ※優勢なゲリラにすっかり取り囲まれ、哨所を放棄しなくてはならなくなったとき、40トンの原発を置き去りにするのか? 反米ゲリラにダーティボムの素材を進呈するのか。常識で考えろっつーの。