押入れを整理するとなつかしい古本が次々出てくるよね。

 Will Spears and Ross Hobbs 記者による2019-4-15記事「A Bomber for the Navy」。
     国防総省はB-1爆撃機の早期退役を再考し、その所属を空軍から海軍に替えるべきである。海軍はB-1を「陸攻」とし、LRASMを発射する長距離対艦攻撃機にできるからである。
 この発案は前の国防次官のロバート・ワークがCNASに招かれてパネルトークした中で飛び出した。グァム島などにB-1を海軍機として配備し、3000発のLRASMを弾薬庫に置く。さすれば、中共と開戦後、72時間にして、西太平洋のシナ艦艇は文字通り全滅するであろうと。
 第二次対戦中、米海軍は、VPB(パトロール・ボミング)飛行中隊を陸上基地に抱えていた。これを復活させればよいのだ、とワーク。
 ※海軍版のB-24が活躍したよな。
 VPBでシナ軍に対抗させるようにしたならば、シナ軍のA2ADアセットは、その標的とすべき米艦艇を西太平洋のどこにも見出すことはできなくなる。努力がすべて空振りじゃ~。や~いや~い、と。
 ワーク以外の論者としては、アナリストのロバート・ハディック。彼の著書『ファイア・オン・ザ・ウォーター』(2014)の中で数ページ、提言されている。
 大胆にもハディックは、海軍はB-21長距離爆撃機の編隊を、空軍とは別に、独自に擁するべきであり、その予算を捻出するためには、新空母もF-35Cもアーレイバーク級駆逐艦もすべて調達数を削減して然るべきである、と言う。
 そんなものはこれからのミサイル時代にはまさに時代遅れの役立たずでしかないからだ。
 ワークもハディックも、「ジョイント」主義には大反対。それらは畢竟、クロスドメインの反対の指向になってしまっているからだ。
 B-1Bは、LRASMの発射実験をとっくに済ませている。じつに、この飛行機こそが、LRASMの発射母機公認第一号
 ハディックの本は国防大学校の推奨図書になっているが、論旨が大方の注目を集めたとはいいがたい。
 B-1は、延命改修せずとも2040年代まで飛ばすことができるそうである。にもかかわらず米空軍は、次期B-21ステルス爆撃機の資金繰りのために、B-1を早期にボーンヤード送りするつもりだ。
 海軍版B-1が配備されたとしたら、その兵装は、LRASMとJASSMになるだろう。相手はロシアと中共の水上艦艇、および沿岸陸上基地(特に巡航ミサイルを発射する部隊)だ。
 兵装搭載量を比較しよう。B-1は7万5000ポンド。B-52は7万ポンド。B-2は4万ポンドである。低烈度紛争時にも、この搭載量がモノを言うはずだ。
 ハイテクセンサーであるスナイパー・ターゲティング・ポッドや、対地用SARレーダーも、B-1なら余裕で搭載可能。
 基本的にB-1は、出動するときは2機1組で飛び出す。
 ミッション別の、B-1×1機の標準的な兵装内容は以下の如し。
 洋上阻止任務。LRASM×24発。
 A2/AD圏 殴りこみ。LRASM×8発+JASSM×16発。
 戦略爆撃。JASSM×24発。
 機雷撒き。Mk-62もしくはMk-65を84個。
 高速武装艇(FAC)/高速近海武装艇(FIAC)殺し。CBU-105D/B×10発+GBU-54×6発。
 特殊部隊や海兵隊のためのCAS。GBU-31×8発、GBU-38×6発、GBU-54×6発。
 B-1は、空中給油なしで8時間以上、だいたい3500海里飛べる。
 ハワイからグァムまで、無給油で出張できるのだ。
 台湾海峡までグァムから飛んで交戦し、そのまま無給油でグァムまで戻ることもできる。
 もし空中給油をするなら、B-1は24時間までの連続ミッションができる。
 ※この記事では言及がないが、これほどまでに良い機体なのであれば、これを「半ステルス・タンカー」に改造すればいいじゃないか!
 あたらしく無人機を戦列化している時間などあるだろうか? B-1は、その時間を稼いでくれるのだ。
 B-1を1時間飛ばすためには、74「マン×アワー」の整備が必要。
 B-1を1時間飛ばすためのコストは7万ドル。これはB-52も同じ。B-2は11万ドルから15万ドル。
 とうぜん、機体が古くなるにつれ飛行1時間当たりのコストは漸増する。インフレを度外視した比較値では、1999年よりも2016年の方がB-1におけるそのコストは2.9%増し。これは議会予算局の試算。
 海軍はいまでもP-8やMQ-4Cトライトンを陸上基地から飛ばしている。
 ※クロスドメインを説得するのにこれだけのテキスト量が必要なのかと改めて感銘を受けました。古い頭の軍人たちの反発が相当にあるみたいだね。