対戦車ヘリの時代はもうすぐ終わる。

 DJI社のMAVICという商品の「アクティヴ・トラック」機能のデモンストレーション動画に感銘を受ける。
 撮影対象人物を機上搭載AIが識別すると、あとは、ジンバル付きのカメラで執拗にフレーム中央に照準し続ける(もともとDJIは映画撮影用のジンバル付きカメラが得意技術分野だった)。
 撮像対象人物の歩いている後上方から一定距離を保って追躡するモードの他、対象人物の動線に並走飛翔しつつカメラだけ90度横向きに照準し続けるモードも選べる。
 もちろんその間に機体が維持すべき高度は任意に指定できる。
 誰しもこのデモ画面を見ただけで、「このカメラと同軸にレーザー・デジグネーターをジンバル吊下したらどうなる?」と考える。とっくに各国軍ではその実験をしていること、必定也。
 機体は大掛かり(高機動車の後部荷台に1機だけ収容しておけるサイズ)になるが、交戦法規上のハードルが低いことから、近い将来、まず最初に、「対戦車ヘリ」の機能がドローンによって代行されるだろう。
 機載のジンバルカメラの代わりに、重力落下式の小型誘導爆弾の先端シーカー(画像ロックオン用)のカメラが、オペレーターの操縦モニターと無線結合されるようにする。往路の操縦と捜索はそのカメラを使って行なう。
 敵の所在を察した後、高機動車から垂直離陸させ、敵戦車(または舟艇)の頭上へ近寄せる。
 有人ヘリだと敵軍後方にある防空レーダーによって探知され、SAMの脅威にさらされるからとても敵戦車の真上までは飛んで行けないが、このサイズのドローンなら通常の捜索レーダーにひっかからないし、敵のSAM1発よりも価格が安い。もちろん囮用の小型ドローンも乱舞させて敵空域は撹乱すべきである。
 標的を選び、画像によるロックオンができたら、重力落下式の誘導爆弾をリリース。
 弾頭は対装甲と対人を兼用する多目的弾頭。
 重力落下式ゆえ、ATMに必要なロケットモーターが不用なので、全重を抑えられる割には強力な弾頭とすることができる。
 誘導爆弾の動翼の面積を大きくしておけば、ある程度の滑空もできるので、かならずしも敵戦車の真上からでなくてもよい。
 命中したかどうかは、爆弾から送信された最後の動画により、居ながらにして「推認」できる。
 機体にはINS/GPSを用いたRTH(リターンtoホーム)機能があるから、兵装リリース後は、カメラ無しの盲目飛行で、正確に出発点近傍まで戻ってくれる。
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 Brandon Morgan 記者による2019-3-22記事「Up-Gunning the Queen of Battle: How the Army Can Fix the Infantry’s Anti-Armor Problem」。
       米陸軍のドクトリンが新しくなり、従来の「歩兵重火器中隊」は「対戦車中隊」に変わる。
 これは欧州でのロシア軍との対決を意識している。
 同中隊は、敵AFVの撃退が最重要の主任務となり、ライフル中隊への支援はその次だと定義される。
 一部のストライカーAPCに25ミリ~40ミリの自動火器砲塔を設けるようにするメリットは、こっちが移動中にも即座に交戦できること。TOWでは移動中の照準が難しく、また初弾発射までにもずいぶん時間がかかってしまう。
 朝鮮戦争中、ボフォース40ミリ自動砲×2を搭載したM19自走対空戦車が、中共軍歩兵に対する対地射撃ですこぶる有効であった。
 ※露軍をして、APSやERAへ過重に投資することを強いて、軍事財政を苦しくさせ、あるいは地上侵攻を躊躇させるような「兵器開発アナウンス」が西側には必要である。これにも《小型ドローン転用の歩兵中隊用の超低速対戦車ミサイル》が役に立つ。トップアタックではなく、その逆を考えることだ。地面スレスレの斜め下で自爆させ、自己鍛造ジェットにより敵戦車の下面を攻撃させる。マルチコプター型ドローンは、瞬間的に機体全体を任意方位へ30度ぐらい傾斜させることが容易なので、成形炸薬のコーンは「真上」へ向けて機体中央に固定しておけばいい(ジンバル安定の必要はない)。このラインナップがあることで、露軍戦車は、底面や車体最下部の装甲についても悩まなければならなくなる。たとえば最新の「T-14」はトップアタック対策が万全だが、乗員が車体内だけに配置されている以上、「斜め下側」対策をおろそかにすることはできない。余裕のないエンジン出力に、さらに増加装甲の負荷をかけてやることができるわけだ。このように、敵の創案を実戦の前に「無効化」してやる「対抗創案のアナウンス」が、露軍やシナ軍の侵略抑止のためには、すこぶる重要である。敵軍上下の士気を挫き、「妄想」を悟らせて正気に返してやることができるからだ。このような「心理戦」の有益性に気づく者が西側要路に少ないのが情けない。
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 Morris Jones 記者による2019-3-25記事「The ‘Satellite Clause’ for North Korea’s Rockets」。
      4月15日は金日成の誕生日なので、その前に習近平が訪朝するのではないかとか、「ナンチャッテ衛星」がまたブチ上げられるのではないかと予想されている。
 ※歴代日本内閣にはずばぬけて巧妙なところがある。《絶対に北鮮にはカネなどくれてやらない》ための予防線を張れていることだ。トランプ氏が三代目とどんなディールをしようが、この予防線が張られているかぎりは、日本は北鮮などのためにビタ銭一文出す必要はないのである。じつは対韓国についても予防線はかつて張られていた。それが《裏吉田ドクトリン》だったのだが(詳しくは『日本国憲法廃棄論』を見よ)、今はなくなり、その代わりの新予防線が創られようとしているところだ。
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 ストラテジーペイジの2019-3-25記事。
   「EA-18G グラウラー」をフィンランドが輸入することが決まった。
 同機種をすでに豪州軍が買っている(2015年から受領開始。1機事故喪失し、現有11機)。フィンランドはそれに続く外国バイヤー第2号。
 ※もし日本政府が、「対支渡洋爆撃を自衛隊もやるんだぞ」とアメリカ様から命令されているとすれば、空自もこれを買うことになるだろう。そしてこの飛行機は、悪い買い物ではない。オスプレイやアパッチのような筋悪商品と比べれば、何十倍も、国民の税金が有意義に使われることになるだろう。